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人気馬の敗因は「経験」と「気持ち」/小倉記念&レパードS

  • 2017年08月07日(月) 18時00分


◆強敵相手と接戦の経験がない死角を突かれたストロングタイタン

 直前の7Rで落馬事故に巻き込まれたMデムーロ騎手が以降のレースに乗れなくなり、だいぶ経って発表されたタツゴウゲキ(父マーベラスサンデー)の騎手変更は「秋山真一郎(38)」への乗り代わりだった。本音はそうではないはずだが、自虐トーンを漂わせることが多く、弱気を装う秋山騎手への乗り代わりなので、5倍台だった単勝オッズは、終わってみたら7倍台だった。

 しかし、前走の「七夕賞」で5着だったフェルメッツァ(今回の小倉記念はテン乗りの北村友一騎手にチェンジ)に乗り、そのとき6着だったタツゴウゲキと対戦していた秋山騎手は、急なテン乗りとはいえタツゴウゲキを理解していた。未勝利時代の小倉芝2000mでも対戦し、そのときも並んで同タイムで入線し、秋山騎手の騎乗馬が5着、タツゴウゲキが6着だった記録がある。

 弱気なコメントが多い秋山真一郎騎手だが、実はローカルの小回りコースはお手のもの。サッと好位3番手のインにつけるとスムーズに流れに乗り、4コーナーを回ると脚いろの鈍ったバンドワゴンの脇から、まだ開幕2週目のインへ突っ込んでいる。少しのロスもない小倉芝2000mの模範となる素晴らしいレース運びだった。

 父マーベラスサンデーは、97年の宝塚記念などグレードレース6勝のサンデーサイレンス初年度産駒。16年間にわたって種牡馬として活躍し、ネヴァブション、シルクフェイマス、サニーサンデー、スマートギアにつづき、タツゴウゲキは5頭目のJRA平地重賞勝ち馬となった。マーベラスサンデーは昨16年の夏に24歳で死亡。14年交配の現2歳世代が最終世代になる。

 5歳タツゴウゲキは、まだ17戦【4-1-2-10】。タフな産駒を送ることで定評のあった父の真価を発揮するとき、本物になるのはこれからだろう。

重賞レース回顧

急なテン乗りとはいえタツゴウゲキを理解していた秋山騎手の勝利(C)netkeiba.com


 戸崎圭太騎手のJRA全10場重賞制覇のチャンスがあった2番人気のサンマルティン(父ハービンジャー)は、3コーナーから外を回ってスパートし、完全に勝ったというシーンもあったが、格上がりで、初の重賞挑戦、初コース…。自身の2000mの最高タイムを一気に2秒4も短縮する「1分57秒6」で微差2着なら、内容は文句なし。巧みにインから差したタツゴウゲキ(秋山真一郎騎手)を称えるしかない。

 1番人気に支持されたストロングタイタン(父リーガルランサム)は、道中は勝ち馬の外で流れに乗り、スキなしの構えだったが4コーナーで失速して8着。これで【5-1-0-5】。重賞は【0-0-0-3】となってしまった。中京の芝2000mに1分58秒3のコースレコードを記録して勢いに乗っていたが、レコードは芝コンディションによるところが大きく、強敵相手と接戦の経験がない死角を突かれた格好になった。まだ4歳。これからパワーアップしたい。

 復活に注目した6歳バンドワゴン(父ホワイトマズル)はうまく主導権を握ることに成功したが、前後半「58秒3-59秒3」=1分57秒6の高速レースは、どちらかというとパワーを前面に押し出したいタイプにとって、高速ラップの連続がきびしすぎた。もう少しタフな芝で、1分59秒前後のレースなら対応できると思える。時計がかかりそうな馬場と時期を求めることになる。

 これで、夏のローカル古馬重賞路線(ハンデ戦)は、小倉記念の1番人気馬は「12連敗」。中京記念の1番人気馬は「18連敗」。函館記念の1番人気馬は「11連敗」となってしまった。

 残るハンデ戦の2000mは新潟記念。こちらは1番人気馬連敗中ではないが、過去15年間で勝った1番人気馬は1頭だけである。

◆全力で走る気になっていないように見えたエピカリス

 注目の人気馬では、「レパードS」のエピカリス(父ゴールドアリュール)の3着も、創設されて10年、群を抜いて遅い1分52秒9の勝ちタイムを考えると、勝った11番人気ローズプリンスダム(父ロージズインメイ)、2着に粘り込んだ12番人気の牝馬サルサディオーネ(父ゴールドアリュール)の快走を認めながらも、最後は形作りの印象も残ったエピカリスの大凡走だろう。

重賞レース回顧

ローズプリンスダムの快走を認めながらも形作りの印象も残ったエピカリスの大凡走(撮影:下野 雄規)


 ベルモントSを出走取り消しの原因となった「右前の蹄(ひづめ)」の炎症は、出走を断念して帰国し、牧場での懸命のケア、さらには蹄鉄への最新の工夫などにより、予定の追い切りを敢行してもまったく不安のない状態になったからの再出発であり、そのことに疑問はない。あせって出走したわけではない。

 ただ、肝心のエピカリス自身がどうも全力で走る気になっていないような気がした。

 また、Cルメール騎手は「1番大切なのは馬のコンディションだったが、状態面は問題なかった。直線でスペースがなかった」と敗因を語ったというが、これはまったく個人的な印象で気のせいかもしれないが、ルメールもエピカリスと同じで、なんとなく脚元を気にしつつのレースに終始したのではないか、と感じた。直線、「前にスペースがなかった」のは事実だが、流れや相手を考えると、ルメール騎手が4-5番手で長いあいだスペースが生じるのを待っている状況でも、そういうレース(新潟のダート1800m)でもないはずである。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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