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【同期対談】「俺、圭太にめちゃくちゃ救われたから…」戸崎圭太騎手×森泰斗騎手(前編)

  • 2017年12月22日(金) 18時01分
スペシャル対談

▲共にリーディングの座に輝いた戸崎騎手(左)と森騎手(右)の同期対談


地方競馬の関係者と中央競馬の関係者によるスペシャル対談。第2弾は戸崎圭太騎手(JRA)と森泰斗騎手(船橋)の同期対談です。戸崎騎手は大井で、森騎手は足利で98年にデビュー。途中、森騎手は一度騎手を辞めてから再デビューを果たし、戸崎騎手は競馬の合間を縫ってJRA移籍に向けての猛勉強。様々な経験を経て、ふたりは共にリーディングジョッキーの座に輝きました。ふたりの道が、今ここで交差します。(取材・文:赤見千尋)


足利・宇都宮の廃止を経て船橋へ「受け入れてくれた人たちにすごく感謝」


――おふたりは67期騎手候補生として地方競馬教養センターで2年間苦楽を共にしたわけですけれども、初めて会った時のことを覚えていますか?

 よく覚えています! 最初に会ったのは教養センターの試験の時。すごく小っちゃくて可愛い子で。活発な感じで試験の動きも良かったから、「こういう子は受かるんだろうな」って思いながら見てたから。

戸崎 よく覚えてるね。

 実際に同期として会った時は、「やっぱりいたな」って思った。

戸崎 俺、全然覚えてない。何も覚えてないよ、ホントに(笑)。

 失礼なやつだな(笑)。

――2年間いろいろなことがあったと思いますが、おふたりでケンカしたことはありますか?

戸崎 ないよね。

 ないね。けっこう仲良かった方だよね。

戸崎 うん、でも何ていうか…、泰斗はちょっと怖いっていうか、尖ってる感じがあったから(笑)。

 ああ、あったね。あの頃は尖ってた(笑)。俺、入所した日に同期と揉めたの。途中でやめちゃったけど〇〇っていたじゃん? あいつにいきなり呼び出されて、向こうが年上だったから脅されてさ。年上何人かに。

戸崎 ああ、あったあった!

 センターに入所した初日で知り合いもいないし、すごく落ち込んでたんだけど、その夜にさこ畑(雄一郎元騎手)と圭太が俺の部屋に来てくれて、「お風呂行こうよ」って言ってくれて。俺、めちゃくちゃ救われたから。ああ、いい子だなって思ったね。それはすごく覚えてる。

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▲森「ああ、いい子だなって思ったのをすごく覚えてる」


戸崎 俺はもう、泰斗がやんちゃだったってことしか覚えてない(笑)。今風の子だなっていう感じで。俺はくそ真面目っていうか余裕がなくて、いっぱいいっぱいでやってた。

――当時から、お互いがリーディングジョッキーになると思いましたか?

戸崎 センターの時から泰斗は上手だったから、成功するんだろうなとは思ってた。最初は足利所属で、かなり乗れるんだろうなって。

 でも当時は超勘違いしてたから。デビューしたらすぐ活躍できるもんだと思っていたし。

戸崎 いや、実際デビューしてすぐ活躍してたからね。技術面ってやっぱり成績に出るなって思ったもん。

 圭太は大井所属で激戦区の南関東だったから、最初は厳しいんだろうなって思ってた。まさかここまで成功するとは…。本当にすごいよね。当時は今みたいにネットがなかったから、風の噂っていう感じだったけど、初騎乗初勝利したことも聞いたし、デビューしてすぐ落ちて大ケガしたっていう話も聞いた。あの時はかなりの大ケガだったし、心配したな。

戸崎 俺も泰斗がデビューからかなり勝っているというのは聞いてた。でもいきなりいなくなっちゃって。「え? 何があったんだよ」って思った。あれだけ上手かったし、辞めちゃったなんて信じられなかった。でも1年くらいで戻って来たと聞いて、良かったなって。

 そうそう、そういうこともあった。また再試験受けて免許取って、足利で乗り出して。そしたら足利が廃止になって、宇都宮に移ったらそこも廃止で。縁があって船橋に入ることができて本当に良かった。受け入れてくれた人たちに、すごく感謝してますね。

――森騎手が南関東に移籍するとなった時はどんな心境でしたか?

戸崎 一緒に乗れるのは楽しみだったけど、上手いからなぁとは思ってた。

スペシャル対談

▲戸崎「一緒に乗れるのは楽しみだったけど、上手いからなぁ…」と、思わず本音が


 もう13年前か。ちょうど圭太がブレイクするくらいの時で、階段を駆け上って行くのを見て、「すごいな」って思ったし、背中を追いかけてきたというのはありますね。ただ、当然だけど移籍してしばらくは全然乗れなかったから。まだ俺も若いし圭太も若いし、正直ひがみみたいな感情もあった。

戸崎 泰斗は俺が経験してないことも経験しているし、そこからトップになったのはすごいよね。

――トップだからこその苦しみ、今だからこそ、おふたりだからこそわかる苦しみがあると思うのですが。

戸崎 やっぱりリーディングになると勝って当たり前だし、そういう馬にもたくさん乗せてもらうから、余計に結果を出さなきゃという気持ちが大きくなるっていうのはあるよね。

 獲る前は「獲りたい獲りたい」ばっかりで、その時は楽しいし、すごくいい瞬間なんだけど、でも1回上に上がると落ちたくない。最初の年は嬉しかったけど、それから3年くらい続けさせてもらって、そこは「苦しい苦しい」が多かったかな。今年はケガもあってリーディングじゃないんだけど、すごく気持ちが楽というか、もちろん向上心がないっていうことではなくて、今の方が自分自身いいパフォーマンスができてるなっていうのはある。3年間めちゃめちゃ空回ってたなって。勝たなきゃ勝たなきゃで。

戸崎 俺は地方にいた時には川島正行先生っていう絶対的な存在がいて、川島厩舎の主戦がリーディングを獲るっていう流れがあったから、それが楽しかったし実際勝たせてもらってた。だからそこまでは追い込まれてなかったかなと思う。でも今はまた違うね。自分自身も違うし。

 JRAはもっとキツイだろうね。俺が想像できないような大変な思いもしてるだろうし。そういう苦労を表に出すタイプじゃないけど。

戸崎 いやでも同じだって。結局自分だけではできないわけじゃん。馬主さんがいて、調教師がいて厩務員や助手さんがいて。こっちはエージェントがしっかりしているし、本当にいろいろな人たちに支えられてるっていう感じだよね。

 いくら技術があったって、周りに応援してもらえなかったら乗れないから。だから勝たせてもらってるっていう姿勢は崩さないでいきたい。勘違いしないように。

戸崎 泰斗は順調に階段を上って来たわけではないから。脱落して騎手も辞めて、廃止も経験して這い上がって来て。山あり谷ありだよね。もちろん楽しい思いもしているだろうけど、すごい苦労もしていると思う。

 もう谷は経験したくないなぁ。

戸崎 あるでしょ。イヤだけどまだまだあるから。

――今後、お互いにどんな存在でいて欲しいですか?

 圭太にはずっとリーディングを獲り続けて欲しいと思っている。大変なこともいっぱいあると思うけど、同期として誇りに思っているから。あとはダービーを勝って欲しい。俺は圭太に引っ張られて来たっていうのがあるから、これからも引っ張っていって欲しいかな。

戸崎 そうやって言ってくれると鳥肌が立つけど(笑)。嬉しいな。

 乗り方とかも参考にする時もあるし。自分が調子悪い時とか、すごく刺激になる。

戸崎 泰斗はいろんなこと経験してきて、今こうやってトップに立って。時には空回りすることもあるかもしれないけど、やっぱり一番でいてもらいたい。同期で中央と地方でリーディングっていうのは経験できないことだから。周りからも「泰斗すごいよね」って聞くし、そういう声を聞くと嬉しいし。空回りしないスタイルで上手いことやっていけたらいいよね。そこはもうバランスだと思うから。

 そうだね。だから、「獲りたい獲りたい」ばっかりではダメなんだなって。もちろんリーディングを獲れれば最高だけど、そこのこだわりばかりではなくて、目の前の一つ一つでいい仕事をして、結果リーディングを獲るっていう考えの方が自分には合っているなって今は思う。

――今年は有言実行で東京ダービーも勝ちました。

スペシャル対談

▲ヒガシウィルウィンで東京ダービー初制覇(撮影:高橋正和)


 でもその後すぐにケガしちゃったから。そこに大きな目標を置きすぎて、終わった瞬間に気が抜けてたと思う。癖のある馬で、いつも馬場の中で乗るんだけど、「大丈夫大丈夫」って乗ったらやっちゃって。今思えば気が抜けてたんだなって。

戸崎 そっかぁ。防げたケガだったんだね。

 完全に自分が悪かったなっていうケガだった。

戸崎 リーディングを獲るのにも流れとかがあるし、1位というだけじゃなくてね、地方競馬のトップとして支えていってくれたら嬉しいなって思う。

 ケガしてリーディングじゃなくなったことで、いい意味で肩の力が抜けたかなって。

戸崎 自然体でいって、獲れれば最高だから。

(後編へつづく)

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