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ルーラーシップのニックス配合+マンファス3×2の牝馬クロスを持つホウオウサブリナ

  • 2017年10月25日(水) 12時00分
アンジュパッセ(牝 美浦・伊藤圭三 父Shamardal、母ピクシープリンセス)
 母ピクシープリンセスはエリザベス女王杯(GI)3着馬。その半弟ジョヴァンニはダートでOPクラスまで出世し、同じく半弟のケルヴィンサイドはユニコーンS(GIII)7着という成績がある。母オータムメロディーは「Kingmambo×Sadler's Wells」なのでエルコンドルパサーと同じ組み合わせで、Nureyev≒Sadler's Wells 3×2という大胆な4分の3同血クロスを持っている。ヨーロッパ向きの重厚な繁殖牝馬だ。父Shamardalは仏2000ギニー(G1)、仏ダービー(G1)を制した名馬で、名種牡馬Street Cry(Zenyatta、Winx、Street Senceなどの父)の全姉を母に持つという血統も魅力的。種牡馬としてはLope de Vega(10年仏2000ギニー-G1、10年仏ダービー-G1)をはじめ多くのG1ホースを送り出し、アイルランドを代表する名種牡馬の1頭となっている。母ピクシープリンセスは同国へ渡ってShamardalを種付けし、日本で本馬を出産した。母の父ディープインパクトが持つHalo≒Sir Ivor 2×4を、父Shamardalが持つHalo 5×4で継続し、自身はMachiavellianを介したHalo≒Sir IvorとMr.Prospectorのクロスを持っている。綺麗な配合構成なので楽しみが大きい。芝向きの中距離タイプ。

サトノユニゾン(牡 美浦・古賀慎明 父シニスターミニスター、母ハニーパイ)
 母ハニーパイはエーデルワイス賞(JpnIII)を勝ち、兵庫ジュニアグランプリ(JpnII)で3着となった。3代母リップスティックは80年代のダート戦線で存在感を示したリキサンパワーの半妹。リキサンパワーはダートで行われていた時代の札幌記念(GIII・ダ2000m)でキングハイセイコー、アンドレアモンといった最強クラスを破り、58.5kgのトップハンデでフェブラリーH(GIII・ダ1600m)を制覇。ダート競馬で中央馬が地方馬に歯が立たなかった時代に南関東の大井に遠征し、帝王賞でトムカウントの2着となり、カウンテスアップに先着するという実績を残した。本馬の父シニスターミニスターは現役時代にブルーグラスS(米G1)を勝ち、引退後は日本におけるA.P.Indy系種牡馬の草分けとして優れた成績を収めている。産駒はダート専用で、JRAでインカンテーションとキングズガードが重賞ウィナーとなった。交配している繁殖牝馬のレベルは決して高くないものの、産駒成績は優秀で、本馬を生産したグランド牧場だけを見てもダブルスター(15年マイルCS南部杯-JpnI・4着)とハヤブサマカオー(2戦2勝)が出ている。母方にアサティスが入るので配合構成はダブルスターに似ている。ダート向きの中距離タイプ。

タイプツーエー(牡 栗東・須貝尚介 父ヘニーヒューズ、母シナジーウィスパー)
 母シナジーウィスパーは現役時代2着が最高で、6戦して勝ち星を挙げられなかったが、トーセンジョーダン(11年天皇賞・秋-GIなど重賞4勝)、ダークメッセージ(08年日経新春杯-GII・2着)、トーセンホマレボシ(12年京都新聞杯-GII、12年日本ダービー-GI・3着)の半妹で、近親にはカンパニー、トーセンスターダム、バトルバニヤン、ニューベリー、レニングラード、スパイキュール、ヒストリカルなど活躍馬多数。母の父ネオユニヴァースはアエロリット(17年NHKマイルC-GI、17年クイーンC-GIII)を出してブルードメアサイアーとしての評価を高めている。父ヘニーヒューズは先週終了時点のJRAファーストシーズンサイアーランキングでロードカナロア、ノヴェリストに次ぐ第3位で、ダート戦に限定すると、新種牡馬はもちろん全種牡馬のなかでトップ。配合的にはフジキセキ牝馬との相性が抜群(8戦3勝、2着1回、3着2回)で、フジキセキは「サンデーサイレンス+In Reality」という構成なので、本馬の母シナジーウィスパーはこれに似ている。マイル前後のダートで活躍しそうだ。

フードゥルブラン(牡 栗東・角居勝彦 父スズカマンボ、母ホワイトカーニバル)
 チャンピオンズC(GI)、JBCレディスクラシック(JpnI)など6つのダート重賞を制したサンビスタの全弟。父スズカマンボはダンスインザダークとほぼ4分の3同血といえる良血で、現役時代は天皇賞・春(GI)を制覇した。種牡馬としては母方のKingmamboが強く主張しているのかダートの成績がいい。母ホワイトカーニバルはフェアリーS(GIII・芝1200m)の勝ち馬、2代母イエローブルームは報知杯4歳牝馬特別(GII・芝1400m)2着と、2代連続で芝重賞で実績を残しているが、それぞれの父がミシル、パークリージェントとダートテイストの強い種牡馬だったので、父スズカマンボの適性と相まってサンビスタはダート向きに出た。全弟の本馬もダート中距離で本領を発揮するだろう。

ホウオウサブリナ(牝 美浦・奥村武 父ルーラーシップ、母トラヴェシーア)
 母トラヴェシーアは不出走ながら、キングカメハメハの半妹にあたる良血。これにルーラーシップを付けて誕生したのが本馬。ルーラーシップの父はキングカメハメハなので、本馬はマンファス(キングカメハメハの母)を3×2でクロスさせている。大種牡馬ノーザンテースト(Lady Angela 3×2)を彷彿させる大胆な配合馬で、たとえばディープスカイやストロングリターンの母がそうであるように、名牝の強いクロスを持つ繁殖牝馬は成功例が目に付く。本馬のセールスポイントはそれだけでなく、菊花賞馬キセキを出した「ルーラーシップ×ディープインパクト」の組み合わせであること。この配合は出走7頭中5頭が勝ち上がり、残り2頭のうちの1頭は[0-1-1-0]という成績の2歳馬なので近いうちに勝ち上がれるはず。きわめて相性のいい組み合わせなので芝中距離で活躍が期待できそうだ。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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