◆春の目標の大阪杯、宝塚記念も合っているはずだ 4歳牡馬ダンビュライト(父ルーラーシップ)が流れに乗って抜け出し、同じ4歳牡馬ミッキースワロー(父トーセンホマレボシ)が後方から末脚を生かして2着。
最近ずっと5歳以上馬が勝ってきた中〜長距離路線のアメリカJCCを、好スタートを切りたい4歳馬が勝ったのは11年ぶり。同時に「4歳=4歳」で決着したのも2007年の「マツリダゴッホ=インテレット」以来のことだった。
キタサンブラックが引退し、新しいチャンピオン級の台頭が期待されている。3冠レース「3、6、5」着を中心に、ここまで重賞【0-1-3-4】のダンビュライトが初重賞を制し、1番人気のミッキースワローも賞金を加算して重賞【1-1-0-2】となったのは、このあとを考えるときに、望ましい結果だったろう。
重賞初制覇を果たしたダンビュライト(撮影:下野雄規)
ダンビュライトは、父ルーラーシップ(その父キングカメハメハ)も2012年のこのレースの勝ち馬であり、ルーラーシップの祖母ダイナカールは1985年の2着馬。
祖母になる輸入牝馬キャサリンパー(父リヴァーマン。母の父リボー)から発展するファミリーは、タフで底力を秘めた一族として知られる。母タンザナイト(父サンデーサイレンス)の半弟アロンダイトは、2006年の最優秀ダートホース(5勝)。
同じくタンザナイトの半妹クリソプレーズ(父エルコンドルパサー)は、現8歳の9勝馬クリソライト、宝塚記念など6勝したマリアライト、現6歳の4勝馬リアファルの母。
さらに、ダンビュライトの半姉モルガナイト(父アグネスデジタル)は、現5歳ブラックスピネル(東京新聞杯など)の母となっている。
ダンビュライトは、M.デムーロ騎手が「同じペースで行く馬なので、早めに動く競馬をしたかった」という展望通りの内容で結果を出した。スラッとした細身にも映る体型のわりに切れるタイプではないが、逆に、思われているよりずっとタフで底力を秘めている可能性はある。
春の目標のひとつとされる阪神2000mの「大阪杯」、さらにはちょっと時計がかかることの珍しくない2200mの「宝塚記念」も合っているはずだ。
かろうじて2着死守となった印象もあるミッキースワローは、入念に乗り込んで馬体はできていた。ただ、体調そのものは良さそうだったが、冬場の休み明けとあってちょっと気合不足だったかもしれない。斜めによろけるようなスタートになったため、前半は最後方近くからの追走になってしまった。
気合を入れて珍しく早めにハナに立つことができたマイネルミラノ(父ステイゴールド)の作ったレースの流れは、前後半「61秒3-(12秒0)-60秒0」=2分13秒3。いつもより軽快な絶妙の平均ペースになり、先行すると思えたゴールドアクター(父スクリーンヒーロー)にいつもの行き脚がつかなかったため、この頭数なのに前半から縦長の並びになってしまった。
ミッキースワロー(横山典弘騎手)は、中間地点すぎからピッチを上げて動かざるを得ない形になったのは誤算だったと思えるが、先行して上がり「35秒4」で抜け出したダンビュライトを追って、ミッキースワローのロングスパートの上がりは「34秒8」。レース全体の後半1000mは「60秒0」だったから、ミッキースワローは後半の1000mを「58秒0」前後でまとめている。
陣営は、3200mの天皇賞(春)を最大目標にしているとされる。トーセンホマレボシ(その父ディープインパクト)産駒のこなせる距離の幅は広いが、マイラー色の濃いファミリーと、コロンと映る体型から、必ずしも長距離OKとはいえないものの、ステイヤーのいない近年の天皇賞(春)は、組み合わせしだいで超スローになることもある。また、昨年のように離れた5着馬までディープインパクトの記録を上回る日本レコードで乗り切れるような軽い馬場が準備されることもある。展望は広がったほうが楽しい。
復活の期待された7歳ゴールドアクターは、レース中盤から行きっぷりが変になり、武豊騎手は大事をとって途中からムリをせず最後方11着の入線になってしまった。昨秋のオールカマーを疲労で回避したあと、再放牧をはさむなど陣営は総力を結集して立て直しを図った。ほぼ本来の動きを取り戻したと判断、だから武豊騎手を配しての再出発となったが、本馬場に入ったゴールドアクターは、イラついてスムーズな返し馬に入ることができず、精神的にG1馬の自信と存在感を欠いた。この変調はかなり深刻と思える。
粘った8歳マイネルミラノ、9歳ディサイファ、6歳牝馬トーセンビクトリーは侮りがたい善戦を展開したが、適距離を最大に生かしての好走であり、次はというほどの中身ではなかった。
7歳ショウナンバッハは前半うまく流れに乗ったとみえたが、2分14秒1は突っ込んで惜しいと思わせたオールカマー5着時とほぼ同タイムであり、正攻法の追走は合わないのだろうか。上がり馬として期待された4歳レジェンドセラー(父ルーラーシップ)は、また増えて542キロ。追走に余裕がなかったあたり、距離もあるだろうが、絞りにくい時期とあって心もち重かったかもしれない。
「東海S」のテイエムジンソク(父クロフネ)は期待通りの快勝。少し休ませたあとだけに、やや一本調子に「36秒7-37秒0-38秒1」=1分51秒8。それでいながら、もっとも楽をしたい中間地点で「12秒0」のラップを踏んだため、最後は「13秒0」になるなど、見た目より厳しい中身で押し切ったのは見事だった。フェブラリーSの東京1600mが合うのか、の課題はあるが、こういう簡単にはバテないスピード型が参戦すると、レースが盛り上がると同時に、レベルの高い中身になること間違いなしである。