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4歳馬の上位独占は春のビッグレースに直結/東京新聞杯

  • 2018年02月05日(月) 18時00分


◆凡走した各馬も、もう少し暖かくなってから

 3番人気の4歳牝馬リスグラシュー(父ハーツクライ)が、好位で流れに乗ってインから抜け、2016年秋のアルテミスS(同じ東京1600m)以来2つ目の重賞制覇となった。武豊騎手にとって東京新聞杯勝ちは2007年のスズカフェニックス(父サンデーサイレンス)以来となり、これで歴代トップの「5勝」である。

重賞レース回顧

アルテミスS以来2つ目の重賞制覇となったリスグラシュー(撮影:下野雄規)


 14年に6歳牝馬ホエールキャプチャ(父クロフネ)、16年には6歳牝馬スマートレイアー(父ディープインパクト)が勝ったマイル重賞なので、近年は牝馬が勝ってまったく不思議なしとなったが、それまでは1984年に東京の1600m戦になってから2013年までの「30年間」、勝った牝馬は1993年に武豊騎乗の4歳(旧表記5歳)牝馬キョウワホウセキ(父シンボリルドルフ)たった1頭だった。

 それが立て続けに最近5年で「牝馬が3勝」となった。タフで丈夫な強い牝馬の時代が連続しているのも確かだが、ホエールキャプチャも、スマートレイアーも、そして今回のリスグラシューもみんな11月のエリザベス女王杯から約3カ月ぶりの1戦。狙いを定めた適鞍に、厳寒期の牝馬の仕上げ手法の、格段の進歩も重なっている。

 9番人気の5歳牝馬デンコウアンジュ(父メイショウサムソン)も0秒3差の4着。スムーズに馬群をさばけていたらもっと差はなかったかもしれない。

 また、メンバー全体が「4歳馬対6歳馬」の図式になっていたが、春の飛躍を目ざす若い4歳馬が『1、2、3、5、14』着だったのに対し、立ち直ってマイル路線の主役復帰を狙った6歳馬は『8、9、11、13』着の惨敗。これには仕上げの差や、明らかにイン有利の芝状態や、騎手変更など、たまたまの要素も重なるが、春を展望するこのマイル重賞が「6歳=7歳」のワンツーだったりしたら、それはあまり好ましくない。4歳馬の「1,2,3」着独占は、春のビッグレースに直結するだろう。

 リスグラシューは、2〜3歳時の牝馬限定G1にことごとく挑戦し【0-3-0-1】。ほかにチューリップ賞3着、ローズS3着もあるので、この世代の「基準の牝馬」となり、レース検討ではもっとも重要な役目を引き受けてきた。これからも武豊騎手とのコンビで、ヴィクトリアマイル、エリザベス女王杯を頂点とする古馬牝馬重賞路線で、自身が主役であると同時に、勝ち負けのバロメーターホースとなって活躍してもらおう。

 2着した4歳牡馬サトノアレス(父ディープインパクト)は、朝日杯FSを制して2歳チャンピオンになったあと、3歳夏の巴賞を勝っただけで【1-1-0-4】。成長が待たれたが、500キロあっても妙に頼りなく映った馬体が3歳後半から成長して実が入り、とくに今回は別馬のようにシャープになっていた。イン狙いに徹したのが大正解。このレースは良馬場発表になったが、馬場の回復途上の東京の芝は断然「内有利」の定説どおり、直線で外に進路を取った馬はほとんど不発だった。

 前回対戦したダイワキャグニー(父キングカメハメハ)には、同じ55キロでクビ差負けていた。今回、自分は57に対し、ダイワキャグニーは56キロ。ふつうは不利だが、ダイワキャグニーは15番枠。一方、こちらは3番枠。東京の芝1600mはゲートの内外の有利不利の少ないコースだが、馬場状態は完全に内有利だった。負担重量は重くともクビ差先着は馬番の差、コース取りの差だろう。2戦連続して「クビ差」の接戦だから、この2頭、リスグラシューに完敗では意気は上がらないが、これからも息のあうライバルである。

 1番人気のグレーターロンドン(父ディープインパクト)は、好スタートから予定外の位置につけることができ、レース全体の流れも「47秒6-46秒5」=1分34秒1なので好走必至だったが、失速の9着にはちょっとがっかり。慣れない先行策(川田騎手はテン乗り)になったこと、もともと渋馬場を嫌う馬だけに、発表は良でも内側に比べまだ湿り気の残っていた外の不利が重なっての凡走と思える。

 しっかり追えて今回は仕上がりに不安なしとされたが、不安大の安田記念で小差4着(6番人気)、同じく仕上がり一歩の毎日王冠で小差3着(4番人気)。こういう脚部難に悩まされた馬が、「不安なく追い切れたら案外」は珍しいケースではなく、苦しい状況のほうががんばる馬がいるのは事実である。

 直前まで中心にしようと考えていたダノンプラチナ(父ディープインパクト)は、追い切りの再生を何回も見ているうちに、復活の気配濃厚だった前回より元気がないように思え、心配になってもう一回再生すると、さらに元気がないように映った。

 難しいのは、6歳クルーガー(父キングカメハメハ)も同様だった。この馬体重だからマイナス12キロくらいは関係ないだろうが、気合が空回りしている。レースでもこの楽なペースなのに4角で最初に手応えが悪くなり、止まったように思わせながらレース全体と同じ上がり「34秒0」だからバテたわけでもない。スローの切れ比べは合わず、実質稍重と思えた今回の馬場の上がり34秒0でいっぱいということか。

 不運な過程を歩んできた6歳馬の復活に期待し、完全に不正解だった。ただ、凡走したからといって見限るわけにはいかない。みんなもう少し暖かくなってからだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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