◆本番をにらんでスタミナを生かす乗り方になるはず ステップがさまざまに分かれる春と異なり、秋の秋華賞、菊花賞のステップになるレースはトライアルを中心に限られている。過去10年の「菊花賞」で3着以内に入った30頭のうち、神戸新聞杯に出走していた馬が、約3分の2の「19頭」を占めている。その19頭の神戸新聞杯での着順は【6-4-5-4】だった。
もう12年連続して、神戸新聞杯で3着以内に好走した馬が、本番でも少なくとも1頭は馬券に関係しているほど結びつきは強い。先週の「セントライト記念」とは、トータルすると関連度はだいたい数倍も強いとすることができる。
青葉賞を2分24秒0(上がり34秒7)で乗り切りながら、本番の日本ダービーは3秒6も遅い2分27秒6(上がり33秒7)。アドミラブル(3着)とともに超スローの流れに対応できず、悔いの残る0秒7差9着にとどまった
ベストアプローチ(父ニューアプローチ)の反撃に注目したい。アドミラブルのMデムーロ騎手は、Cルメール騎手と同じように動かなかったことを後悔したが、岩田騎手も不完全燃焼の日本ダービーだったろう。器用さに欠け、瞬時に反応できない弱点が出てしまった。
ここもスローは見えている。青葉賞、日本ダービーにつづいて3度目の騎乗。本番をにらんでのことだが、スタミナを生かす乗り方になるはずである。父は英ダービー馬ニューアプローチ。その父ガリレオも英、愛ダービー馬。その父サドラーズウェルズは愛2000ギニー馬。さらにその父ノーザンダンサーはケンタッキーダービー、プリークネスS勝ち馬。
英ダービー馬というと、過去に日本に輸入された英ダービー馬は18頭もいて、信じがたいほど日本のクラシックと関係なかったことで知られる。1958年のハードリドン以外は、日本のクラシックでは全滅だった。しかし、欧州競馬も、英ダービー馬の血統背景も、以前とは大きく異なれば、日本の調教、生産技術も以前とはまったく異なる。欧州競馬と異質の面はあっても、現代の英ダービー馬の産駒が日本にまったく合わない理由はなくなっている。
まして、ベストアプローチの牝系はアメリカ血統であり、母の父エフィシオの祖父フォルリはアルゼンチンから広がった世界の快速父系である。きょうの中山の「芙蓉S」には同じニューアプローチ直仔ドーンアプローチ産駒のファストアプローチがいるが、ファストアプローチと比べるなら、ベストアプローチのほうがはるかに欧州色は薄い。菊花賞に向け手ごたえのあるレースを期待したい。
中山の「オールカマー」は、この秋に完全復活をかける
デニムアンドルビー(父ディープインパクト)に注目。浅屈腱炎に見舞われた7歳牝馬を「どうしてあきらめずにまだ走らせるのか」というファンの声があったりするが、再起を目ざすには理由がある。金子オーナー=角居調教師=ノーザンFのトリオは、当時の最先端技術を生かし、不治の脚部難とされた屈腱炎のカネヒキリを何度も再起させ、G1競走7勝馬にしたトリオである。
カネヒキリの約10年前より、屈腱炎治療の技術はまた進んでいると思える。屈腱炎に未来をとざされる多くの馬を救うために、治療技術と調教も合わせ、デニムアンドルビーの再起を実証したいのである。なぜ、オープン馬のデニムアンドルビーなのか。未勝利馬では再生、完全復活を実証しようがないのである。