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高値で購買された米3冠馬アメリカンフェイローの初年度産駒

  • 2017年11月15日(水) 12時00分


◆日本の生産者も100万ドルで購買

 北米のケンタッキーでは、11月6日のファシグティプトン・ノヴェンバーセールに続いて、現在はキーンランド・ノヴェンバーセール(11月7日〜18日)が進行中だが、アメリカンフェイロー(父パイオニアオヴザナイル)の初年度産駒となる当歳馬が高く評価され、高値で購買されている。

 2015年に、1978年のアファームド以来37年ぶり史上12頭目の3冠を達成しただけでなく、秋のG1BCクラシック(d10F)も制し史上初の「グランドスラム」を達成したのがアメリカンフェイローだ。3歳シーズンをもって引退し、2016年春からケンタッキーのアッシュフォード・スタッドで種牡馬入り。20万ドルという新種牡馬として破格の種付け料が設定されたにも関わらず、208頭の牝馬を集め、今年の春に178頭の初年度産駒が誕生。このうち163頭が健康に育って血統登録が行われている。

 その子供たちが離乳を終え、いよいよマーケットに登場する時季を迎えたのだ。1981年秋にアファームドの初年度産駒が市場に初登場した時にも大きな話題となったが、それ以来となる北米3冠馬の初年度産駒上場に、ケンタッキーだけでなく世界各国の競馬関係者が大きな関心を寄せることになった。

 6日(月曜日)に行われたファシグティプトン・ノヴェンバーセールには、5頭のアメリカンフェイロー産駒が登場。このうち上場番号46番としてセールスリングに現れた、父アメリカンフェイロー・母アンタッチトタレントの牝馬が、当歳馬としてはセッション最高値タイの100万ドルで購買されることになった。

 母アンタッチトタレント(父ストームキャット)は、G3ソレントS(d6.5F)に勝ち、G1デルマーデビュータントS(d7F)でも2着となっている活躍馬だ。上場馬は母の8番仔となるが、2番仔はG1アーカンソーダービー(d9F)に勝ち、G1ケンタッキーダービー(d10F)2着、G1プリークネスS(d9.5F)2着の成績を残したボディマイスターである。ボディマイスターの父はエンパイアメーカーで、アメリカンフェイローの祖父がエンパイアメーカーだから、同系配合を施されて生まれた当歳馬に、100万ドルの価格がついたのである。

 そして、代理人のナーヴィック・インターナショナルを通じて同馬を購買したのは、伊藤佳幸氏のグランド牧場であった。将来の繁殖牝馬としての価値を織り込んだ投資であろうと思われるが、現役馬としての期待も大きく、同馬がもし日本で走ることになれば、日本の競馬ファンには大きな楽しみとなるはずだ。

 この他、G1BCジュヴェナイルターフ(芝8F)2着、G1ナショナルS(芝7F)3着などの成績を残したジョヴァンニボルディーニの半弟にあたる、父アメリカンフェイロー・母ダンシングトリエステ(父オールドトリエステ)の牡馬が、当歳馬としては4番目の高値となる52万5千ドルで購買されるなど、上場された5頭のアメリカンフェイロー産駒は全頭が購買され「完売」となった。

 7日(火曜日)からスタートしたキーンランド・ノヴェンバーセールの初日に、当歳馬としては2番目の高値となる50万ドルで購買されたのが、上場番号82番としてセールスリングに登場した父アメリカンフェイロー・母ライフアットテンの牝馬だった。母ライフアットテン(父マリブムーン)は、G1ベルデイムS(d9F),G1オグデンフィップスH(d8.5F)という2つのG1を含めて4つの重賞を制した活躍馬である。上場馬はその5番仔となるが、2番仔のシンギングブレット(父ハードスパン)はG2アムステルダムS(d6.5F)3着の成績を残している。

 同日、G2モンロヴィアS(芝6.5F)2着など重賞入着を4回記録したキンドル(父インディアンチャーリー)の2番仔となる牡馬(父アメリカンフェイロー)も、当歳馬としてはセッション4番目の高値となる40万ドルで購買されている。

 更に、セール4日目となる10日(金曜日)に、当歳馬としてはこの日の最高値となる57万5千ドルで購買されたのも、上場番号984番として上場されたアメリカンフェイロー産駒だった。4つの特別を含めて6勝を挙げた他、G3ナッソーカウンティS(d7F)3着の実績があるジェイジーウォリアー(父ハーランズホリデー)の4番仔で、母の兄弟にG1フリゼッタS(d8F)勝ち馬エージーウォリアーをはじめ3頭の重賞勝ち馬がいるという、活気あるファミリーを背景に持つ馬である。

 結局キーンランドでは、8頭上場されたアメリカンフェイロー産駒のうち、5頭の購買が成立しているアメリカンフェイローの初年度産駒は、ファシグティプトンとキーンランドをあわせて13頭が上場され、このうち10頭が平均価格44万5500ドル、日本円にしておよそ5075万円で購買されることになった。

 総じて水準の高い牝馬に交配されていることを考慮しても、マーケットがアメリカンフェイロー産駒を高く評価したことは間違いなく、来年のイヤリングマーケット、そして再来年のデビューが、益々楽しみになったと言えそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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