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“奇跡”の配合マリオ 父エスポワールシチー母ヤマトマリオンともに安達厩舎/吉田竜作マル秘週報

  • 2017年09月27日(水) 18時00分


◆祖母の面影を思い出しながら

 手がけた馬の子や孫が入厩してくることは少なからずある。それが“厩舎ゆかりの血統”となり、後の厩舎の繁栄を支える――。かつて「名門」と言われた厩舎には、そうした流れがあったように思う。

 しかし、それは母系の血のつながりの話で、父系もとなると、なかなか簡単な話ではない。基本的に種牡馬となれるのはごくひと握り。さらに種牡馬になれたとしても、厳しい競争にさらされるうえに、「父も母(系)も手がけた」という馬同士が配合されるためには馬主、生産者の理解もいる。もろもろ考えると実現する確率は相当、低くなるのではないか?

 現1歳に父ロードカナロア、母カレンチャンの牝馬で、カレンモエと名付けられた逸材がいる。ご存じ、父も母も安田隆厩舎に所属し、GI、それも同じスプリンターズS&高松宮記念を制覇。それだけでなく担当したのも、ともに岩本助手だった。記者ですら父、母のデビューからレースでの活躍をたどっていくうちに感慨深くなるが、当事者の岩本助手、安田隆調教師、そして調教にまたがった安田翔現調教師の胸中は? かなり先のことではあるが、今からデビューが待ち遠しい。

 同じようなケースを日本に長く居ついた血統、それも日高の馬産地で実現するのは、さらに確率を大幅に下げる。そういう意味では、“奇跡の馬”と言っていいのがマリオ(牡2・安達)だ。母ヤマトマリオンは2006年フローラS、08年東海Sほか、芝&ダート重賞を制した活躍馬。そして父エスポワールシチーはご存じ、ダートGI・JpnI9勝を挙げた砂の猛者だ。いずれも安達厩舎からデビューし、現役生活を全うした。

 ついでに言えば、ヤマトマリオンの母ヤマトプリティ(現役時6勝)も、斉藤義美厩舎から安達師が引き継いで管理していた馬だ。母系は長く日本に根付いてきた血統で、父も母系は「シチー」の冠号でおなじみ友駿ホースクラブの血統。いわゆる社台系の生産馬を除いて、父、母ともこれだけなじみがある血も、そう多くはなかろう。当然、注目せずにはいられないが、物珍しさだけではなく、素材としてもなかなかで、先週ゲート試験を難なくクリアしてみせた。

「癖も特にないし、調整は順調にいってますね。お母さんは難しいところがありましたが、この馬の気性は穏やか。そのあたりはエスポワールシチーの性格を受け継いでいるのでしょう。首の使い方がいいし、時間をかけてやれば、走ってきそうな感じはあります」(安達調教師)

 最近の競馬は「大手牧場の運動会」とやゆされる向きもあるが、この手の馬が活躍してくれれば、競馬やPOGの楽しみ方がもっと変わってくるのではないか。血統表をさかのぼって、母や祖母の走りを思い出しながら、当時の自分を振り返る。そんなノスタルジックな楽しみ方もありだと思うのだが…。

 ちなみに、この世界に入った当時、幾度となく個人的な“財政の危機”を救ってくれたのがこのマリオの祖母ヤマトプリティ。そんな祖母の面影を思い出しながら、この将来性豊かな2歳馬を見守りたいと思っている。

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