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勝つと思うな、思えば負けよ

  • 2017年09月21日(木) 12時00分


◆自分の競馬に徹した馬が勝利した両トライアル

 ローズステークスにセントライト記念、2つのトライアルに共通していた言葉、それは「勝つと思うな、思えば負けよ」だった。大きな目標に向って、自分にはどれだけの可能性があるか、どの馬もこの瞬間に賭けてくる。だからこそ、レースでは必要以上に勝ちを意識する。この言葉には「意識すると要らぬことをしてしまう」という意味が含まれている。だがこの人生訓を競馬で生かすと言っても、これは難しい。もしかするとそれは結果論かもしれないのだが、勝ち馬の戦い方を振り返ってみると、どちらも無欲の勝利に見えて仕方なかった。

 ローズステークスを勝ったラビットランは、4戦目の前走が初めての芝で、そこで4角大外から素晴しい切れ味を発揮して勝っていた。ここで初めて乗った和田騎手は、かなりの自信を得ていたので、それがトライアルでの戦い方に反映していた。自分から動いていける馬ではないからとレース後語っていたが、その分、流れにのせることに専念し、それが直線でのあの豪脚につながっていた。勝ち負けよりも、自分の競馬に徹することで要らぬことはしない、これを貫くことでつかんだ勝利だったが、スケールの大きさを本番でどう発揮できるか。展開がどうなるかの馬と和田騎手が述べていたことが、大きなポイントになってくる。

 セントライト記念を勝ったミッキースワローは、さらに「勝つと思うな」のこころを覗かせていた。横山典騎手は、行かせようとしても行けなかったのであの位置になったと言っていたが、たまたま、アルアインなど有力馬を前に見るかたちになり、これが第一の勝因に見えた。早目に動いたルメール騎手が先頭に立つのをめがけてスパートしたが、横山典騎手は並ぶところまで行けるかなというていどの気持だったと言っていた。ところが、その瞬発力は並ではなかった。調教で手綱を取った菊沢調教師は、春先にはできなかったことがしっかりやれるようになったと、その成長ぶりを口にしていたが、春の京都新聞杯では早目に動いてしまって敗れていたのにくらべ、確かにちがっていた。

 本番では両馬とも立場がトライアルとはちがってくるので、正念場ということになる。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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