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すごいぞ!フリビオン

  • 2017年10月24日(火) 18時00分


◆まだまだ大きな“あっぱれ”が待っていそう

 高知のフリビオンが、初めての遠征競馬にもかかわらず、単勝1.4倍の断然人気に支持された佐賀の西日本ダービーを制した。

 初めてフリビオンを見たという人の中には、そのレースぶりに驚かされた方もいたのではないだろうか。スタートはイマイチ、押してもあまり進まず位置取りは中団よりうしろから。向正面ではようやく5番手まで位置取りを上げたものの、前の4頭がペースアップするとついていけず。やや差が開いて、鞍上がムチを入れてもその差を詰められず。そのあたりでは、すでに一杯なのかというふうにも見えたのではないだろうか。

 しかしフリビオンにエンジンがかかるのは3、4コーナー中間あたりから。このときも4コーナーではまだ5番手。しかし佐賀の短い200mの直線で、前を行く馬たちを涼しい顔をしたまま、並ぶまもなく差し切って見せた。前走、地元の古馬相手の重賞・珊瑚冠賞でもほとんど同じようなレースぶりだった。

斉藤修

涼しい顔で差し切り、西日本ダービーを制したフリビオン


 フリビオンはこれで重賞6勝目。今年3歳になってからは、初戦の土佐春花賞で3着に敗れたものの、その後はこれで9連勝。黒潮皐月賞、高知優駿という高知の二冠を制したが、西日本ダービーの1週前に行われた三冠目・黒潮菊花賞は見送り、遠征をともなう交流のタイトルを見事に制して見せた。

 その成績だけでもちょっとスゴイと思えるのだが、フリビオンにはほかにもいろいろなスゴイが詰まっている。

 まず1つめは、NARグランプリ・年度代表馬に4度輝いたフリオーソの初年度産駒としての活躍だ。少し前であれば、地方出身で種牡馬になる馬自体が少なく、活躍までするという種牡馬は皆無といってよかった。しかしフリオーソは、昨年の地方・新種牡馬ランキングでは、スマートファルコン、トランセンドらを抑えて堂々の1位。地方の2歳馬全体の種牡馬ランキングでも、サウスヴィグラス、パイロに続いて3位だった。フリビオンは、フリオーソ初年度産駒の活躍馬の1頭ということになる。ちなみにフリオーソは、今年2歳の2世代目の産駒からも、早くも重賞勝ち馬を出している(9月21日、園田プリンセスCを制したサラヒメ)。

 2つめのスゴイは、高知デビューの生え抜きとしての活躍だ。10年ほど前、高知競馬は廃止寸前まで売上げが落ち込み、2歳馬の入厩がほどんどなく、2歳戦がほとんど組まれない時期が何年も続いた。しかしその後徐々に持ち直し、2009年度には2歳重賞の金の鞍賞が復活(実際には2010年1月1日に行われたため3歳馬の重賞だったが)。そして2015年には、高知競馬としては高額の1着賞金50万円という2歳新馬戦が組まれるようになった。その初年度、最初の勝ち馬となったのが、牝馬線戦で全国区の活躍を見せているディアマルコ。さらに昨年、新馬戦復活2年目の最初の勝ち馬となったのがフリビオンなのだ。

 そして3つめ。フリビオンには、人をめぐる物語もある。フリビオンのデビューからずっと手綱をとってきたベテランの中西達也騎手は、6月18日の高知優駿を制したあと、調教師試験に合格。8月からは調教師となった。替わってフリビオンの主戦となったのは、中西騎手とは地方競馬教養センター時代の同期、西川敏弘騎手だった(ともに現在47歳)。

 8月から9月にかけて、西川騎手に乗替ったフリビオンは3歳の準重賞を2連勝。その後、それまで管理していた炭田健二調教師のはからいで、フリビオンは中西達也厩舎に移籍することになった。フリビオンの移籍初戦となった古馬相手の重賞・珊瑚冠賞は、中西厩舎にとっても開業しての初出走で、それを見事に制して見せたのだ。

 その珊瑚冠賞では西川騎手には騎乗馬の先約があり、フリビオンには騎乗することができず。しかし西川騎手の手綱に戻り、中西厩舎にとってもフリビオンにとっても、初めての他場への遠征競馬となったのが西日本ダービーだった。

斉藤修

中西達也調教師(馬の右側)、西川敏弘騎手という、教養センター時代同期のコンビで西日本ダービーを制した


 フリビオンの次走には、地方全国交流のダービーグランプリ(11月19日・水沢)が予定されている。さらに大晦日に地元高知で行われる高知県知事賞と、年内の目標はその2戦とのこと。フリビオンの将来には、まだまだ大きな“あっぱれ”が待っていそうだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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