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3歳牝馬ランキング上位進出必至の素質馬が出現/シンザン記念

  • 2018年01月09日(火) 18時00分


◆今後厳しい日程を組む必要が無くなった

 初日の「中山金杯」を勝ったのは4歳牡馬セダブリランテス(美浦、手塚厩舎、戸崎圭太、シルクレーシング、白老F生産)。2日目の「フェアリーS」を制したのは3歳牝馬プリモシーン(美浦、木村厩舎、戸崎圭太、シルクレーシング、ノーザンF生産)。

 3日目の「シンザン記念」を圧勝したのも3歳牝馬アーモンドアイ(美浦、国枝厩舎、戸崎圭太、シルクレーシング、ノーザンF生産)。

重賞レース回顧

シンザン記念を圧勝した3歳牝馬アーモンドアイ(c)netkeiba.com


 2018年の最初の3日間は、(有)シルクレーシングの所有馬と、戸崎圭太騎手と、社台グループ生産馬によって始まった。

 中でも注目は、かつては時期的に、また春のクラシックとはコースの異なる京都の1600mで行われるため、クラシックを展望する陣営にはあまり評価されなかった「シンザン記念」の占める位置が高まったところで、今年も3歳牝馬ランキングの上位進出必至の素質馬アーモンドアイが出現したことである。

 新種牡馬ロードカナロア(その父キングカメハメハ)の産駒の、JRA重賞最初の勝ち馬となったアーモンドアイの母は、フサイチパンドラ(その父サンデーサイレンス)。

 フサイチパンドラは、その母ロッタレース(父ヌレイエフ)が名種牡馬トライマイベスト、エルグランセニョールの下になる名門出身の牝馬なので、デビュー時から大変な評価を受けていたが、阪神JFが3着。桜花賞は14着。オークスは2着。秋華賞も3着だった。

 ちょっと詰めの甘い良血馬として評価が下がりかけたところで、一転、初の古馬相手の「エリザベス女王杯」をスイープトウショウ相手に逆転勝ち。4歳時のエリザベス女王杯でもダイワスカーレットとマッチレースの2着した、成長力と底力あふれる牝馬だった。

 繁殖入りしてからも、ここまでは必ずしも期待に応えた産駒を送ったとはいえなかったが、いよいよフサイチパンドラにふさわしい産駒を登場させたところに注目したい。

 新種牡馬として産駒が2歳戦で39勝。ファーストシーズンのチャンピオンとなったロードカナロアも、実は自身からしてチャンピオンに育ったのは2歳戦や3歳の初期ではないのに、どうも重賞になると勝ちきれない種牡馬ではないか…などとささやかれ始めたところで送り出した大物が、アーモンドアイだったのである。

 競走体系の変化や、3歳春に向けたローテーションの変化により、シンザン記念は近年は出世レースに変化してきた。最近10年では、クラシック級勝ち馬だけでも2011年のオルフェーヴル(3冠馬)、2011年のマルセリーナ(桜花賞)、2012年のジェンティルドンナ(牝馬3冠)、2016年のジュエラー(桜花賞)、2017年のアルアイン(皐月賞)が出走していたレースであり、ほかにGI馬のミッキーアイル、モーリス、ペルシアンナイトが出走していたレースである。

 アーモンドアイに関して特筆できるのは、アパパネで2010年の牝馬3冠制覇を達成した国枝調教師の管理馬であること。近年は一段と発展した社台グループの民間トレセンとの関係もあってアパパネのような栗東滞在の手法は少なくなり、かつ、有力馬の使い分けなど難しいローテーション課題もあるが、美浦で追い切っての直前輸送を楽々とこなし、初の関西遠征で快勝したことである。

 アーモンドアイは遠征直前に好タイムで追い切って、かつ輸送しながら馬体減もなく、休み明けなのにパドックでも落ち着いていた。重賞を勝ったから、もう出走権は大丈夫。美浦所属馬にとって厳しい「チューリップ賞→桜花賞」の日程(2度の遠征になる)を組む必要もない。地元のアネモネS(3月11日)で足慣らしのあと、桜花賞(4月8日)に向かうことも可能になったのである。

 渋った馬場だったので、完敗した2着以下の評価を下げる必要はないが、ツヅミモン(父ストロングリターン)はなんと540キロの牝馬。重馬場の巧拙はべつに、こういうパワーの必要な馬場ですんなり先行できた利が大きかっただろう。2着で出走決定の賞金額は「1150万円」。重賞が増え、ボーダーの賞金クリアではないと思えるから、良馬場のレースを見てみたい。

 1000m通過「61秒8」の超スローで先手を奪って3着に粘ったカシアス(父キンシャサノキセキ)は、牝馬2頭に負けただけに、パワー強化が必要か。

 人気のファストアプローチ(父ドーンアプローチ)は、1600mを2戦したが、明らかにスピードもう一歩、切れ味も不足。路線が難しいように思える。

 武豊騎手のプリュス(父ヴィクトワールピサ)は、品のいい馬体に映ったが、このペースで1秒2差の8着はきびしい結果だった。3番人気のカフジバンガード(父ハービンジャー)は出負けしてしまったから仕方ないが、出遅れたら「ああ、もうだめだ」ではなく、猛然とロスをカバーしに出て、それで快走してみせるR.ムーアのような騎乗をみてみたいと、カフジバンガードから流した近くの記者が嘆いていた。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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