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札幌2歳ステークス

  • 2017年09月06日(水) 18時00分
今年の札幌2歳ステークスの口取り写真

今年の札幌2歳ステークスの口取り写真



最も強烈な印象を残したダブルシャープ


 以前の各々8週間ずつあった函館札幌開催から比べると、今はずいぶん期間が短くなったなぁとつくづく思う。去る7月29日(土)に始まった札幌開催も、先週末で終了してしまった。6週12日間だと、1ヶ月と少しでしかなく、あっという間に終わってしまう感じだ。

 とりわけ札幌は、日高から最短距離にある中央の競馬場でありながら、お盆やサマーセールなどの多忙な季節と重なり、家族経営の牧場にとってはゆっくりと競馬を見に行くことも難しくなる。せめて後2週くらい開催があればと毎年思う。

 その札幌最終週の土曜日、9月2日。恒例の札幌2歳ステークスが行われるので行ってきた。せめて札幌記念と2歳ステークスくらいは現地で生観戦したいところだが、あいにく札幌記念の8月20日はサマーセール前日になり、余裕がなかった。

 今年の北海道は、7月が例年以上に暑かったものの、8月に入ると途端に涼しくなり、そのままの気候で9月になった感じだ。この日も、曇りがちながら太陽が覗いてまずまずの天候だったが、風がやや強く、日陰にいると寒く感じるほど。季節がもう秋になっていることを実感させられた。

 さて、札幌2歳ステークス。今年は14頭が出走し、オルフェーヴル産駒のロックディスタウンが直線で前を行くファストアプローチをゴール前でクビ差交わして優勝した。鞍上のルメール騎手は、この日これが1、2、7、9Rに続く5勝目で、この後の12Rも勝ち、1日で6勝の荒稼ぎであった。聞いた噂によると、彼は日本の湿度の高い夏の気候がやや苦手らしく、今年の札幌はひじょうに快適に過ごせただろうと思う。

ロックディスタウン(左から3頭目)がゴール前で叩きあいを制す

ロックディスタウン(左から3頭目)がゴール前で叩きあいを制す

 オルフェーヴルはいきなり初年度産駒が重賞を制して、種牡馬としてこれ以上ないスタートを切ったと言える。また、ロックディスタウンも、今後の牝馬G1戦線で更なる活躍が見込めそうだ。距離は持ちそうだし、気性もことレースに関しては問題なさそうだ。

今後の牝馬G1戦線で更なる活躍が見込めそうなロックディスタウン

今後の牝馬G1戦線で更なる活躍が見込めそうなロックディスタウン

 ところで、このレースには道営ホッカイドウ競馬からも2頭が遠征していて、どんなレースぶりを見せてくれるかが注目されていた。そのうちの1頭、ダブルシャープは、札幌記念の日に行われたクローバー賞を6番人気で制しており、芝適性の高さはすでに証明済み。しかし、人気は7番目とやや低く、むしろもう1頭のミスマンマミーア(8月12日、札幌コスモス賞でスティルビオのクビ差2着)の方が高いくらい(6番人気)であった。

 にもかかわらず、このレースで最も強烈な印象を残したのはダブルシャープであった。後方から一気に大外をメンバー中最速の35.3秒の脚で追いこんできて、クビ、アタマ差の3着と健闘したのである。敗れはしたものの、もう少し前の位置でレースができていたらもっと違った結果になっていたのではないかと思わせるようなレースぶりであった。

 この2頭だけではなく、今年の門別組は札幌で大活躍であった。翌日の3日に行なわれたすずらん賞1200mには、大挙6頭が出走し、9番人気と評価の低かったリュウノユキナが中央のモルトアレグロを1馬身4分の3押さえて優勝したのであった。

 このレースではホッカイドウ競馬のハッピーグリンが2番人気に支持されていたが、大方の予想をあざ笑うかのような快勝であった。このレースは現地観戦できなかったのでテレビでしか見ていないが、父ヴァーミリアン、母の父クロフネという血統からてっきりダート専用機だとばかり思っていたので、意外な強さに衝撃を受けた。とてもこれが初の芝コース出走とは思えないほどのレースぶりであった。

 今年の札幌開催では、ホッカイドウ競馬所属馬のレベルの高さが改めて証明された形だ。

 例年、門別でデビューした2歳馬は秋以降南関を中心に移籍して行き、今年もその中の1頭ヒガシウィルウィンが東京ダービー、ジャパンダートダービーを連勝したのは記憶に新しいところ。今後のことは未知数ながらも、こうして数多くの芝適性のあるホッカイドウ競馬所属馬がそれぞれのパフォーマンスを如何なく発揮できたのは、地元に住む私たちにとっても大きな喜びである。

 最後に、9月2日の最終レース後に行なわれたゴールドシップ展示会について。昨年のスクリーンヒーローといい、今年のゴールドシップといい、現役の種牡馬を競馬場に連れてきてお披露目するのは、生産地に近いからこそ実現可能なことで、この日、パドックにはひじょうに多くのファンが居残り、ゴールドシップの登場を心待ちにしていた。

 すっかり白さを増したゴールドシップが午後4時半過ぎに姿を現すと、待ち構えた多くのファンが一斉にカメラのシャッターを切った。ゆっくりとした足取りで周回するゴールドシップは、時折周囲を見回しながら、大人しく引かれて歩いていた。

すっかり白さを増したゴールドシップ

すっかり白さを増したゴールドシップ

ゆっくりとした足取りで周回するゴールドシップ

ゆっくりとした足取りで周回するゴールドシップ

 生産地との距離を近づける意味でも、こうしたイベントはもっとあっても良いし、北海道の9月は一年で最も快適に過ごせる気候の月でもある。それが第1週で開催終了というのは本当に勿体ないと感じる。せめて中旬くらいまで開催を延ばせないものだろうか。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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