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ダート短距離路線での地方馬の活躍

  • 2017年10月10日(火) 18時00分


◆中央OP馬の地方移籍、僕としては歓迎

 先週の大井・東京盃は、船橋のキタサンミカヅキが直線鮮やかに差し切り、浦和のブルドッグボスが2着で、地方馬のワンツーという決着。ここのところダート短距離路線では地方馬の活躍が目立っていて、8月の盛岡・クラスターCでも地方馬のワンツーだった。

 とはいえ、クラスターC2着のラブバレットこそ岩手の生え抜きだが、クラスターCを勝って東京盃2着のブルドッグボス、東京盃を勝ったキタサンミカヅキは、ともに中央から転厩してまだ戦績が浅い馬たち。地方競馬ファンの中には「中央から転厩してきたばかりの馬が……」と、あまり快く思わない人たちもいるかもしれない。もちろん地方生え抜きの馬が活躍してくれればそれに越したことはないが、中央のオープン馬が地方に移籍して活躍するのも、僕の思いとしては歓迎だ。

 ダートグレードの短距離路線で、中央から移籍してきた地方馬が活躍する伏線は、実は少し前にあった。ブルドッグボスの転厩初戦で、3着に敗れた習志野きらっとスプリント(7月25日・船橋)だ。

 習志野きらっとスプリントは、地方競馬のスーパースプリントシリーズ・ファイナルでもあるわけだが、今年のメンバーは例年とちょっと様相が違っていた。ブルドッグボスを含め、中央のオープンもしくは準オープンからの転入初戦という馬が5頭もいたのだ。しかも成績が頭打ちになったとかではなく、いずれもまだまだ活躍が期待できそうという馬たちだ。

 日本のダート競馬では、マイル〜2000mの路線ならGI/JpnIがいくつもあるが、短距離となるとJBCスプリントが唯一。そこを目指す馬たち、とくに中央馬にとっては、前哨戦の東京盃からして、かなり狭き門となる。しかし地方所属であれば、ある程度の中央のオープン実績だったり地方での重賞実績がある馬であれば、出走はかなり容易になる。習志野きらっとスプリントにおける転入初戦馬の大挙出走は、おそらくそうしたプランを考えてのことだったと思われる。

 なぜ習志野きらっとスプリントだったのか。それは、地方競馬では中央から転厩初戦でのダートグレード出走を認めていない主催者もあるからだ。習志野きらっとスプリントを使っておけば、8月のクラスターC(盛岡)もしくはサマーチャンピオン(佐賀)、9月のオーバルスプリント(浦和)という選択肢から、東京盃そしてJBCスプリントへというローテーションが確実に組める。これを中央所属馬が使おうと思えば、相当に賞金を稼いでいなければ難しい。

 地方競馬で行われるダートグレードでは、中央馬は単勝一桁台で、地方馬はほとんどが単勝万馬券というような、実力差が開きすぎていて馬券的な興味も削がれてしまうレースがたまにあるが、こうして中央からオープンクラスの馬が移籍してくれば確実にレースがおもしろくなるし、盛り上がる。それで地方の競馬場や厩舎が活気づけば、元は中央からの転厩馬だけだったような馬主さんも、デビューから地方に入れてくれるようになるかもしれない。

 キタサンミカヅキもブルドッグボスも、おそらくJBCスプリント(大井)を狙っての転厩と思われる。もしどちらかがそのJBCスプリントを制することになれば、それは“大あっぱれ”といっていいだろう。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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