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平成29年、開催成績まとまる

  • 2018年03月01日(木) 18時00分
生産地便り

今年は北海道から九州、四国に至るまで、順調な伸びを記録した


電話投票で売り上げ増も、財務体質は良くなっていない


 地方競馬全国協会(NAR)のサイトに、平成29年1月〜12月までの開催成績がまとめられ、発表されている。それによれば、北海道のばんえい競馬(帯広)を含め、全国14か所の数字が競馬場ごとに掲載されており、全体では、開催日数が1297日(前年比11日増)で、入場人員は320万5626人(前年比100.1%)、総売り上げは、5407億6893万円(前年比113.3%)と、久々に5000億円の大台まで回復してきた。復調気配は全国津々浦々まで及び、北海道から九州、四国に至るまで、まんべんなく順調な伸びを記録した年となった。

 競馬場別に順を追ってみて行くと、まず帯広ばんえい競馬は、152日間で203億8565万円、入場人員が28万6549人で、いずれも前年比132.7%、108.7%と大幅な伸びを記録した。1日平均では、入場人員1885人、売り上げ1億3411万円と、どちらも伸びているが、ライトなファンの割合が多いようで、場内における1人あたりの購買単価は約4700円と、全国一低い。

 門別は、80日間の開催で、5万1704人、(前年比103.4%)が入場し、244億6162万円(前年比121%)を売り上げた。ただ、門別は、場外発売の比率が全国一高く、実に98.4%(240億7250万円)に及ぶ。本場への入場人員は1日平均646人で、高知と並んで全国最少レベルである。

 岩手は盛岡と水沢の二つの競馬場で計129日間の開催。入場人員26万4020人(95.3%)、総売り上げは295億4080万円(113%)と、こちらも数字を伸ばした。

 1日平均の入場人員は2047人、売り上げは2億2899万円と、門別よりもかなり少ないが、その代わり、県内各地に展開する場外施設による発売分が多く、ネットを含む電話投票の割合が全国一低い(58.40%)。

 南関4競馬場は、さすがにもともと売り上げが多かった分だけ、伸び率はそれほど高くはないものの、浦和、船橋、大井、川崎を合計して、270日間(前年比5日増)の開催で、2883億715万円(前年比108.7%)を売り上げ、入場人員は136万8900人(前年比106.1%)を記録した。1日平均では、10億6780万円(106.6%)、5070人(104.2%)となっている。因みに、南関4場だけで、地方競馬全体の売り上げの56.7%を占める。

 金沢、笠松、名古屋の北陸・東海地区。まず金沢は82日間で174億2669万円。入場人員は22万8018人。入場人員は前年比93.5%にとどまったが、売り上げは114.3%と順調に増えた。

 笠松は97日間で205億6361万円(前年比112.1%)。9万3235人が入場した。名古屋は116日間の開催で、305億6337万円(113.3%)。1日平均の売り上げが3競馬場ともこれで2億円台を回復したことになる。

 園田は人口の多い阪神地区という地の利もあって、もともとある程度の売り上げを持っていた競馬場だが、ここも回復傾向がはっきり表れている。164日間で38万2233人が入場し、575億2995万円を売り上げた。入場人員は1日平均で2331人と前年比90.2%にとどまったが、売り上げの方は3億5079万円で、前年比112.8%である。かなり差はあるものの、南関4場の次に1日当たりの売り上げの多いのが園田だ。

 ところで、このところ最も急成長著しいのが高知である。昨年は、108日間(前年比5日増)を開催し、320億3009万円を売り上げ、実に前年比142%もの驚異的な伸びを記録した。1日平均では、入場人員こそ638人とひじょうに少ないが、売り上げは2億9657万円と、3億円に手の届くところまで到達した。こちらも率にして135.4%と大健闘である。

 高知は門別の次に場外発売比率が高く(96.6%)、また売り上げに占める電話投票の割合も89.37%(全国平均では67.35%)とかなり高めだが、温暖な気候を生かして全日程をナイターで実施できる強みを生かし、大きく躍進を遂げた。

 佐賀は九州で唯一行き残っている地方競馬場で、99日間(前年比6日減)、199億5997万円の売り上げである。入場人員は30万2666人(98.6%)で、1日平均3057人と、他の西日本の競馬場と比較すると、かなり多い。売り上げもまた前年比119.3%の伸びで、1日平均では2億161万円と前年比126.6%。こちらも順調な回復ぶりが窺える。

 地方競馬の業績回復は生産地にとっても大きな朗報だが、かつて売り上げがピークに達した平成初期と比較して大きく異なるのは、場外発売、とりわけネットを中心とした電話投票の依存度がより高くなっているという点が気がかりだ。5407億円のうち、3642億円が電話投票による売り上げ分で、67.35%、総売り上げの3分の2強を占める。

 電話投票による発売分は総売り上げの伸び(113.3%)をはるかに上回る前年比122.7%に及び、今後はますますその割合を増して行きそうな気配だ。

 自前の場外施設での発売は維持費だけで済むが、電話投票には業務委託の手数料を負担しなければならない。近年の大きな売り上げ増に大きく貢献してきたのはもちろん電話投票による部分が大きいのだが、今後、各主催者ともより良質なレースを提供するためには賞金と諸手当の増額が不可欠で、限られた開催経費をどのように配分して行くかが問われることになるだろう。売り上げ増加分の数字ほど財務体質は良くなっていないとも言われており、各主催者はますます知恵を絞らなければなるまい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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