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父ロードカナロア、母シンメイフジの良血ロードザナドゥ

  • 2017年11月01日(水) 12時00分
ガーデンテラス(牡 美浦・尾形充弘 父Candy Ride、母ソラリア)
 母ソラリアは南米チリ産で、同国の三冠レースのひとつエルダービー(智G1・芝2400m)を2分23秒34というレコードタイムで制したほか、サンティアゴ馬事協会の2歳牝馬チャンピオン決定戦であるアルトゥロライオンペーニャ賞(智G1・芝1600m)、同協会の桜花賞に相当するポリャデポトランカス(智G1・芝1700m)を制覇した名牝。

 母の父Scat Daddyはアメリカを拠点に優れた実績を残したStorm Cat系の名種牡馬で、シャトル供用されたチリでは見事リーディングサイアーとなった。惜しくも2015年に早世したが、No Nay Neverなど優れた後継種牡馬に恵まれ、クールモアスタッドの手厚いサポートもあるので今後まだまだサイアーラインを伸ばしそうだ。父Candy Rideは亜米で6戦全勝の名馬。アルゼンチン時代は2つのG1を含めて3戦全勝。ホアキンSデアンチョレナ大賞(G1・芝1600m)では後続に8馬身差をつけ1分31秒01で駆け抜けた。アメリカに移籍後は3戦全勝、パシフィッククラシックS(米G1・ダ10f)とアメリカンH(米G2・ダ9f)ではトラックレコードを叩き出した。

 父系は、Candy Ride→Ride the Rails→Cryptoclearance→Fappiano→Mr.Prospectorとさかのぼる。種牡馬としても成功し、Shared Belief(米2歳牡馬チャンピオン)やGun Runner(ウッドワードSなど米G1を4勝)など多くの活躍馬を出している。本馬は「Candy Ride+Storm Cat+Mr.Prospector」という成功パターンに属しているので期待できる。芝・ダート兼用のマイラー。

ピラータ(牡 美浦・国枝栄 父クロフネ、母ディナシー)
 母ディナシーは不出走馬ながら、当歳時にセレクトセールで史上最高額となる6億円(税抜)で落札された超高馬。トゥザグローリー(11年京都記念-GIIなど5つの重賞を制覇)、トゥザワールド(14年弥生賞-GII)、トーセンビクトリー(17年中山牝馬S-GIII)の全姉でもある。2代母トゥザヴィクトリーはエリザベス女王杯(GI)など重賞4勝、ドバイワールドC(G1)2着などの戦績がある。本馬の父はクロフネ。したがってトリップ(12年ジャパンダートダービー-JpnI・2着、12年弥生賞-GII・2着)、バトードール(10年ジャパンダートダービー-JpnI・3着、10年ユニコーンS-GIII・2着)の4分の3同血にあたる。本馬が属するフェアリードール牝系とクロフネは相性がよく、JRAで走った11頭中9頭が勝ち上がっている。本馬も確実に走ってきそうだ。芝・ダート兼用のマイラー。

ラブセイナ(牝 美浦・二ノ宮敬宇 父ディープインパクト、母エルメスティアラ)
 皐月賞(GI)を勝ったディーマジェスティの全妹で、セイクレットレーヴ(父アドマイヤムーン/12年ニュージーランドT-GII・2着)の半妹。2代母シンコウエルメスは現役時代1戦0勝という成績ながら、ジェネラス(91年英ダービー-G1、91年愛ダービー-G1、91年キングジョージ6世&クイーンエリザベスS-英G1)、オースミタイクーン(97年マイラーズC-GII、97年セントウルS-GIII)の半妹で、Imagine(01年英オークス-G1、01年愛1000ギニー-G1)の全姉にあたる良血。シンコウエルメスの孫に今年のサンタラリ賞(仏G1・芝2000m)の勝ち馬Sobetsuがいるように、日本だけでなく海外でも牝系を広げている。

 エルメスティアラは「ブライアンズタイム×Sadler's Wells」というパワー型で、いかにも持続力勝負に強いスタミナ型の配合。その特長どおり、全兄ディーマジェスティは中山コースの皐月賞(GI)を勝った。本馬も、どちらかといえば小回りコースのほうが良く、ハイペースの競馬に適性が高そうだ。6月9日生まれなので長い目で見たい。芝向きの中距離タイプ。

リンフォルツァンド(牝 栗東・角居勝彦 父ディープインパクト、母リッスン)
 タッチングスピーチ(15年ローズS-GII)、ムーヴザワールド(17年共同通信杯-GIII・3着、東京スポーツ杯2歳S-GIII・3着)の全妹にあたる。母はフィリーズマイル(英G1・芝8f)の勝ち馬。その全姉にモイグレアスタッドS(愛G1・芝7f)を勝ったSequoyah、血統構成がまったく同じ馬(父が同じで母同士が全姉妹)にオペラ賞(仏G2・芝1850m)を勝ったInsight、本邦輸入種牡馬サフロンウォルデンがいる。母方にSadler's Wellsを持つディープインパクト産駒には、トーセンラーとスピルバーグの兄弟、ディーマジェスティ、シンハライト、マリアライト、アドミラブル、アンビシャス、ヴァンキッシュランなどがいる。Sadler's Wellsは欧州2400m向きなので鈍重なところを伝えるが、本馬は母方の奥にスピード豊かなアメリカ血統が詰め込まれているのでバランスが取れている。おそらく本当に良くなるのは3歳夏を越してからだと思われるが、全兄ムーヴザワールドのようにPOG期間中でもそれなりにやれるはず。

ロードザナドゥ(牡 栗東・橋田満 父ロードカナロア、母シンメイフジ)
 3代母シンコウラブリイはマイルCS(GI)など6つの重賞を制覇し、2代母レディミューズはチューリップ賞(GIII)2着馬で、母シンメイフジは新潟2歳S(GIII)と関東オークス(Jpn2)の覇者と、この牝系は代々優れた資質を伝えている。父ロードカナロアは現在、ファーストシーズンサイアーランキングで首位を独走中。初年度の10月終了時点でJRA22勝は、ディープインパクトの20勝(2010年)を上回るハイペース(率はディープのほうが上)。ディープインパクトは最終的に41勝まで数字を伸ばしたので、ロードカナロアもその域に達する可能性は大いにある。

 2代母レディミューズはHyperionを豊富に含んでおり、その多くはSon-in-Lawとセットの血(Swaps、Imitation、Forli、Abernant、Aureole)。父ロードカナロアはGraustark=His Majesty 6×4が配合的骨格のひとつで、その母Flower BowlがHyperionとSon-in-Lawの組み合わせから成る血なので、同じ組成の血を母方に豊富に持つ本馬の配合は大物感を感じさせる。半姉と半兄はいずれも未勝利馬だが、この馬は違うのではないか。芝向きのマイラーだろう。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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