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A.オブライエン師がG1年間最多勝記録に挑む

  • 2017年10月25日(水) 12時00分


◆オブライエン厩舎×ディープインパクト産駒が英G1に出走!

 21日にアスコットで行われたG1ブリティッシュチャンピオンズ・フィリーズ&メアズSをハイドレンジア(牝3、父ガリレオ)で制し、今季のG1勝利数が25に到達。03年にボビー・フランケルがマークした調教師平地G1年間最多勝記録に肩を並べたエイダン・オブライエンが、新記録樹立に挑むのが、今週土曜日(28日)にドンカスターで行われる、英国における2017年最後の平地G1となるレイシングポストトロフィー(芝8F)だ。

 レイシングポストトロフィーといえば、英国における出世レースとして知られており、今世紀に入ってから昨年までの勝ち馬16頭のうち、6頭(01年のハイチャパラル、02年のブライアンボルー、04年のモティヴェイター、06年のオーソライズド、11年のキャメロット、13年のキングストンヒル)が、翌年3歳クラシックのいずれかで勝利を収めている。更に、09年の勝ち馬セントニコラスアビーは、古馬になって5つのG1を制しており、非常に高い確率で将来のA級馬を輩出するレースとなっている。

 そうでなくても注目度が高い一戦に加えて、オブライエン調教師の新記録がかかり、なおかつ、オブライエン厩舎から出走を予定している1頭は日本産のディープインパクト産駒なのである。更に言えば、このレースは現在、アンドレア・アツィーニ騎手が4連覇中で、騎手による同一G1・5連覇という途轍もない記録もかかっているのだ。見どころ満載の、絶対に見逃せない一戦と言えよう。

 この後、G1が13もあるブリーダーズCの開催を控えている他、豪州に遠征させている馬もおり、オブライエン師の新記録達成は確実視されているのだが、しかし、ここで決めたいという師の強い意欲が、オブライエン厩舎からレイシングポストトロフィーにエントリーしている馬のリストを見ると、ひしひしと伝わってくる。現段階で、来年のG1英ダービーへ向けた前売りで1番人気と2番人気の座にあるのは、いずれもオブライエンの管理馬なのだが、その2頭をいずれもレイシングポストトロフィーにぶつけてくる予定なのだ。

 1頭は、サクソンウォリアー(牡2、父ディープインパクト)である。母は、クールモアが所有し、オブライエンが管理したメイビー(父ガリレオ)で、G1モイグレアスタッドS(芝7F)を含む5勝を挙げた同馬は、現役を退くと日本で繁殖生活をスタート。ディープインパクトを交配されて、15年1月26日に安平で生まれたのがサクソンウォリアーだ。

 離乳が済んだ15年10月にアイルランドに渡り、母と同じオブライエン厩舎に入厩。8月27日にカラのメイドン(芝8F)を3.1/4馬身差で制してデビュー勝ち。続いて出走したのが9月24日にナースで行われたG2ベレスフォードS(芝8F)で、ここも2.1/2馬身差で完勝し、無敗の重賞制覇を果たしている。

 現段階で、ブックメーカー各社が7〜11倍のオッズを掲げて英ダービーの前売り1番人気に推しているのがサクソンウォリアーなら、各社が9〜11倍のオッズを掲げ、横並びの1番人気か2番人気に推しているのが、同じオブイライエン厩舎のザペンタゴン(牡2、父ガリレオ)である。

 G1サンタラリ賞(芝2000m)勝ち馬ヴァダウィーナの8番仔で、G2コンセイユドパリ賞(芝2400m)勝ち馬ヴァダマーの半弟にあたるザペンタゴン。6月10日にカラのメイドン(芝7F)でデビューするも6着に敗退。しかし、7月15日に同じくカラで行われたメイドン(芝7F)では一変して、後続に8.1/2馬身差をつける圧倒的なレース振りで初勝利をマーク。続いて出走したのが7月27日にナースで行われたG3タイロスS(芝7F)で、ここも1.3/4馬身差で制して重賞初制覇を果たしている。

 2頭の前に立ちはだかろうというのが、ジム・ボルジャー厩舎のヴァーバルデックステリティ(牡2、父ヴォーカライズド)だ。9月10日にカラで行われたG1ナショナルS(芝7F)を3.1/2馬身差で快勝した馬である。

 デビューから無敗の3連勝で、9月30日にニューマーケットで行われたG2ロイヤルロッジS(芝8F)を制した、ジョン・ゴスデン厩舎のロアリングライオン(牡2、父キトゥンズジョイ)も、手強い相手だ。

 更に、これだけ強力なメンバーが揃いながら、23日の登録ステージで1万7500ポンド(約270万円)を払って追加登録してきたのが、ゴドルフィンのロクスリー(牡2、父ニューアプローチ)だ。10月15日にグッドウッドで行われたメイドン(芝9F11y)でデビューし、イスタンブールサルタン(牡2、父ゾファニー)と同着でデビュー勝ちを果たしたのがロクスリーである。

 さて、ここまで御紹介した有力馬の中に、5連覇の偉業がかかるアンドレア・アツィーニの騎乗馬はいない。実は先週末まで、彼にはレイシングポストトロフィーで乗る馬がいなかったのだが、チリアン(牡2、父イフラージ)を管理するマーティン・ミード調教師から、騎乗依頼があったのが、23日(月曜日)のことだった。

 8月31日にチェルムスフォードのメイドン(AW8F)を制してデビュー2戦目で初勝利を挙げると、続いて出走した、9月9日にヘイドックで行われたLRアセンダントS(芝8F37y)を3.1/2馬身差で快勝し、2勝目を挙げたのがチリアンだ。現段階でオッズ11〜17倍の5〜8番人気で、決してチャンスのない馬ではなく、大胆な騎乗をするアツィーニがどんな乗り方をするか、見ものである。

 英国の「出世レース」レイシングポストトロフィーに、日本の競馬ファンの皆様も、ぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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