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歴史を変える「1勝馬」/菊花賞

  • 2017年10月21日(土) 18時00分


◆秘めるスタミナは渋馬場で生きる

 降りつづく雨は台風の影響も重なり、予測される以上の「道悪馬場」をもたらす心配がある。菊花賞3000mが重馬場、不良馬場になったケースはめったになく、2013年エピファネイアが圧勝した以前には、メジロマックイーンの1990年とか、もっと古いグリーングラスの1976年が思い浮かぶくらいである。

 3000mの渋馬場は、スローで長距離戦とは思えないほど上がりの速くなる例年とは異なり、底力と、文字通りのスタミナ勝負になるだろう。重馬場の巧拙というだけでなく、ふだんの中距離戦とはかなり異なる力関係を示すことになるはずである。

 もともとは典型的なスピード系一族出身。4代母チャペルオブドリームズは、快速の大種牡馬ストームキャットと同配合に近い血を持つ4分の3妹であり、そのため一族のほとんどが快速タイプのベストアプローチに期待したい。

 祖母の父にシルヴァーホークが入ったあたりから距離の幅が広がり、母の半姉になるティッカーテープは芝10ハロンのアメリカンオークスを勝っている。名馬の出現した牝系なのでノーザンFが輸入した。同じように名馬出現の牝系には必ず食指を動かすから、ベストアプローチのオーナーはシェイク・モハメド一族である。

 このファミリーに英ダービー馬ニューアプローチ(その父ガリレオも英ダービー馬。現代をリードする大種牡馬)の配合により、快速系というよりスタミナを備えた中距離型になった印象があるのが、ベストアプローチ。

 春の青葉賞2400mは、やがて中〜長距離型に育つ馬の台頭レースとして知られる。今春、大器アドミラブルがレースレコードの2分23秒6で快勝すると、0秒4差の2分24秒0で2着に食い込んだのが、ベストアプローチだった。この馬も従来のレコードを上回っている。スピード能力というより、秘めるスタミナを示した印象があった。

 その反動もあったか、超スローに対応できない機動力のなさで日本ダービーは9着にとどまると、休み明けの神戸新聞杯も6着に終わって評価急落だが、この秋、身体つきと力強いフットワークに成長がみえる。スローからの上がり勝負では、距離が延びても良さは生きない心配大だったが、連日の雨で渋馬場なら(重馬場必至か)、重下手でない限り、秘めるスタミナが生きる可能性が高くなった。重馬場の本馬場調教は、力強い動きをみせた。ガリレオ系なら、重馬場下手の危険はないように思える。高速レースでなければ、置かれて直線だけの勝負になるような機動力不足のレースにはならないはずである。

 相手は絞る必要はないが、同じように勝ちみに遅く、やっぱりスタミナ型の印象があるダンビュライト(父ルーラーシップ)は有力候補に入れる。

 この2頭、長い菊花賞の歴史の中、まだ勝った馬が1頭もいない「1勝馬」だが、長距離タイプが勝ちにくい体系になっているから、別に弱いわけではない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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