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BTC体験入学会

  • 2017年08月10日(木) 18時00分


小学生から競馬を見てきた高校生や、馬の仕事以外考えられないという高校生も


 今週、北海道は、史上屈指の“長寿台風"として迷走し続けた台風5号の北上により、天候悪化が懸念されていたが、どうやらそれほど荒れずに済んだようだ。9日からは日高東部にも待望の雨が降り始め、久々に放牧地にも潤いが戻っている。
 
 そんな中、本日10日、BTC軽種馬育成調教技術者養成研修では、今期第2回目の体験入学会が行われた。夏休み中ながら、前回(先月実施)に比較すると参加人数は5人と少なかったが、それぞれ馬の仕事に強い興味を持つ若者たちばかりで、熱心に指導教官の説明に聞き入り、乗馬訓練の様子などを見学していた。
 
 現在、BTCには今春入講した第35期生18人が、日々研修を重ねている。半月ほど前の7月下旬のある日、BTCグラス坂路での乗馬訓練を取材する機会に恵まれた。
 
 春にここに入ってから4ヶ月が経過したところだが、研修生たちの騎乗技術はかなり上達してきている。よく晴れたこの日、約束の時刻にBTC調教場に到着すると、ちょうど馬道を速歩でグラス坂路に向かって上り始めているところであった。

グラス坂路に向かっている研修生

グラス坂路に向かっている研修生

 数頭ずつの小グループに分かれ、それぞれ教官が1人ずつ付き添っているが、埒のある馬場とは異なり、グラス坂路は、一言で表現するとなだらかな傾斜のある広大な草地である。どれくらい広いのかを言葉で説明するのは難しいが、スタートからゴールまで2400mのアップダウンのあるコースを確保できるような広さである。
 
BTCグラス坂路調教

BTCグラス坂路調教

数頭ずつの小グループに分かれて行われる

数頭ずつの小グループに分かれて行われる

 所々に大きな樹木が立ち、景観に変化を与えている。馬に乗ってここを疾走できるのはさぞかし気分爽快に違いないだろうと思わせるような絶景だ。
 
BTCグラス坂路風景

BTCグラス坂路風景

 教官に引率されながら、それぞれのグループがキャンターで坂を下ってくる。少なくとも、この訓練に耐えられる程度には各自の技術レベルが上達してきているということである。
 
 その時伺ったところでは「今期35期生たちの訓練進度は、例年よりも1ヶ月半程度進んでいる」とのことであった。こうしてできるだけ多くの鞍数をこなしていって、地道に技術水準を高めていく以外に上達の方法はなく、35期生たちの研修は来春まで休むことなく続けられる。
 
 そして、本日。あいにくの雨になってしまったが、数少ないとはいえ、体験入学生を前に、春以来の訓練の成果を披露するわけで、いつもとは少し違う緊張感が漂っている。
 
 雨のため、騎乗訓練の1鞍目は、覆馬場での実施になった。怪我などで訓練を休んでいる研修生を除く16人が、一列になって覆馬場を周回する。速歩からキャンターへ、そしてまた常歩に戻り、また速歩、キャンターへと教官の指示を守りながら黙々と騎乗する。 技術の上達につれて、研修生たちの表情にも余裕が出てきたように感じる。
 
覆馬場での訓練風景1

覆馬場での訓練風景1

覆馬場での訓練風景2

覆馬場での訓練風景2

 それを見守る体験入学生たちは、わずか4ヶ月の訓練期間でここまでうまく乗れるようになるのか、と一様に驚きの表情であった。
 
 男子3人、女子2人ながら、熱心な保護者が同行してきた高校生もいる。それぞれ、馬が好き、競馬が好きで、馬の仕事に強い憧れを抱いているらしいことが言葉の端々から窺える。今回、生まれて初めて生の馬に触ったという大学生もいれば、馬術部でずっと馬に乗ってきたという男子高校生もいる。小学生の頃から競馬を見てきた高校生や、馬の仕事以外の道は考えられないと言い切る高校生もいた。
 
教官より説明を聞く体験入学生たち

教官より説明を聞く体験入学生たち

 午前中は見学に充てられ、午後からはいよいよ実際にシミュレーターに乗っての疑似騎乗体験、さらに本物の馬を使っての乗馬体験も行なわれる。厩舎作業(ボロ拾い)の体験もある。こうしてより実践的な体験を通じて、実際にこの研修を受験するかどうかを各自が判断することになる。
 
昨年のシミュレーター体験の様子

昨年のシミュレーター体験の様子

 なお、35期生たちは、来月から、JRA日高育成牧場に通い、JRA育成馬の初期馴致と調教の研修が始められる。毎年、研修生たちを見ていると、時間の流れの早さに戸惑うばかりだ。ほんのわずかの間に、彼らはどんどん成長し、やがて年が明ければ、修了式が視野に入ってくる。ついこの前、ここに入講したばかりのような気がするのに、もうすでに夏が過ぎようとしている。お盆が過ぎれば北海道は秋の気配が漂い始め、やがて日増しに日没が早くなり、気温も少しずつ下がってくる。
 
 また、いずれ機会を見て、研修を覗いてくるつもりでいる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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