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【凱旋門賞展望】圧倒的1番人気エネイブルに逆風となる「近年の傾向」

  • 2017年09月27日(水) 12時00分


◆凱旋門賞の穴を探すならこのレース

 凱旋門賞の開催が、いよいよ今週日曜日に迫っている。

 凱旋門賞は、過去6年のうち実に5年において、牝馬が優勝しており、スパンを過去10年としても、10頭の凱旋門賞のうち6頭が牝馬だ。世界各国で開催されている馬齢重量の牡馬牝馬混合G1で、牝馬優位の傾向がこれだけ顕著に表れている例は他に見当たらず、凱旋門賞特有のものである。

 そうした背景が元来あるところに、2着馬に付けた着差の平均が5馬身という圧倒的なパフォーマンスでG1・4連勝中のエネイブル(牝3、父ナサニエル)という、傑出した牝馬が出現し凱旋門賞に照準を合わせているのだから、人気が1本被りになるのも無理からぬところだ。

 しかし、「牝馬優勢」が「エネイブル絶対説」を後押しする根拠の1つとなっているならば、エネイブルにとっては逆風となる「近年の傾向」も、実は多数存在する。

 同馬の直近走は8月24日にヨークで行われたG1ヨークシャーオークスだが、このレースをステップに凱旋門賞で連対を果たした馬は、今世紀に入って1頭もいない。

 そもそも、牝馬優勢といいつつ、英国を拠点とした牝馬による好走例はほとんどないのが凱旋門賞だ。例えば、エネイブルと同じジョン・ゴスデンの管理馬で、英オークス、キングジョージを連覇したタグルーダが、ヨークシャーオークスで2着に敗れた後に臨んだ凱旋門賞で、1番人気に応えられずに3着に敗れたのは、2014年のことだった。

 そして、更に「そもそも論」を持ち出すならば、荒れることで有名なのが凱旋門賞である。過去10年で1番人気の連対は4度ある一方、単勝オッズ20倍以上という人気薄で連対した馬が8頭もいて、一筋縄にはいかないレースであることを実証している。圧倒的1番人気のエネイブルとて、どこに落とし穴が待ち受けているか、わかったものではないのである。それでは今年、凱旋門賞の穴馬はどこに潜んでいるのだろうか。

 一時期、凱旋門賞の穴を探すならこのレースと言われたのが、ドイツで行われるG1バーデン大賞だ。11年に単勝オッズ28倍の11番人気で制したデインドリーム、09年の22倍の7番人気で2着となったユムゼイン、07年に81倍の9番人気で2着となったユムゼイン、05年に20倍の7番人気で2着となったウェスターナー、02年に17倍の8番人気で制したマリエンバードらが、いずれも前走はバーデン大賞だったのだ。

 今年の出走予定馬(25日現在)では、9月3日に行われたG1バーデン大賞(芝2400m)で2着となっているイキートス(牡5、父アーデルフルーク)がこれに該当する。この馬がもし馬券に絡めば、相当な大穴になるはずだ。過去10年、本番と最も相性のよい前哨戦は、それぞれ5頭ずつの連対馬を出している、愛チャンピオンSとヴェルメイユ賞だ。今年の出走予定馬でこれに該当するのは、9月9日に行われたG1愛チャンピオンS(芝10F)で6着となっているクリフズオブモハー(牡3、父ガリレオ)と、9月10日に行われたG1ヴェルメイユ賞(芝2400m)で3着になっているレフトハンド(牝4、父ドバウィ)で、この2頭も馬券に絡めば、いずれにしても高配当必至だ。

 愛チャンピオンSとヴェルメイユ賞に続くのが、過去10年で4頭の連対馬を出しているフォワ賞である。

 9月10日に行われた今年のG2フォワ賞(芝2400m)は、6頭という少頭数ではあったが、そのうち4頭がG1勝ち馬という、粒揃いの顔触れで争われた。このメンバーを相手にきっちりと勝ち切ったチンギスシークレット(牡4、父ソルジャーホロウ)、4か月以上の休み明けにも関わらず2着に来たクロスオブスターズ(牡4、父シーザスターズ)、同じく4か月以上の休み明けで4着だったサトノダイヤモンド(牡4、父ディープインパクト)まで、凱旋門賞でチャンスのある馬たちと見るべきで、馬券的にも抑える必要がありそうだ。

 昨年1〜3着を独占したエイダン・オブライエン勢にも、当然のことながら目を配らねばなるまい。過去10年で、前走がG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSという連対馬は2頭いるから、今年は7月29日に行われた同競走で4着となって以来の出走となるハイランドリール(牡5、父ガリレオ)は、圏内にいる馬と見るべきだろう。前走がG1愛セントレジャー(芝14F)だったオーダーオブセントジョージ(牡5、父ガリレオ)も、昨年このローテーションで3着に来ている以上、無視するわけにはいかないだろう。

 一方、鬼門と言われているローテーションを踏んでの出走となるのが、前走がG1英セントレジャー(芝14F115y)だったカプリ(牡3、父ガリレオ)である。前走がG1メイトロンS(芝8F)だったウィンター(牝3、父ガリレオ)も、ローテーション的にはかなり異例だ。今から20年ほど前になるが、96年の凱旋門賞馬エリシオが、連覇を目指して97年の凱旋門賞に臨むにあたり、G1ムーランドロンシャン賞(芝1600m)を前哨戦に選んだことがあったが、この年の凱旋門賞でエリシオは6着に敗れ、試みは失敗に終わっている。

 凱旋門賞の最終的な結論は、枠順や馬場状態を勘案した上で、週末にnetkeiba.comのサイト上で発表させていただく予定にしている。馬場状態だが、25日(月曜日)の段階で、ペネトロメーター値「3.7」というのは、10日の前哨戦の時と全く同じだ。なかなかカラっとは晴れない時季だけに、良馬場は望みづらい状況となっている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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