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香港馬も欧州馬も強力、日本馬はどこまで太刀打ちできるか――香港国際競走展望

  • 2017年12月06日(水) 12時00分


◆QE2世Cを制したネオリアリズムも、今回の相手は相当骨っぽい

 今週日曜日(10日)にシャティン競馬場で開催される、香港国際競走の展望をお届けしたい。

 まずは、距離2400mのG1香港ヴァーズから。格的には、3年連続の参戦となる愛国調教馬ハイランドリール(牡5、父ガリレオ)が間違いなく最上位にいる。一昨年のこのレースを含めてG1・6勝というのは、今年の出走予定馬の中では図抜けた実績で、昨年も半馬身差の2着と健闘していることを考えれば、コース適性も抜群である。使い減りしないタフな馬だが、昨年がその年の9戦目、一昨年がその年の8戦目だったのに対し、7月下旬から10月下旬まで3カ月にわたって戦列を離れた今年はここが7戦目で、余力を残しての参戦となっているのは好材料だ。前走のG1BCターフ(芝12F)で、これまでにないほどのズブさを見せたのが気にはなるが、引退レースのここはメイチの勝負であろうことを考えると、軸はこの馬で良いように思う。

 相手の一番手は、99年のボージア、14年のフリントシャーと、このレースを2勝している仏国の伯楽アンドレ・ファーブルが送り込むタリズマティーク(牡4、父メダグリアドロー)だろう。前走のG1BCターフでハイランドリールを破ってG1初制覇を果しているだけに、ここも、逆転の可能性もある2番手候補と言えそうだ。

 こうした欧州勢を相手に、豪州在籍時にG1勝ちの実績があり、昨季のG1チャンピオンズ&チェイターC(芝2400m)で3着に入っている地元のイーグルウェイ(セン5、父モアザンレディ)が、地の利を活かしてどこまで頑張れるか。日本勢では、水準の高さが際立つ3歳世代の強豪キセキ(牡3、父ルーラーシップ)に期待したいところだが、物凄くタフな競馬だったG1菊花賞(芝3000m)のダメージが残っていないか、おおいに気懸りである。

 続いて、距離1200mのG1香港スプリント。地元勢が圧倒的優位に立つカテゴリーだけに、香港馬から入るのが常道だろう。そして、香港のこの路線で今、最強馬と言われているのがミスタースタニングである。G1勝ちはまだない馬で、実績という点では、このレース3年連続で3着以内にはいっているペニアフォビア(セン6、父ダンディマン)や、5月のG1チェアマンズスプリントプライズ(芝1200m)勝ち馬ラッキーバブルス(セン6、父セブリング)らには劣るのだが、近走の成績は明らかに、そういう馬たちよりもミスタースタニングの方が力量が上であることを示している。

 例えば、前々走のG2プレミアボウル(芝1200m)では、この馬より斤量が1ポンド軽かったラッキーバブルス相手に半馬身差の完勝。そして出走全馬がほぼ同斤だった前走G2ジョッキークラブスプリント(芝1200m)では1.1/2馬身抜けて快勝しているのだ。競馬だから何が起きるかわからないが、普通に走れば勝つのはこの馬のはずである。

 2番手以下は混戦だ。昨年のこのレースの2着馬ラッキーバブルスは、前哨戦のG2ジョッキークラブスプリントで、道中何度も行き場を無くす場面があって9着に大敗した。同馬の主戦はザック・パートンだが、香港スプリントで鞍上に指名されたのは豪州の名手ヒュー・ボウマンである。同馬が5月にG1チェアマンズスプリントプライズを制した際にも鞍上にいたボウマンの手綱さばきが加味されれば、2番手候補の筆頭はやはりこの馬かと思う。

 今年春のG1アルクオーツスプリントスプリント(芝6F)勝ち馬で、前走G3セーネワーズ賞(芝1200m)を前年に続いて連覇しての参戦となる仏国調教馬ザライトマン(セン5、父ロペデヴェガ)は、欧州短距離路線のトップグループを形成する1頭だ。だが、過去10年で欧州勢の連対はただ1度のみという傾向からは、強くは推せない馬である。ロードカナロア級の超大物であれば勝負になる日本勢だが、今年の2頭にそこまでの実力はない。掲示板の期待はかけられても、勝ち負けまでは難しいと見る。

 続いて、距離1600mのG1香港マイル。ここも、過去10年の連対馬20頭のうち16頭までもが香港勢と、地元が圧倒的優位に立つレースだが、今年は外国勢もなかなかの顔触れが集まり、近年にない混戦となっている。地元勢の1番手に挙げたいのが、昨年のこのレースの2着馬ヘレンパラゴン(牡5、父ポーラン)だ。昨シーズン後半、G1スチュワーズC(芝1600m)、G1クイーンズシルヴァージュビリーC(芝1400m)を連勝し、ひとまわりスケールアップした姿を見せた同馬。今季初戦のG2シャティントロフィー(芝1600m)では、久々に加えて133ポンド(約60.3キロ)のハンデも堪えて7着に敗れたが、続くG2ジョッキークラブマイル(芝1600m)では、本来に近い走りで2着を確保。極めて順調に本番を迎えようとしている。そのG1ジョッキークラブマイル勝ち馬で、名手ジョアン・モレイラが手綱をとるシーズンズブルーム(セン5、父キャプテンソーニャドール)も、要注意の1頭だろう。

 こうした地元勢に切り込んでいくのが、ランカスターボマー(牡3、父ウォーフロント)、ローリーポーリー(牝3、父ウォーフロント)という、エイダン・オブライエンが送り込む3歳馬2頭である。次走G1クイーンエリザベス2世S(芝8F)を勝つことになるパースエイシヴを2着に退けて制したG1サンチャリオットS(芝8F)を含めて、今季この路線のG1を3勝しているのがローリーポーリーだ。一方、G1セントジェームスパレスS(芝7F213y)2着、G1ウッドバインマイル(芝8F)2着、G1BCマイル(芝8F)2着と、ビッグレースでの好走実績が豊富なのがランカスターボマーである。

 ローリーポーリーが、ここが今季10戦目、ランカスターボマーが、ここが今季9戦目と、長いシーズンを休みなく戦ってきた疲労の蓄積は確かに気懸りではあるが、彼等が本領を発揮すれば、地元勢もうかうかとはしていられないはずである。本領を発揮すれば、首位争いに加わっておかしくないのは、日本から参戦のサトノアラジン(牡6、父ディープインパクト)も同様だ。ヒュー・ボウマンのマジックが炸裂することを期待したい。

 最後に、距離2000mのG1香港カップ。99年のジムアンドトニック、05年のヴェンジェンスオヴレイン、14年のデザインズオンロームに次ぐ史上4頭目の、G1クイーンエリザベス2世C(芝2000m)・G1香港カップ同一年連覇を、ネオリアリズム(牡6、父ネオユニヴァース)が達成できるかどうかが最大の焦点だが、春よりは相手が相当骨っぽくなっている。

 例えば、15/16年シーズンの香港年度代表馬ワーザー(セン6、父タビストック)は、怪我のため昨シーズンの前半を棒に振り、戦列に復帰しG1香港ゴールドC(芝2000m)で勝利を収めてはいたものの、一番良かった頃には戻り切っていないという評判だった。しかし、今季のワーザーは順調で、2戦目となった前走G2ジョッキークラブC(芝2000m)できっちりと勝利を収め、万全の態勢でここへ駒を進めてくる。

 そして欧州から、G1愛チャンピオンS(芝10F)2着、G1英チャンピオンS(芝9F212y)2着という、10ハロン路線のバリバリの強豪であるポエツワード(牡4、父ポエツヴォイス)が参戦する。同じく欧州から、重賞3勝馬で、G1アーリントンミリオン(芝10F)2年連続3着の実績を誇るドーヴィル(牡4、父ガリレオ)や、カナダのG1EPテイラーS(芝10F)を勝っての参戦となるブロンドミー(牝5、父タマユズ)も馳せ参じている。この顔触れを封じることが出来れば、ネオリアリズムの世界的評価は一段と上がることになるだろう。

 このコース得意としているステファノス(牡6、父ディープインパクト)、7歳を迎えてなお進化を続けるスマートレイアー(牝7、父ディープインパクト)も、馬券圏内に絡んでくる可能性はおおいにありそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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