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【初回無料公開】レイデオロのゲートに隠れたファインプレー「馬自身が出て行ったように見えた」

  • 2017年09月28日(木) 18時01分
哲三の眼!

▲記念すべき初回は今年のダービーコンビ!


元JRA騎手でGI通算11勝を誇る佐藤哲三氏の新連載がスタート! このコラムでは前週に行われたJRA全レースの中から、若手・ベテラン問わずジョッキーの技術・判断が勝利に繋がったレースを哲三氏自らがピックアップし、道中の攻防の推察から、勝敗を分けたポイントを解説します。記念すべき初回は神戸新聞杯を制したレイデオロ&ルメール騎手!(構成:赤見千尋)

馬・騎手・牧場に厩舎…すべてが噛みあった勝利


 このコラムの趣旨は、僕の目から見たジョッキーのファインプレーを分析すること。今週は神戸新聞杯(GII)を取り上げますが、今回の一番のファインプレーはレイデオロ自身だと感じました。

 もちろん、クリストフ(・ルメール騎手)はいつも通りさすがの騎乗でしたし、一回目から着眼点がズレてしまい申し訳ないのですが…、ダービー馬が秋の大舞台に向けて素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたので、ぜひこのレースを取り上げたいと思います。

■9月24日(日)神戸新聞杯(GII)

 レイデオロのファインプレー、まずはゲートの出が速かったことです。クリストフが出そうと思って何かしている感じではなかったし、いつものように“なるべく出る態勢を作ってあげて”という状態で、馬自身が出て行ったように見えました。

 以前、僕が騎乗していたインティライミも、最初のうちはゲートを出なかったんですけど、成長と共に集中できるようになって、勝手に馬が出るようになっていったんです。

 これまでレイデオロは後ろから行って勝っていたけれど、切れ味を活かす馬ではないような気がしています。33秒台の末脚を使って勝つというよりも、34秒とか34.5などのラップで勝つタイプだと思っていたので、そういう意味ではある程度ゲートを速く出られないといけない。先行するというわけじゃないけれど、極力前に行って、確実に勝てる位置から競馬をするというのが合っているのかなと思います。

 だから、ホープフルSみたいに後ろからというわけでもなく、ダービーみたいに途中から動いて行くわけでもなく、最初から好位にいられる馬になれればもっと強くなるなと思っていました。今回は道中マクられる隙も見せないし、併せて来られる隙も見せないし、前はしっかり射程圏内に入れて、パーフェクトなレースを見せてくれましたね。

 それから、夏場の牧場から厩舎の仕上げもファインプレーだったと思います。ダービーの時も仕上がっていたけれど、けっこうテンションが上がっていて、パドックでも厩務員さんを強引に引っ張っている感じでした。そこをクリストフがピントを合わせて、スピード調節しながら上手く乗ったわけですけど、今回は休養の牧場から、ダービー馬としてあるべき姿を守りながら、育てながら、そこが上手くいったのかなと。

 実際、休み明けの2400mって難しいんですよ。ちゃんと仕上げてあげないと、引っ掛かって行きっぷりが良すぎてしまったり、ゲートで変な出方をしたり。でも今回はそういうところもなく、しっかり仕上げても落ち着いているし…、さすがは藤沢先生。

 パドックでは落ち着いていたというか、落ち着きすぎて「大丈夫かな?」というくらいのテンションだったけれど、それが内に秘めた闘志だったんですね。輪乗りの時の映像を見たらすごい風格があって。立ち姿が全然違っていたんですよ。馬は変わるものだなって改めて思いました。

 クリストフもさすがだなと思ったのは、レイデオロがゲートを出た中で、後ろの方から行って差し脚を活かそうという気持ちがないから、すんなりと前の方のポジションに行くことができる。実際は、休み明けだし1コーナーまでハミを取るのはわかっているけど、それをムリに抑えるんじゃなくて、曖昧な抑え方くらいで調節していて、1コーナーに入ったら落ち着くだろうという自信のある乗り方でした。そしてその通り、1コーナーに入ったらしっかり収まっていましたから。

 差し脚を活かしたいという意識が強ければ、あそこは早めに抑えるジョッキーもいます。そうなると、ゲートは出たけどスピードを殺すというレースになってしまう。後ろからも勝つけど、最初から差し脚を活かそうと限定しない、いつもながらクリストフのすごさであり、ファインプレーだったと思います。

哲三の眼!

▲「差し脚を活かそうと限定しない、いつもながらクリストフのすごさであり、ファインプレーだったと思います」


 今回は、まずは馬のファインプレー、ダービー後に上手く調整した牧場と厩舎のファインプレー、最後はクリストフのファインプレーと、すべてが揃いました。どんな馬でもずっと勝ち続けるというのは難しいことだけど、チャンピオンホースが王道の競馬をして、それに対して勝った負けたがある方が競馬は楽しいですよね。

 競馬場にいらしていたお客さんも、レイデオロの話をしている方がたくさんいて。それが「なんだよ」じゃなくて、「強かったな」って誉め言葉が出て来るのは僕も嬉しいです。ダービー馬が素晴らしいスタートを切ってくれて、この秋どんどん盛り上がりそうですね。

今週の注目コンビ


哲三の眼!

▲今週はビッグアーサー&福永祐一騎手のコンビに注目!


 今週注目しているのはスプリンターズS(GI)のビッグアーサーと福永祐一騎手です。注目する点は、もちろん勝利するところも見たいのですが、今回は着順云々より引っかかって行きやすいビッグアーサーを祐一君がどの位置でどう乗りこなすか! ですね。

 祐一君は今、騎乗をシフトチェンジしている最中で、去年とは乗り方が全然違います。基本にしていきたいベースとなる技術の上手くいく・いかないの部分は、この馬にいい勉強をさせてもらえると思うんです。その中で、スプリンターズSという大舞台でビッグアーサーにどう対応していくのか。さらに、今回だけじゃなくて今後どういった風に修正をしていくのか、そういうところが楽しみですね。

(文中敬称略)

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1970年9月14日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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