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ここで勝った馬が世代のエース/弥生賞

  • 2018年03月03日(土) 18時00分


◆無敗馬として「日本ダービー馬」となれる可能性は、極端に低い

 春のクラシック路線では、何度も軌道修正を余儀なくされることが多いが、狙った馬が好走したり、あと一歩の惜敗だったりすると、そう簡単に狙いの主軸馬の評価は下げられない。

 ステップの一戦として非常に重要な位置にある「弥生賞」の、歴史の中で果たしてきた役割りを簡単に整理したい。3戦全勝の注目馬が2頭(ワグネリアン、ダノンプレミアム)もいて、2戦2勝のオブセッションも高い評価を受けている今年は、期待通りの接戦だったりすると、そうそう簡単には評価を変えていくわけにいかないからなおさらである。

 最近に限ると、皐月賞の勝ち馬には「共同通信杯」から直行した馬が目立つが、長い歴史の中では、やはり弥生賞と、スプリングS組である。2つの重賞の「勝ち馬(限定)」の皐月賞の成績は、

▽弥生賞の勝ち馬…【11-5-9-22】
▽スプリングS勝ち馬…【16-10-5-28】

 となり、長い歴史を持ち、さらには直前に位置することもあり、スプリングS勝ち馬がだいぶ上回る。

 だが、多くの馬が最大目標とする日本ダービーとなると、なぜかこの数字は逆転する。

▽弥生賞の勝ち馬…【15-4-5-15】
▽スプリングS勝ち馬…【12-5-4-35】

 となる。

 年によって2つの重賞にレベル差が生じるが、肝心の日本ダービーになったときに、意味を持つのが弥生賞勝ち馬の日本ダービーでの「約50パーセント」にも達しようかという連対率の高さだろう。今年と同じように世代のトップが、最初に対決するのが弥生賞であることが多い。最初に勝った馬がエースの可能性が高いのである。

 弥生賞には「無敗の3勝以上馬」が、半世紀を超える歴史の中で17頭出走している。その成績は【7-6-1-3】。84年のシンボリルドルフ(3戦3勝)とビゼンニシキ(4戦4勝)の対決に代表される星のつぶし合いが他にもあり、また2戦2勝、3戦2勝などの新星もいる中での、連対率0.765は立派。今年のワグネリアンと、ダノンプレミアムの信頼度は非常に高いといえる。

 ただし、無敗の3勝以上馬の信頼度の高さは弥生賞までのこと。連対した「13頭(7+6)」の本番=皐月賞での成績は【3-1-1-6】(不出走2)まで落ち込んでしまう。弥生賞に17頭も出走した「無敗の3勝以上馬」は、皐月賞を過ぎ、日本ダービーが終了すると、連勝を続けたのは1984年のシンボリルドルフ(8連勝)だけになっている。

 ダノンプレミアムと、ワグネリアンが、弥生賞で人気に応えて「勝つか、連対を果たした」としても、無敗馬として「日本ダービー馬」となれる可能性は、当たり前ながら、極端に低いのである。むしろ、負けて気が楽になって、巻き返す馬が珍しくない。

 連勝を続けるのはムリかもしれないが、ワグネリアンに期待したい。小柄に映る身体は、もっと馬体が小さく見えた父ディープインパクト譲り。全身を使って躍動する父系と考えるなら、ムダの無い身体はむしろ強みになる。かかえる問題が少ないうえ、自分の身体を動かすためのスタミナの消耗が少ないから、距離不安が少ない。父ディープインパクトは、五代前までにクロスのない近年では珍しい馬だったが、ワグネリアンも母の五代前にはあったクロスがディープインパクトとの配合で移動し、五代血統表の中にはクロスのない珍しい馬となった。非力なように映るが、タフで丈夫なタイプだろう。予定のオーバーホールで活力の消耗がない点も大きな強みだ。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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