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音無厩舎の真打ちダノンマジェスティ “坂路厩舎”のイレギュラーな“ウッド調教”は良薬に違いない/吉田竜作マル秘週報

  • 2017年12月20日(水) 18時00分


◆変化の真意を探ろうと音無調教師を直撃

 現在の栗東トレセンでは「活用しない厩舎はない」と言っていいくらい、坂路調教はごく当たり前にトレーニングメニューに組み込まれている。

 記者がこの世界に入った時は“パイオニア”戸山調教師が健在で、トウカイテイオーを管理した松元省調教師もいた。当時は“坂路の申し子”との異名を取ったミホノブルボンに代表される「坂路で数多く乗る」から、「坂路でどう乗るか」に意識が変わっていった時期だったように思う。

 確かピンクのメンコの山内軍団が、前半を極端にセーブして、後半に脚を伸ばす追い切りを最初に始めたような…。当時の山内厩舎といえば、POGでは外せないくらい、早い時期の活躍が特に目立っていた。成績を上げている厩舎の「上がりを伸ばす」使い方を、多くの厩舎が取り入れたことで、いつの間にかスタンダードになっていったように記憶している。

 一方で、かつて当たり前だったインターバルを挟んで坂路を複数本駆け上がるスタイルがどうなったかといえば、一時は完全に廃れたようにも思えたが、キタサンブラックがこの調教法を取り入れたことが一時期、話題になったし、高野厩舎や松田厩舎が通常メニューに取り入れたりしている。目的や意図によって使い方を変えることで、ようやく坂路の調教法は“成熟期”を迎えたのかもしれない。

 長々と坂路調教の流れを振り返ってきて何だが…。最近、非常に気になっていたのが“坂路厩舎”の代表格・音無厩舎がウッドで追い切るケースが増えたことだ。この変化の真意を探ろうと音無調教師を直撃すると、意外な答えが返ってきた。

「(28日のベテルギウスSで復帰予定の)リアファルがウッドで追うから、それに併せる馬が必要になって。次から次へとウッドに慣らしていくうちに、追い切る馬が増えていったんだよね」

 脚元に爆弾を抱えるリアファルの調教に、いろいろ制限が付くのは避けられない。そのための準備を進めているうちに、坂路ではなくウッドで追い切る馬が増えたというが、この言い分はちょっと怪しい。おそらく“企業秘密”に関わる、公言できない理由があるのだろう。

 ただ、一つ確実に言えるのは、厩舎の素質馬ダノンマジェスティ(牡=父ディープインパクト、母ドバイマジェスティ)にとっては、ウッド追いがプラスに働いているということだ。

「まだトモが甘くて坂路では上手に走れないんですよ。それでも体が締まって、少しずつ良くなってはいる。ウッドのほうが走りもいいし、和田さんにも、いいイメージで乗ってほしいですから。この馬にとってはウッド追いは良かったと思いますよ」(担当の平井助手)

 どれだけ素質を秘めた馬でも、騎手が第一印象で悪いイメージを持ってしまうと、開花への時間を遅らせることにもなりかねない。音無厩舎にとってはイレギュラーな調教方法が、2歳世代の「厩舎ナンバーワン」にとって“良薬”になったのは間違いなかろう。

 日曜(24日)阪神の芝外1800メートル新馬戦でデビュー予定。すでに多くの素質馬が勝ち上がっている音無厩舎の“真打ち”ダノンマジェスティの走りは、POGで指名した人や馬券を買った人への、いいクリスマスイブのプレゼントになるのでは。

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