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【1年越しの復帰】三浦皇成騎手(3)『これは自分に与えられた試練なのか』

  • 2017年10月02日(月) 12時01分
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▲復帰初日に2勝。ウィナーズサークルへ詰めかけたファンからの「おかえりー!」の声に笑顔で応えた


大怪我から1年経って、いよいよ復帰の日を迎えた三浦騎手。「落馬した8月2週目に復帰したい」と自身で望みましたが、運命というのは不思議なもので、舞台は落馬したレースと同じダート1700m。それでも強い気持ちと競馬に乗れる喜びを胸に、立つべき舞台にあがりました。実は復帰の時、騎手仲間に絶対に思われたくなかったことがあったといいます。はたして、それは…? (取材:赤見千尋)


(前回のつづき)

「お帰りー!」の声援にウルッとくるものが…


赤見 復帰のメドが立ったのは7月に入ってからということでしたが、「落馬した8月2週目に復帰したい」というのは、どういうお気持ちから?

三浦 なんていうのか、ケジメみたいなものですかね。復帰が見えてきたとき、どうせなら落ちた週に復帰したいという思いが自分のなかに生まれて。

赤見 条件も落馬したレースと同じダート1700mでしたね。

三浦 さすがに同じ舞台での復帰になるとは思いませんでしたけど(笑)。しかも、前から決まっていた馬ではなく、急きょ舞い込んできた依頼だったんです。「ああ、これは自分に与えられた試練なのかな」と思いましたね。

赤見 復帰が決まったとはいえ、なにせ1年ぶりですから、乗り馬が集まるかどうか…といった不安もあったのでは?

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▲「復帰が決まったとはいえ、乗り馬が集まるかどうか…といった不安もあったのでは?」


三浦 それはありました。しかも、北海道開催ですからね。8月2週目といったら、すでにジョッキーのローテーションも出来上がっていて、いい馬にはいいジョッキーが決まっているでしょうし、そもそも滞在競馬は、普段の調教から乗って競馬でも乗せてもらうという流れが主流です。そのサイクルのなかに、突然僕が入っていったわけですからね。「2週目に復帰します」と宣言したところで、実は復帰週は乗り馬がいなかったりして…なんて考えたりもしました。

赤見 それでも“北海道で復帰”というのは、どうしても譲れなかったと。

三浦 そうですね。もちろん、鹿戸厩舎の馬で復帰したいという気持ちはあったし、実際、鹿戸先生が新潟で馬を用意してくれていたんですけど…。だから、申し訳ないことをしてしまったんですが、それでも先生は誰よりも、それこそ僕以上に復帰を喜んでくれました。

赤見 復帰初日のパドックでは、「お帰りー!」というたくさんの声援に迎えられましたね。

三浦 はい。さすがにウルッとくるものがありました。ただ、それ以上に緊張感が押し寄せてきて…。

赤見 そうだったんですね。

三浦 パドックで馬に跨るまでは、逆に全然緊張していなかったんです。こんな気持ちで1年ぶりの競馬を迎えていいんだろうかと思ったくらい(笑)。でも、跨ったときに、馬の背中から“これから競馬だ”というピリッとしたものがすごく伝わってきて、“やっぱり俺は騎手なんだ”と強烈に意識したんです。そうしたら、一気に緊張感が高まってきて、そこからはあんまり覚えてないくらい。それくらい緊張していたと思います。

赤見 とてもそんなふうには見えませんでした。初戦(札幌1R・2歳未勝利・メモリーコウ5着)から相変わらずスタートは速かったし。

三浦 いやいや、それは馬が速かっただけです。僕はただただ煽られないように気を付けていただけで、“これでもか!”っていうくらい鬣(たてがみ)にしがみついてました(笑)。

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▲復帰初戦は奇しくも落馬した舞台と同じ札幌ダート1700m(札幌1R・2歳未勝利・メモリーコウ5着)


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▲同日に初勝利、レース前にメディアの取材で語っていた「止まっていた時計を動かす」という言葉を体現してみせた


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▲初勝利の引き上げ、ファンや関係者に拍手で迎えられた


赤見 そうだったんですね(笑)。でも、久々とは思えないくらい、フォームもびっちり決まってましたよ。馬が止まってからも、すごく追えていて。

三浦 そういっていただけるのはすごく嬉しいです。ケガで長いあいだ休んでいたジョッキーが復帰すると、ジョッキー同士でも「あいつ、久しぶりだからすごい格好して乗ってるな」とか、そういう話になることがあるんです。僕としては、そう言われるのだけは絶対に嫌だったので。

赤見 そればかりか、復帰初日から2勝を挙げられて、1年間積み重ねてきたものを見事に証明しましたものね。

三浦 こんなことを言ったら乗せてくださった方に失礼になるかもしれませんが、自分としても、まずはしっかり乗ってこられるだけで合格だろうと思っていたんです。それが、初日から2つも勝たせていただいて。トレーニングのおかげなのかどうかわかりませんが、あの日は自分が思った以上に馬が動いたんですよね。あのときはホント、「競馬の神様っているんだな」と思うくらい、何かの力に助けられているような気がしました。

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▲「あの日は自分が思った以上に馬が動いて、『競馬の神様っているんだな』って」


赤見 なるほど。初日は5鞍に騎乗されたわけですが、久々に騎手としてルーティンをこなしてみて、どんな心境でしたか?

三浦 「ああ、ここに戻ってきたくて、俺は1年間頑張ったんだな」と思いました。ただ、ホッとしたのは一瞬で、これからまた本当の勝負が始まるんだなと思ったら、足りないものがたくさん見えてきて。この1年、自分なりにすごく頑張ってきたつもりなんですけど、実際に復帰して競馬に乗ったことで、改めて自分にはまだまだ課題があることに気づかされましたね。だから今は、競馬が終わるたびに、早く次のことに取り組みたいという気持ちに駆られているところです。

(次回へつづく)

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東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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