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【25日(日)阪神】ベテランの対照的勝利『動かず勝った小牧騎手、動いて勝った武豊騎手』

  • 2018年03月01日(木) 18時01分
哲三の眼

▲感動の阪急杯の裏にあった“熟練の技”を紹介! (c)netkeiba.com


25日(日)の阪神最終レースで今年初勝利となった小牧騎手。勝てない時期が続く難しい精神状態の中で見せた、動かずにじっと我慢する騎乗の難しさを哲三氏が解説します。その一方で、3コーナー手前でGOサインを出した武豊騎手の阪急杯にも注目。大ベテランふたりによる対照的な“熟練の技”を紹介します。(構成:赤見千尋)

小牧騎手の馬目線の進路取りに「さすが」


 まず注目したのは日曜日の阪神最終レースです。小牧(太)さんが2番人気のワンダーサジェスに騎乗して差し切り勝ちをしたんですけど、意外にも小牧さんにとって今年の初勝利だったんですよね。ジョッキーはなかなか勝てない時期が続くと、焦ったり勝ちに急いだりしてしまうこともあるけれど、馬の脚を計りながらの冷静な騎乗ぶりで、さすがだなと思いました。

【小牧太】待望の2018年初勝利!当日のエピソードをお届け!

 中団馬群の中でレースを進めていましたが、4コーナーを回ってからも無理に外に出そうとはせず、間からしっかりと伸びて来ました。ワンダーサジェスは素晴らしい末脚を持っているからこそ、早めに外に出した方がいいのではないか、という意見もあると思います。

 ただ、傍から見ているとちょっと繊細なところがありそうな馬で、外に出して行こうとすると脚が溜まらなくなったり、集中力が途切れやすい馬なのかもしれない。そういうところを気遣って、なるべく馬群の中で我慢の競馬をしていました。小牧さんとしても、「届くのか」という心配はあったと思うけれど、あそこで動かなかったことが勝つにはベストの選択肢だったと思います。

■2月25日 阪神12R(4番:ワンダーサジェス)

 直線では前が壁になりそうな場面もありましたが、最初からがっつり追わずに、進路を探しながら脚をしっかり計れていました。例えば、経験の浅い若手だったり、勝ちに急いでいる騎手だったりすると、馬群の中にいるのに4コーナーを回ったらがっつり追い出してしまうことがあります。そうなると、詰まった時にかなりブレーキをかけることになるし、トップスピードからの急ブレーキで、馬の体にも大きな負担をかけてしまいます。

「ここは行きたくないな」「ちょっと怖いな」と馬が感じているのに、開いているからといって無理やり行かされて詰まったりすると、気持ち的に「もう行きたくない!」となってしまう。人間の想いだけで進路を探しに行って詰まるというのは、次に繋がらないレースだと僕は考えています。

 馬が安心して走れる進路をしっかり見ながら、それでも結果的に詰まってしまうことはあるけれど、次にストレスはあまり感じないのではないかと思っていて。馬の気持ちに沿って、馬の目線で進路を探しているのか、騎手の目線だけで進路を決めているのかというのは、とても重要なところだと思います。

 小牧さんは馬の目線も含めてしっかり進路を取っていました。「勝ちたい」という想いは強かったと思うけれど、さすがの冷静な騎乗でしたね。

武豊騎手に思わず「やられた…(苦笑)」


 もう一つ振り返りたいレースが阪急杯です。(武)豊さんが途中からハナを奪う展開で、クビ差粘って勝利しました。動かないという判断で結果を出した小牧さんの最終レースとは対照的に、このレースの決め手は3コーナー手前から動いたこと。あそこで2,3番手に控えるのか、ハナに行くかの判断で、レース前からある程度狙っていたのかもしれないけれど、行動を起こした時の早さはさすがでした。

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▲「小牧さんのレースとは対照的に、決め手は3コーナー手前から動いたこと」 (c)netkeiba.com


 形としては逃げ切り勝ちということで、動かない騎乗だと感じた方もいたかもしれませんが、動くところでしっかりと動く、メリハリの利いた騎乗だったと思います。

 僕は豊さんの馬券を買っていなかったので、「やられた…」と思いましたが(苦笑)。いい競馬を見せてもらってとても面白かったです。

 今回は動かない騎乗で差し切った小牧さんと、動く騎乗で逃げ粘った豊さん。どちらも熟練の技を見せてくれましたね。

今週の注目コンビ


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▲朝日杯FSを圧勝したコンビがクラシックに向けて再始動! (c)netkeiba.com


 今週注目しているのは弥生賞のダノンプレミアム&川田(将雅)君です。2歳チャンピオンのダノンプレミアムにとって、初めての2000m戦でコーナー4回。難しいトライになると思いますが、どういう騎乗を見せてくれるか楽しみです。

(文中敬称略)

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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