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南関東還暦トリオの競演

  • 2017年08月29日(火) 18時00分


◆的場騎手のほかに2人、還暦騎手がいるのをご存知だろうか

 還暦を迎えて地方通算7000勝を達成した的場文男騎手の勢いが止まらない。7月26日にはサンタアニタトロフィーをゴーディーで、8月11日には黒潮盃をブラウンレガートで勝ち、さらに23日にはスパーキングサマーCをケイアイレオーネで制した。この時期、南関東で行われる重賞は少ないが、これで南関東の重賞3連勝となった。そして的場騎手はこれが今年重賞7勝目。重賞勝利数でこれに続くのが森泰斗騎手の4勝で、的場騎手の重賞での活躍はダントツだ。

 しかし今回の主役は的場騎手ではない。南関東には的場騎手のほかにあと2人、還暦の現役ジョッキーがいるのをご存知だろうか。

 地方競馬の現役最年長騎手が、今年5月4日に62歳になった川崎の森下博騎手。9月7日に61歳になる的場騎手より1つ年上だが、地方競馬教養センターでは同期だった。そしてもうひとりが船橋の石崎隆之騎手。今年1月29日に61歳になり、騎手デビューも的場騎手より3カ月ほど早い。つまり、地方現役最年長は森下騎手だが、キャリア最長は石崎騎手ということになる。

 その現役最年長の森下騎手が、8月22日川崎最終11レースで見事な騎乗を見せた。

 4コーナーポケットからスタートする1600m戦。11頭立て11番人気のポイントパイパーに騎乗した森下騎手は、2番枠からほぼ互角のスタートを切ったが、一旦最後方まで位置取りを下げ、外に持ち出した。1600mのスタートから1コーナーまでの直線は500mほどもある。スローペースと見た森下騎手はゴール板のあたりから位置取りを上げると、1コーナーを回るところで一気に先頭に立った。

 そのままマイペースでの逃げに持ち込んだ森下騎手は、4コーナーを回るあたりでも楽な手ごたえのまま単独先頭。逃げているのが最低人気馬だったからだろうか、人気馬は中団馬群で牽制しあっていたようで、直線を向いて慌てて追ってきたものの時すでに遅し。森下騎手のポイントパイパーは悠々と逃げ切り、1番人気キュアロージズ(本田正重騎手)は1馬身半差の2着、2番人気ディーエスノーブル(柏木健宏騎手)はさらに4馬身差がついての3着という結果だった。

 人気馬を油断させ、最低人気馬での見事な逃げ切り勝ちというレース。ぜひともNARのライブ映像のサイトなどでご覧いただきたい。森下騎手にとっては、これが62歳になっての初勝利で、今年4勝目、地方通算2673勝となった。

 そして翌23日、川崎第10レースでは、石崎隆之騎手が7番人気のタネホカホカに騎乗して勝利。さらに続く11レースが重賞のスパーキングサマーCで、冒頭で触れたとおり的場騎手がケイアイレオーネで逃げ切った。さらに最終レースでは森下騎手が4番人気のレジェンドセプターに騎乗。向正面では果敢に好位の4番手につけ、もしや、還暦3人のジョッキーが連勝か?と思わせた。しかし直線で失速、残念ながら最下位という結果だった。

 それでも激戦区南関東で、2日間で還暦ジョッキー3名がそれぞれ勝利を挙げたというのは素晴らしい記録。森下騎手は28日の大井最終12レースでも3番人気のイノデライトを勝利に導き、今年5勝目を挙げている。

 的場騎手が自身の持つ地方競馬最年長重賞勝利記録を更新し続けていることは、そのたびにNARや大井競馬からリリースが出されるのでよく知られるところだが、実は森下騎手の勝利は、地方競馬の最年長勝利記録に近づいているのだ。

 NAR地方競馬全国協会(1962年設立)で確認できる最年長勝利記録は、2012年5月6日、金沢第1レースで勝利を挙げた山中利夫(元)騎手による62歳9カ月25日というもの。森下騎手は、来年2月29日以降に勝利を挙げれば、山中騎手の記録を更新することになる。

 的場騎手は、佐々木竹見さんの通算7153勝(中央2勝を含む)という日本記録の更新まであと100勝ほどに迫っていて、仮に今のペースで勝ち続ければ、1年以内にその記録は達成される。

 そして森下騎手の地方競馬最年長勝利記録は、早ければあと半年ほどののちに達成される可能性がある。どちらの「あっぱれ!」が早いか、まだ少し先にはなるが、その瞬間に注目だ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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