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タタソールズ・ディセンバーセール・牝馬セッションは大盛況

  • 2017年12月13日(水) 12時00分


◆現役屈指の快速馬をめぐり、クールモアとゴドルフィンが一騎打ち

 12月4日から7日まで、英国のニューマーケットで開催された「タタソールズ・デイセンバーセール・牝馬セッション」は、総売り上げが前年比で52.8%アップの6831万5300ギニー、平均価格が前年比54.4%アップの10万1208ギニーという、大盛況に終わった。

 平均価格はこのセールの歴代レコードで、10万ギニーの大台越えも初めてのことだった総売り上げは、2007年にマークした6961万3500ギニーに次ぐ歴代第2位だったが、今年の上場頭数857頭は、2007年の上場頭数1132頭に比べて3割以上も少なく、それでいて2007年の数字に肉薄したのだから、その好況ぶりは大変なものだった。

 中間価格は前年の27,000ギニーから、今年は25,000ギニーへと7.4%ほど下落したから、上の価格帯が強いバブリーな市場であったことは間違いない。しかし、バイバックレートは昨年の23.6%から今年は21.2%に下がったから、決して不健康なマーケットが展開されたわけではなかった。

 ディセンバーセールは牝馬セッションの前に、11月27日に1歳馬セッションが、11月29日から12月2日まで当歳馬セッションが開催されたが、これらを合算したディセンバーセール全体の売り上げ1億525万5000ギニーも、前年比32.1%アップで、この市場としての歴代最高をマークしている。

 更に言えば、ディセンバーセールをもって、2017年のタタソールズ主催セールは全ての日程を終了したが、年間売り上げの3億3100万ギニーもニューレコードとなった。これまでの記録は前年にマークした2億6500万ギニーだったから、これを25%近く上回ったわけで、2017年の英国における競走馬マーケットは、かつてないほどの活況に沸いたと言えそうである。

 ディセンバーセールのハイライトは、牝馬セッション2日目の5日(火曜日)夕刻に訪れた。上場番号1848番として4歳牝馬マーシャがセールスリングに登場すると、世界中から集まったホースマンたちによる激しいビッドの応酬が展開されたのだ。LRレーヴドール賞(芝1000m)勝ち馬マーリンカの2番仔として生まれたマーシャ(父アクラメーション)は、マーク・プレスコット厩舎から2歳の9月にデビュー。ここまで18戦し、3つの重賞を含む7勝。重賞勝ちには、3歳10月に制したシャンティーのG1アベイユドロンシャン賞(芝1000m)、4歳8月に制したヨークのG1ナンソープS(芝5F)という、2つのG1が含まれている。

 すなわち、現役屈指の快速馬がマーケットに登場したわけで、しかも同馬はしなやかな好馬体の持ち主とあって、争奪戦は否応なくヒートアップ。そして、価格が400万ギニーを越えると、アイルランドのクールモアスタッドと、ドバイのモハメド殿下が率いるゴドルフィンという、競馬産業界の二大帝国による一騎打ちとなった。

 一時期は直接対決を意図的に避けていた両者だが、今年に入って両巨魁による威信をかけたガチンコ勝負が復活。タタソールズ・オクトーバー1歳市場でも、父がガリレオ、母がG1BCフィリー&メアターフ(芝10F)勝ち馬ダンクという血統背景を持つ牝馬を巡って激突し、この時にはゴドルフィンが400万ギニーで落札に成功していた。

 今回待っていた結末は逆で、クールモアスタッドのM・V・マグナー氏が600万ギニーのビッドを打つと、ゴドルフィンの代理人を務めていたJ・ゴスデン調教師は首を横に振り撤退。日本円にしておよそ9億7650万円という、ヨーロッパの競走馬市場で生まれた価格としては、1歳セールを含めての歴代最高価格で、クールモアスタッドが購買に成功した。同馬は来春から繁殖入りし、初年度はガリレオを交配される予定だ。

 マーケットが沸騰した中、日本から参加した購買者も、1歳セッションで2頭、当歳セッションで13頭、牝馬セッションで14頭の合計29頭を購買。活発な動きを見せている。1歳セッションにて購買された2頭うちの1頭、母ナイトヴィジットの牡馬(父ドーンアプローチ、上場番号164番)は、2013年のG1愛ダービー(芝12F)勝ち馬トレーディングレザーの半弟にあたる。15万ギニー(約2440万円)というのは、極めてお買い得な価格と言えよう。
 
 当歳セッションにおける日本人購買馬の中で最高値となったのが、37万5千ギニー(約6100万円)で購買された母コンドレダンスの牡馬(父フランケル、上場番号1022番)だ。史上最強馬フランケルの4世代目の1頭にあたり、母はG2イタリアオークス(芝2200m)勝ち馬という、これも極上の血統を背景に持つ若駒である。なおかつ、骨量が豊かで、後駆の発達した、素晴らしい馬体の持ち主であった。

 牝馬セッションでは、40万ギニー(約6510万円)で購買されたのが、上場番号1548番として上場された4歳牝馬ツアーニー(父カントリーリール)だ。同馬は仏国を拠点に走り、G3カブール賞(芝1200m)を含む2勝。G1モルニー賞(芝1200m)でも3着に入った活躍馬だった。現在はフランケルを受胎しており、来年の4月5日が出産予定日となっている。

 同じく40万ギニー(約6510万円)で購買されたのが、上場番号1573番として登場した4歳牝馬ハーレクイーン(父キャンフォードクリフス)である。英国で現役生活を送った同馬は、G1英オークス(芝12F6y)3着、G1愛オークス(芝12F)3着などの成績を残している。

 また、上場番号1823番として上場され、30万ギニー(約4880万円)で購買されたのが、10歳の牝馬エリアノーラデュース(父アザムール)だ。英国を拠点に走り、G2ブランドフォードS(芝10F)を含む3勝を挙げた他、G1ヨークシャーオークス(芝12F)3着などの成績を残した本馬も、現在はフランケルを受胎しており、来年3月14日が出産予定日となっている。

 日本の生産者たちは、着々と繁殖牝馬の資質向上に努めており、日本産馬の水準は今後益々高まることになりそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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