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チャンピオンズCは惜しくも2着…テイエムジンソクの古川騎手らにインタビュー!

  • 2017年12月05日(火) 18時00分
古川騎手

20年ぶりのGI勝利に挑んだ古川騎手




坂口正大先生「外国の騎手は研究熱心でアグレッシブだね」


 チャンピオンズカップ(GI・中京競馬場ダート1800m)は、20年ぶりにやってきたGI勝利へ…と古川騎手に絞って応援。花の12期生のビッグチャンスを楽しみにしていたんですがねェー。

 終わってみればゴールドドリーム号が強かった。フェブラリーステークスを勝ち、同一年の中央ダートGI完全制覇は史上3頭目となる快挙。おめでとうございます!平田調教師の目を細めて喜ばれる何とも愛くるしい顔が浮かんできますよ。この馬がいることをうっかり忘れていましたね。平田先生、大変失礼しました(ぺこり)。強さと厩舎側の丹精込めた馬づくりに脱帽です。もっともっと強くなるでしょうね。楽しみがまた増えました。

ゴールドドリーム

フェブラリーステークス、チャンピオンズCを制したゴールドドリーム


 それにしても外国人騎手強し…です。この秋のGI戦線、10/1のスプリンターズSから8戦中7戦が外国人騎手の勝利。うちM・デムーロ騎手が4勝し、日本人騎手の勝利は武豊騎手の天皇賞だけです。

武豊

秋のG1戦線で勝利している武豊騎手


 元JRA調教師の坂口先生に「外国の騎手はどうして強いんですかね」とチャンピオンズCのレース回顧をお聞きすると…

坂口 テイエムジンソク騎乗の古川騎手は、好騎乗でしたね。今までの経験が上手くいかされた騎乗だったと思います。

常石 もうベテランですからね。同期です。

坂口 そうでしたか?

常石 ライアン・ムーア騎手は名ジョッキーですが、テン乗りであそこまで持ってくるのは、素晴らしいですね。どうして上手いんですかね。何か乗り方が違うんですか?

坂口 それははっきりわかりませんが、どんな馬に対してもこつこつ乗って馬のいいところを見つけ出す能力が優れているんでしょうね。研究熱心です。それにみんなアグレッシブだね。みんな日本人にはない「何とかしてやるんだ」という気迫を持っていると思います。日本人騎手も当然勝ちたい気持ちがあると思いますが、なんでしょうね?

常石 アグレッシブとは難しいですね。

坂口 攻めの姿勢とか行動力があるなど積極的な意気込みですね。

常石 勝ちたい気持ちや思いはみんな同じなんですが、瞬時の判断能力や決断力、思いっきりの強さの違いなんでしょうか。まだまだ未知の世界ですね。環境も左右されると思います。ヨーロッパでは、子供の時から馬に親しんでると言いますからね。僕も今年7月にオランダへ行ったんですが3歳くらいの子供が馬に乗ってるので驚きました。自宅の横に厩舎があり乗るだけではなく世話もしていました。日本では、自宅で犬を飼うような感覚だと言ってました。

坂口 彼らは、そんな環境ではなかったとしても馬への執念というか思いが強いですね。日本へ単独で来て苦労もたくさんあると思う。それを乗り越えて騎乗していく勇気と強さでしょうね。

常石 勝ちたい気持ちはあっても、僕も含めて環境の良さに甘えるところがあるのかもしれませんね…。

 11月に障害者乗馬の全国大会があり、パラリンピック5大会連続メダリスト、イギリスのリー・ピアソンさんが強化選手へのアドバイスとデモンストレーションを披露してくれました。僕が通うクラブの馬に騎乗したのですが2回乗っただけで馬が動くので「どうして?」と目から鱗でした。その馬のオーナーも曰く「この馬重たいのにどうして動くんですか?」と頭をひねっていました。

リー・ピアソン

パラリンピック5大会連続メダリストのリー・ピアソンさんのデモンストレーション


ピアソン 動かすのではなく、馬に話しかけ気持ちを通わせて馬が気持ちよくなるように、自ら動きたい気持ちになるようにするんです。

常石 僕もいつも会話していると思うのですが、いざ馬に跨ると懸命に動かそうとして、馬上で体がぐらぐら揺れてしまうんですよね。

ピアソン 上体を安定させ頭から足先までまっすぐに思いを集中させて跨ると、馬の一番いいところに座ることができる。お互いが気持ちよく動けるようになる。無理しなくてもいいですよ。自然な感じでリラックスして乗ってください。

常石 んー…無理矢理って感じはあるなと思いました。

 リー・ピアソンさんは、手も足も不自由で16回も手術したそうです。でも笑顔も最高でした。あの笑顔を見たとき僕の笑顔はまだまだだなーと実感。あの笑顔になるまで馬と本気で会話しないといけないことが伝わってきました。来年も来訪してくださるそうなので機会があればぜひ三木ホースランドへ見に来てください。余談になってしまいましたが、ハングリー精神の違いがあるのかなと感じ、まだまだ甘い自分に叱咤激励です。

リー・ピアソン

リー・ピアソンさんと記念写真


***

 20年ぶりのビッグチャンスをつかんでほしいと思い、古川騎手に取材しました。

常石 テイエムジンソクってどんな馬ですか?

古川 長くいい脚を使える強い馬ですよ。初めて跨ったときからそう感じましたね。

常石 気性面はどうですか?

古川 少し落ち着きがほしいけど元気がいいし、競馬が終われば落ち着くんだよね。

常石 遅くなっちゃいましたけど、前走はおめでとうございます。一気に上がってきましたね。

古川 今までにない強い勝ち方でした。ダートレースは少ないからチャンスは生かしていきたいです。メンバーにGIホースが多く、胸を借りる立場のチャレンジャーです。中京は左回りですが、日曜日に調教で乗って問題ありませんでした。長くいい脚が使え、スピードの持続力もあるので楽しみです。成長力に驚かされています。

常石 12月の飲み会は勝ち祝いにしましょう。

古川 いいこと言ってくれるね。そうなったらいいですね。頑張ります。

和田 今回気合入ってるからな、僕らも楽しみだよ。

常石 わっ君も(エリザベス女王杯の)クビ差、悔しかったですね。

和田 負けは負け、これが勝負の世界。また頑張るよ。それよりお前も頑張れよ。

常石 はい。経路覚えるのに気合を入れます。何とか認定も受けることができました。

和田 じゃー、みんなで飲み会するか?

常石 楽しみだ!何年ぶりかな?

 チャンピオンズカップはずっと2番手を追走し渾身の走りで強豪のGI馬コパノリッキーを捕らえ「来たー!」と叫んだ途端に、ムーア騎乗のゴールドドリームに大外から差されての2着に涙をのんだ。「くそー!なんで負けるんだ!」という叫びが聞こえるようでした。

 力があることが証明されGI馬とも肩を並べて戦えることに自信をもって新たな挑戦をしてほしい。古川とジンソクから目が離せません。年明けフェブラリーがあるからね。同期の活躍にはやっぱり力が入ってしまいます。僕にもエネルギーが送られてきてうれしいです。外国人騎手と肩を並べて、アグレッシブに行こうぜ!

***

メイショウスミトモ

シリウスSを制したメイショウスミトモにも注目


 今年も残すところ、JRAのGIは4競走のみ。キタサンブラックの最後の走りが今から楽しみです。寒くなってきましたが応援に力が入り寒さも吹っ飛びそうです。みなさん、クリスマスイブは競馬場でライブ観戦をお楽しみください。

 つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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