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キンカメとダートの名牝系から誕生したグレートタイム

  • 2017年08月30日(水) 12時00分
クリストフォリ(牝 栗東・安田隆行 父ヘニーヒューズ、母フォルテピアノ)
 芝向きのクラフティワイフ牝系ながら、2代母キョウエイフォルテ、母フォルテピアノはいずれもダートで活躍した。競走年齢に達した兄姉4頭はすべて勝ち上がっており、1つ上の半姉パルティトゥーラ(父マンハッタンカフェ)は現在4戦2勝なので先々が楽しみだ。本馬の父ヘニーヒューズは馬力型のスピードを伝えるStorm Cat系の種牡馬。その母Meadow Flyerが持つEight Thirty≒War Relic 4×5を強化することが配合上の大きなポイントで、アメリカにおける代表産駒Beholderや日本でGIを勝ったアジアエクスプレス、モーニンもこのパターンに当てはまる。Eight Thirtyを母の父に持つHold Your Peaceのクロス(4×4)は有益だろう。それに加えてWar Relic 3×3のIn Realityが母方に入るのも好感が持てる。2歳戦はスピードに任せて芝でも活躍できるかもしれないが、ゆくゆくはダート向きのスプリンター〜マイラーに落ち着くだろう。

グレートタイム(牡 栗東・藤原英昭 父キングカメハメハ、母ミラクルレジェンド)
 2代母パーソナルレジェンドはターンバックジアラームH(米G3・ダ9f)の勝ち馬。繁殖牝馬として大成功し、本馬の母ミラクルレジェンド(父フジキセキ)はエンプレス杯(JpnII)をはじめ多くの重賞を勝って牝馬ダート路線の女王として君臨した。その3/4弟ローマンレジェンド(父スペシャルウィーク)は東京大賞典(GI)など4つの重賞を制覇している。母ミラクルレジェンドは競走能力の高さゆえに、繁殖牝馬として大いに期待される存在だ。初子のコンプリートベスト(父エンパイアメーカー)は現在1勝。2番子の本馬は、父がダート向きの強豪を多数出しているキングカメハメハに替わったので楽しみだ。昨年のセレクトセール1歳で1億4000万円(税抜)の値がついた。2代父Kingmamboと本馬はいずれもSanta Quillaのファミリーに属しており、本馬はSanta Quilla 5×5という牝馬クロスを持っている。ダート向きの中距離馬だろう。

テトラクォーク(牝 美浦・黒岩陽一 父ノヴェリスト、母フェルミオン)
 2代母パテントリークリアはすでに、タイキフォーチュン(96年NHKマイルC-GI)、タイキダイヤ(99年クリスタルC-GIII)、タイキリオン(02年ニュージーランドT-GII)と3頭の重賞ウィナーを送り出しており、今年の高松宮記念(GI)を勝ったセイウンコウセイ(父アドマイヤムーン)も2代母がパテントリークリアだ。名牝系といっていいだろう。本馬の母フェルミオンは現役時代にデビュー戦(芝1200m)を3馬身半差で勝ったものの、その後は一度も勝てなかった。本馬は「ノヴェリスト×アグネスタキオン」という組み合わせ。すでに勝ち上がり、ダリア賞(2歳OP)でも3着となったニシノベースマンと同じで、母の近い世代にサンデーサイレンスとMr.Prospectorを併せ持っている点は、現時点でノヴェリスト産駒の最強馬であろうヴァイザー(1戦1勝)と同じ。本馬は牝馬でもあるので芝向きのスピードタイプだろう。

トライン(牡 栗東・浜田多実雄 父ディープインパクト、母マルケサ)
 母マルケサは「Kingmambo×Storm Cat」という組み合わせ。ノーザンファームの名繁殖牝馬ラヴズオンリーミー(リアルスティール、プロディガルサン、ラングレーなどの母)と配合構成が似ている。ラヴズオンリーミーの血統は、父Storm Cat、母はKingmamboの全妹Monevassiaなので、マルケサをひっくり返したような配合構成だ。ラヴズオンリーミーはディープインパクトとの交配で結果を出しているので、マルケサもディープインパクトとの間に走る子を出せるのではないか。本馬は、リアルスティールの兄弟が持たないAlzao≒Aviance 3×4という隠し味があり、配合的におもしろい。マイルから2400mまで幅広く活躍できそうだ。

マウレア(牝 美浦・手塚貴久 父ディープインパクト、母バイザキャット)
 周知のとおり、父ディープインパクトはStorm Cat牝馬と相性がよく、エイシンヒカリ(16年イスパーン賞-仏G1、15年香港C-G1)、リアルスティール(16年ドバイターフ-G1)、キズナ(13年日本ダービー-GI)、アユサン(13年桜花賞-GI)、サトノアラジン(17年安田記念-GI)、ラキシス(14年エリザベス女王杯-GI)など多くの活躍馬を出して成功している。本馬はアユサンの全妹。2代母の父Affirmedは米三冠馬で、現役時代はダートで活躍したが、血脈としては芝適性が高い。サンデーサイレンスとの相性もいい。アユサンは桜花賞(GI)を勝った際、484kgという馬体重だった。本馬も大きめであれば楽しみが広がる。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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