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道悪適性の高い馬たちが躍動したフォワ賞当日のシャンティー

  • 2017年09月13日(水) 12時00分


◆硬い馬場が得意な産駒が多いダークエンジェル、日本で産駒が活躍する日も近いか

 10日にシャンティーで行われたG2フォワ賞を制したチンギスシークレット(牡4)が、7月にハンブルグでG2ハンザ大賞を3.3/4馬身差で楽勝した時、馬場はHeavyという極悪の状態だった。2着クロスオヴスターズも、3歳4月にG3ラフォルス賞を勝った時がHeavyで、今年3月にG3エクスビュリ賞を制した時がSoftだった。

 同じく10日にシャンティーで行われたG1ヴェルメイユ賞を制したバティール(牝5)は、昨年まで英国に在籍していた馬だが、道悪適性が高いという特性を活かすべく、馬場が渋る確率の高い仏国に今季から移籍してきた馬だった。思惑に反して春のパリ地区で好天が続くと、英国中西部のヘイドックを舞台としたG3ピナクルSがSoftという馬場で行われるのを見て、すかさず遠征を敢行。見事に勝利を収めて重賞初制覇を果たしていた。

 つまりは、そういう馬たちが躍動したのが10日のシャンティーで、ペネトロメーター値が3.7でSouple(=Soft)という発表以上に、重い馬場だったようだ。

 バティールの父ドゥバウィは馬場を問わぬ万能型の種牡馬だが、チンギスシークレットの父ソルジャーホロウは、現役時代4つのG1を制した馬だったが、このうち3つは、HeavyもしくはSoftという馬場状態であった。その産駒にも、SoftだったG1バイエルンズヒトレネン勝ち馬パストリアス、SoftだったG1バイエルン大賞やHeavyだったG1ランヴェットSを制したアワーアイヴァンホーなど、道悪巧者が多い。

 クロスオヴスターズの父シーザスターズも、自身の現役時代は万能型だったが、その産駒からは、Good to SoftのG1英ダービー、Good to YieldingのG1愛ダービーを連覇したハーザンドを筆頭に、道悪の上手な仔が多数出ている。

 道悪が得意な仔を多く出す種牡馬がいれば、当然のように、道悪が苦手な仔、言い換えれば、乾いて時計の出やすい馬場を得意とする産駒をたくさん出している種牡馬もいる。機会は多くないかもしれないが、そのあたりを把握しておくと、海外馬券を購入する際の一助になるはずだ。種牡馬の馬場適性をしっかりつかんでおくことが、更に役立つのが、海外の市場で若駒の購買にあたる時であろう。日本の馬場は欧州に比べて、時計が出やすいというのは厳然たる事実で、そうであるならば、欧州でも硬めの馬場で良績を残している種牡馬の産駒を選択するのが、理に適っているはずだ。

 手元に、著名な血統研究家ビル・オッペンハイム氏が先ごろ発表したデータがある。2014年1月1日から2017年7月31日まで、北半球の主要競馬開催国で施行された競走を対象に、欧州供用種牡馬の産駒たちがどんなパフォーマンスをしていたかを示す、いくつかのデータが発表されているのだが、その中に、それぞれの種牡馬の産駒が、ブラックタイプの対象となる重賞・特別競走で挙げた勝ち星の中に、Good to Firm以上の硬い馬場で挙げた勝利が、どの程度の比率で含まれているかを示す指標があるのだ。仮にこれを、「良馬場インデックス」と呼称することにしよう。

 良馬場インデックスが最も高かったのは、18あった重賞・特別勝利のうち、10勝がGood to FirmかFirmで挙げたもので、良馬場インデックスが55.6%に達したシャンゼリゼ(父デインヒル)であった。英国の競馬日刊紙レーシングポストのウェブサイトで確認しても、シャンゼリゼ産駒は、Heavyの時の勝率14%、Softの時の勝率11%に対し、Good to Firmの時の勝率22%、Firmの時の勝率41%という数字が残されていて、ここでも明らかに硬い馬場を得意としていることが示されている。

 現役時代のシャンゼリゼは、仏国でデビュー。G3エドヴィル賞を含む2勝を挙げた後、4歳暮れから欧州よりは馬場が硬い北米に移籍。馬場状態FirmのG1ハリウッドターフC、同じくFirmのG1カナディアン国際Sなど、4つの重賞を制した馬で、すなわち父の「硬い馬場好き」が、産駒にもしっかり受け継がれていると見てよさそうだ。 オッペンハイム氏の良馬場インデックスで、シャンゼリゼに次ぐ2位以下には、53.3%のショワジール、48.3%のエクシードアンエクセル、45.7%のダンシリ、45.0%のフットステップスインザサンド、40.7%のアクラメーション、40.4%のダークエンジェルらが並んでいる。

 この中で注目されるのは、何と言ってもダークエンジェルだろう。その父も、良馬場インデックス4割越えのアクラメーションだから、ここは筋金入りの良馬場サイヤーラインとして、記憶に留めておくべきであろう。

 ダークエンジェルは現役時代、2歳時にG1ミドルパークS(芝6F)、G2ミルリーフS(芝6F8Y)などを制した馬で、3歳となった2008年に早々と種牡馬入りしている。初年度産駒からいきなり、ロイヤルアスコットのG1ダイヤモンドジュビリーSやニューマーケットのG1ジュライCを制したリーザルフォースが登場。更に、15年、16年とヨークのG1ナンソープSを連覇したメッカズエンジェル。そして今年、ニューマーケットのG1ジュライC、ヘイドックのG1スプリントCを制し、近年最強のスプリンターの呼び声も飛ぶハリーエンジェルが出現している。

 リーディング(英愛合算の種牡馬ランキング)の順位もメキメキ上がり、2013年に8位と初のトップ10入りを果たすと、2015年には4位、2016年も4位ときて、2017年は9月10日現在で、ガリレオ、ドゥバウィに次ぐ第3位に食い込んでいるのが、ダークエンジェルなのだ。種付け料も、初年度1万ユーロだったのが、2011年には7千ユーロまで下がった後、産駒が走り始めるやうなぎ上りに上昇。2016年には6万5千ユーロにまで上がっている。

 欧州のトップサイヤーで、硬い馬場への高い適性が実証されている一方、日本でデビューしたダークエンジェル産駒は、これまで皆無である。

 そろそろ、日本で走るダークエンジェル産駒が現れても、おかしくない情勢にあると言えよう。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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