◆「新馬戦や未勝利戦でドイヒーなことになっている馬」は盛り返せるのか?
今回は本コラムの趣旨に合うのかどうか分からないが、あるリクエストに基づくデータをご紹介したい。
売却率も平均価格もすごいことになっていたHBAサマーセール中のある夜、若手馬主さん・若手調教師さんと食事をしていてこんな話になったのである。
馬主さんいわく、調教師さんたちは気を遣って「いい馬」「いける」みたいなことを言ってくれるし、たとえ負けが込んでいてもまだ改善の余地があるように励ましてくれる。ただ、脈のない馬を延々中央に置くと、預託料も高いので結局ダメージが大きくなることがある。一方でデビュー当初はダメでもあとで変わり身を見せる馬もいる。
判断の基準として、「新馬戦やそのあとの未勝利戦でドイヒーなことになっている馬」が、そこから盛り返して出世する確率はどのくらいあるのかということを知りたい、とのことであった。
そこで今回は
・現3〜17歳の15世代(若い側は現役馬も含む)
・新馬戦でデビューした馬のみ(遅れたデビューなどで未勝利戦デビューの馬は除く)
・いったん抹消→出戻りの馬については地方在籍時の成績は含まない
・2戦目以降500万以上のレースに出た馬は除く
という基準で、デビューから苦戦続きの馬についてデータを出してみたい。
1.新馬戦10着以下の馬(該当18128頭)
勝ち上がり2845頭(勝馬率15.7%) 1頭あたり賞金481万円 1走あたり賞金61万円
中央重賞勝ち馬46頭
2.新馬戦10着以下→次走未勝利戦も10着以下の馬(該当10393頭)
※2003年のみまだ折り返しの新馬が使えたのでそれを含む
勝ち上がり825頭(勝馬率7.9%) 1頭あたり賞金214万円 1走あたり賞金32万円
中央重賞勝ち馬9頭(平地重賞勝ち馬は1頭のみ)
3.新馬戦10着以下→次走未勝利戦10着以下→3走め未勝利戦10着以下(該当5611頭)
勝ち上がり262頭(勝馬率4.7%) 1頭あたり賞金123万円 1走あたり賞金19万円
中央重賞勝ち馬4頭(すべて障害重賞)
4.新馬から4走連続して10着以下(該当2726頭)
勝ち上がり71頭(勝馬率2.6%) 1頭あたり賞金75万円 1走あたり賞金11万円
中央重賞勝ち馬2頭(ともに障害重賞)
賞金には出走奨励金、各種出走奨励賞などは含まない。また出走手当てもあるので、これよりは入るお金も多いということになるが、それにしてもけっこう現実は厳しい。2.のうち、健康で続戦できる馬はいいが、休養を挟むとそこから先の採算はやや厳しい。3.で休養となると相当に厳しい。
これは着順ベースで基準を10着以下に置いたが、出走奨励金が入らない9着以下を基準にしてもいいだろうし、着差ベースで何秒以上の敗戦というのを基準にしてもよいだろう。今回は地道に検索したが、やりようによっては各馬のその時点での期待賞金を算出することもできそうだ。
いずれにしても、現実というのはなかなか厳しいものでもある。リアル馬主の皆さんはその厳しさと戦い続けているので、POG愛好家の皆さんもその心情に寄り添っていただきたいものである。