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過去の歴史的エースと同じ過程のレイデオロに期待/神戸新聞杯

  • 2017年09月25日(月) 18時00分


◆しかし、レイデオロ不在の「菊花賞」は一段と難解に

 このあと「ジャパンC」を予定している日本ダービー馬レイデオロ(父キングカメハメハ)の圧勝だった。好位で折り合って流れに乗り、早めに抜け出した武豊騎手の日本ダービー6着馬ダンビュライト(父ルーラーシップ)に力を出し切らせ、さらにはモタモタしていた後続にも追いすがる時間を与えたあと、抜け出して2馬身差だから、数字以上の完勝である。2分24秒6は例年レベルを上回った。

重賞レース回顧

2馬身差という数字以上の完勝だったレイデオロ(C)netkeiba.com


 神戸新聞杯の勝ち馬で、その年のジャパンCに挑戦した馬は、神戸新聞杯が2000mの時代、さらにこのあとに京都新聞杯があった当時を含めて、史上「6頭」存在する。ジャパンCに直行した勝ち馬はいない。

  2014年ワンアンドオンリー   菊花賞9着→JC7着
  2010年ローズキングダム    菊花賞2着→JC1着
  2008年ディープスカイ   天皇賞(秋)3着→JC2着
  2006年ドリームパスポート   菊花賞2着→JC2着
  2002年シンボリクリスエス 天皇賞(秋)1着→JC3着
  1999年オースミブライト  京都新聞杯6着→菊花8着→JC13着

 2010年のローズキングダム(父キングカメハメハ)が菊花賞2着をはさみ、ブエナビスタ降着の繰り上がりでジャパンCを勝っている。2008年ディープスカイ、2006年ドリームパスポートが好走し、同じ藤沢和雄厩舎の2002年シンボリクリスエスは天皇賞(秋)を勝ったあと、中山2200mのジャパンCをファルブラヴの「ハナ、クビ」差3着だった。

 レイデオロは、ローズキングダムと同じキングカメハメハの代表産駒で、母の父はシンボリクリスエス。体型、血統背景から、おそらく東京2400mはベストに近いだろう。日本ダービー以来、4ヶ月の休み明けで、春とほとんど変わらない476キロ(マイナス4キロ)の体つきは、研ぎ澄まされて一段とシャープに映った。

 一般に馬体重がふえてたくましくなると「成長」とされるが、それは条件馬や、必ずしもトップではないオープン馬に対する感覚であり、「シンボリルドルフ、ディープインパクト、オルフェーヴル、テイエムオペラオー、モーリス、ロードカナロア、ブエナビスタ、ジェンティルドンナ…」など歴史的なエースは、鍛え続け、ムダを削ぎ落すことによって理想体型をキープした。3歳〜4歳になったらほとんど馬体重の変動がなかった。日本ダービーを勝ったレイデオロは、ひとまわり大きくなった「490キロ台」ではなくて良かったのである。藤沢厩舎の2002年シンボリクリスエス、2003年ゼンノロブロイは日本ダービーのあと、神戸新聞杯をきちっと勝つことによって、のちのビッグレース連続制覇への道を歩み始めている。同じ過程のレイデオロに期待しよう。

 そのレイデオロが出走しない予定の「菊花賞」は一段と難解になりそうである。3000mや、3200mの長距離戦に、もう大きな価値を見いだせない考えや流儀がある一方、菊花賞や天皇賞(春)を楽勝するくらいのスタミナ能力兼備の底力がないと、日本の競馬サークルが悲願とする凱旋門賞や、キングジョージや、英ダービーで「ゴール前で止まって負ける」ケースが連続するのも事実である。天皇賞(春)の3200m、あるいは菊花賞3000m不要論はあるが、それはせめて1回くらい凱旋門賞を制した生産者や、トレーナーが力説するなら説得力があるが、止まって負けているうちは、それは鍛え方ではなく、距離区分を超えたスタミナ不足、本当の底力が乏しいからではないのか、という疑問に答えることは難しい。現代のディープインパクトや、オルフェーヴルの活躍を支えたのは、父方、あるいは母方のごく近いところに登場するステイヤー型の影響であることも否定できない。

 後方にひかえて末脚に賭けたキセキ(父ルーラーシップ)は、インの馬群をこじあけてNO.1の上がり33秒9で伸びた。これで2000m以上【2-1-1-0】となり、この夏に1000万下を脱出した数少ない男馬の上がり馬の勢いを示した。父ルーラーシップ(父キングカメハメハ。母エアグルーヴ)が本物になったのは3歳後半からであり、同じような成長カーブに乗った。ファミリーは、全体にはスピード色が濃いが、母の4分の3姉ダイワエルシエーロは2400mのオークス馬。キセキの場合は、祖母の父が英ダービー馬ドクターデヴィアスになる。今回絞れて486キロだった馬体はコンパクトに映るが、ムダを削いだ印象があり、菊花賞のためにはこのほうが対応力は増すと思えた。

 3着サトノアーサー(父ディープインパクト)は、好位からバテずにしぶとく伸びた。USA→オセアニアと移ってきたファミリーはマイラー色が濃いが、NZ3歳牝馬チャンピオンの母(父リダウツチョイス)は2000mまでは平気だった。胴長にみえる体型で、万能にも近いディープ産駒。どの馬もみんな3000mに不安はあるが、中では比較的心配の少ないタイプだろう。先行してもう一回伸びた内容が悪くない。

 4着ダンビュライトは、母方がマリアライト、クリソライト、神戸新聞杯を勝ち菊花賞3着のリアファルきょうだいや、アロンダイトが代表するキャサリーンパー(父リヴァーマン)の一族。ただ、大崩れはなくても、理想的に運んだ今回の内容から距離延長は歓迎ではないかもしれない。

 5着アドマイヤウイナーの父は、英ダービー、凱旋門賞馬のワークフォース。母の父はダンスインザダーク。条件900万下で出走できるかがカギになるが、活力あふれる牝系だけに、もう少し力強さが出てくるなら侮れないところはある。

 ベストアプローチ(父ニューアプローチは英ダービー馬)は、この日の中山9Rにファストアプローチ(父ドーンアプローチは、ニューアプローチ直仔)が出走していて歯がゆい2着だったが、この馬も伸びてはきたがどうもピリッとしなかった。デキは大きく上向いたが、やっぱり鋭くない。好スタートから5〜6番手に位置しながら、そのあと下げてしまった。本番のためにはあのまま好位キープの作戦かと思えたのだが…。本番では、たしかに失速する馬は出現するが、3000mの超スローだとレース上がりはもっと速くなる危険がある。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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