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【バースデー企画(2)】「50歳の小牧さんへ」エージェント&トラックマンからの手紙

  • 2017年09月26日(火) 18時01分
小牧太

バースデー企画第2弾!小牧騎手と親交の深いお2人のお話を伺います


今週は、バースデー企画第2弾。10年以上、小牧騎手のエージェントを務める『競馬ニホン』の荒木敏宏さんと、移籍以降、公私ともに親交の深い『スポーツニッポン』の菱田誠さんのお手紙を紹介します。エージェントとしての忸怩たる思いや、記者の目に映る「ジョッキー・小牧太」の魅力など、貴重なお話をたくさん語ってくださいました。(取材・文/不破由妃子 ※撮影協力:和彩温(南草津))

■「小牧さんは常日頃『ボチボチで』と言いますが…」
【参加メンバー】
鮫島良太騎手、川須栄彦騎手、高倉稜騎手、『競馬ニホン』荒木敏宏さん(エージェント)、『スポーツニッポン』菱田誠さん(長年の友人であり、小牧騎手のコラム『金言! 珍言!』の担当記者』)、『加圧トレーニングスタジオ WAY』淨閑延浩さん(トレーナー)、長男・加矢太さん、長女・ひかりさん、以上8名。

「いつでもクビにしてください」と、何度も何度も…


<前回の続きで、今週はエージェントの荒木敏宏さんのお手紙からスタートです>

『えっ? 50歳? あの永遠青年の小牧くんが、とうとう50歳? 仮にも「親父の星」なんて言葉は美辞麗句にもなりません。頑強な心、そしてサイボーグのような頑丈な肉体美は、世間の50歳には想像もつかない日々の努力の証。900勝はもちろん、1000勝なんてまさに通過点。やがては西のレジェンドに、そしてあの的場文男さんを超える日本一の超レジェンドに。50歳、おめでとう。ナイスミドル、小牧太君。

荒木敏宏』


小牧太

荒木敏宏さん「あの的場文男さんを超える日本一の超レジェンドに」


小牧 荒木さん、ありがとう。

荒木 小牧くんのエージェントになったのは、確か2006年の10月。ある人からの紹介でね。

小牧 うん。お世話になってもう10年やね。

荒木 エージェントになった次の次の年に、レジネッタで桜花賞を勝ってくれて。それまでほかの騎手のエージェントもやってきたけど、GIを勝つジョッキーのエージェントなんて初めてだったものだから、すごく感激したと同時に、僕自身、こんなに嬉しいものかと昂ぶってしまった(苦笑)。でもねぇ、そのあともいっぱいチャンスがあったんやけど、エージェントが悪いばかりに、小牧くんには迷惑ばかりかけてしまって…。忸怩たる思いがあります。僕がエージェントじゃなかったら、とっくに1000勝ジョッキーになっていたと思う。

小牧 そんなことはないで。そんなふうに言わんで。

荒木 いやいや、GIももっといっぱい勝ててたと思うから…。何度も何度も小牧くんに言うたよね?「いつでもクビにしてください」って。

小牧 そうだっけ? 忘れたわ(笑)。

荒木 でも、そのたびに小牧くんは「ずっとお願いしたいです」って言ってくれて。小牧くんに甘えている部分があるんやなぁと思うと同時に、ホンマに優しい人やなと。

小牧 優しいとかではなく、要するに自分が勝っていかなアカンねんから。僕が勝ちさえすれば、頼まれるんやから。

荒木 いやいや…。この10年で一番思い出すのは、ローズキングダムのダービーに乗れなかったこと。あれは最高に悔しかった。

小牧 僕も悔しかったけど、あれは騎乗停止になった僕が悪いわけで。それに、あれがあったおかげで、僕自身、変われたところもあるから。今回の騎乗停止でも、また気持ちが変わったからね。人生って、悪い出来事も捉え方ひとつやからね。それにしても、あのダービーのゴール前は印象に残ってるなぁ。騎乗停止やったから、実家に帰って大勢で観てたんやけど、それまで散々騒いでいたのに、ゴール前にきたらシーンとなったからね(苦笑)。

荒木 僕も、申し訳ないけど、エイシンフラッシュを大声で応援してしまった(苦笑)。小牧くん自身が招いたこととはいえ、あそこでローズキングダムに勝たれたら、僕としてはそれほど悔しいことはないからね。

小牧 まぁまぁいろいろあったし、これからもなんやいろいろあるかもしれないけど、引き続き、小牧太をよろしくお願いします。

荒木 僕も一生懸命に小牧くんを売り込んでいくので、こちらこそよろしくお願いします。

川須 小牧さん、そういえばもう一人、スペシャルゲストがくるんですよ。

小牧 なんや、期待してしまうやん! まぁ、俺の予想は菱田さんやけど…。

<なんて話をしていたら、飛行機の遅延で到着が遅れていたスペシャルゲスト(?)が登場!>

小牧 ほら! 菱田さんやん! 予想通りや(笑)。

菱田 遅れてすんません。

小牧 手紙、書いてきてくれた?

菱田 もちろん。飛行機のなかで慌てて書いたわ(苦笑)。

『小牧さん、50歳の誕生日、おめでとうございます。ここに来るまでに、50歳以上のプロスポーツ選手がどれほどいるかネットで調べてきましたが、シニアのカテゴリーが存在するゴルフと、競馬・競輪・ボートの公営競技以外では、サッカーの三浦知良選手以外ヒットしませんでした。

しかし、三浦知良選手も現役Jリーガーとはいえ、J1で活躍するには、いささか無理があろうかと思います。年齢とは、そういうものだと思います。ですから小牧さんも、これからの騎手人生は神様のくれたオマケだと思って、体を労わりつつ頑張ってください。

ただ、重賞などでここぞのチャンスがきたときは、「さすが小牧太!」というような、存在感を発揮してください。

あとはボチボチでいいと思います。なぜなら、小牧さんは常日頃から「ボチボチやっていくわ」と口癖のように言いますが、それが決して手抜きではないことをわかっているからです。素晴らしき関西弁として、「ボチボチ」頑張ってください。

菱田誠』


小牧太

菱田誠さん「これからの騎手人生は神様のくれたオマケだと思って…」


小牧 菱田さんは、栗東にきて初めてできた友達やからね。

菱田 そうやね。小牧さんが「友達がおらん」言うて。

小牧 橋口先生のコンペをきっかけに仲良くなってね。そのときに、「誰も友達がおらんねん」て、菱田さんに言うて。それからの付き合いやね。菱田さんには、本当にいろいろお世話になった。

菱田 小牧さんは、最初からざっくばらんやったからね。一番印象に残っているエピソードは、武豊くんと小牧さんが初めて飲んだときのこと。そのときもこの店でね。さすがの小牧さんも緊張しはって、酒のペースがもう…(苦笑)。

小牧 確か、ユタカくんがローズキングダムでジャパンCを勝ったお祝いやったね。緊張っていうかね、ユタカくんと飲むと、いつも飲み過ぎてしまうねん。だって、昔からのファンやから。僕からしたら、一緒に飲めることはもちろん、一緒におれること自体、考えられへんことやからね。だから、どうしても嬉しくなってしまって、ついつい飲み過ぎてしまうねん。

菱田 それにしても、あのときは帰りに外の植木に顔から突っ込んで、ものすごい血が出て(苦笑)。ユタカくんがすでに帰ったあとやったから、血だらけの小牧さんを俺ともう一人で抱えて家まで連れて行って。ピンポンを押したら奥さんが出てきたから、「旦那がえらいことになってます」って言うたら、「そのへんに放っておいてください」って言われて(笑)。小牧さんと飲むと、いつもその日のことを思い出すわ。

──菱田さんにお聞きしたいんですけど、競馬記者から見た“ジョッキー・小牧太”の魅力とは?

菱田 取材のなかで、小牧さんが「ひょっとしたらくるかもしれへん…」て言うた馬は、たとえ人気がなくても、上位にくる確率がホンマに高いこと。それだけ能力を読めるいうことやと思う。

荒木 そうそう! 「あの馬、次どうする?」って僕が聞いたとき、たとえその前の成績が悪い馬でも、小牧くんが「あの馬は走るから、取られんようにしとって」って言うた馬は、ホンマに走るもんね。

菱田 僕が小牧さんに期待するのは、GIもそうやけど、まずは重賞やね。ねぇ、小牧さん。

小牧 そうやね。僕ね、重賞を勝ったときは、お祝いでもらった胡蝶蘭をマンションのエントランスに飾るようにしててん。もちろん、許可をもらった上で、名前の書いてある札は抜いてね。で、最近、うちの嫁さんがエントランスを通ったときに、住人の人たちが「最近は胡蝶蘭がないわね」って言うてたって(笑)。また飾れるように、頑張らんとね。

小牧太

また胡蝶蘭を飾れるように、頑張らんとね

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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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