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サウスヴィグラス、22歳での天国への旅立ち

  • 2018年03月07日(水) 18時00分


ここ数年は常に日高でもトップクラスの人気を誇っていた


 昨年度の地方競馬リーディングサイアーとしてダート適性の高い産駒を数多く送り出してきたサウスヴィグラスが、去る3月4日に繋養先のアロースタッド(新ひだか町静内)で死去したという。報道によれば、1月26日に腸閉塞を発症し、開腹手術を施した後、療養に努めていたとのことだが、22歳という高齢でもあり、ついにあの世へ旅立ってしまったのである。

 近年、日高で繋養されている種牡馬で、これほど産駒成績の安定した馬は他にいなかった。とりわけ昨年は、ヒガシウィルウィンがジャパンダートダービー(大井、JpnI)を制し、他にもストロングハートがエーデルワイス賞(門別、JpnIII)を、キタサンサジンが東京スプリント(大井、JpnIII)をそれぞれ制するなど、大活躍であった。

エーデルワイス賞

昨年のエーデルワイス賞を制したストロングハート

 地方競馬では、昨年307頭の産駒が出走し、185頭が411勝を挙げ、10億1007万円の賞金を獲得していた。アーニングインデックスは、2.17。三年連続の地方競馬リーディングサイアーであり、2歳部門でも52頭が出走、32頭が56勝を挙げて、1億6593万円の収得賞金を稼ぎ出し、こちらもリーディングに輝いていた。

 ダートに特化した極めて個性的な種牡馬で、中央競馬では、昨年リーディングサイアーランキング18位、152頭が出走し、41頭が56勝しているが、それらはすべてダートレースによる勝利である。731回の出走回数のうち、実に702回がダートであり、芝レースの出走回数はわずか20回しかない。

 本馬自身も、胸前の幅があり、堂々としたいかにもダート向きの体型の持ち主であったが、産駒にもその特長をよく伝えており、栗毛の重厚な体型の産駒が多かった。また、仕上がりが早く、多くの産駒が2歳戦から順調にデビューしてくれるため、セリでも人気が高く、昨年は1歳市場に上場された44頭のうち、39頭が落札され、売却率は88.6%を記録するほどの人気を博した。合計3億7551万6千円を売り上げ、平均962万8615円であった。

 生産地での人気が高いことから、交配頭数も多く、昨年は173頭もの牝馬を集めていた。種付け料は昨年まで150万円(受胎確認後)と比較的リーズナブルなことも人気の高さを後押ししていた。「確実に売れる種牡馬」「計算のできる種牡馬」として、ここ数年は常に日高でもトップクラスの人気を誇っていた。

 サウスヴィグラス自身も、周知のように、ダートの名スプリンターとして中央地方を問わず活躍した馬だ。33戦16勝、2着8回、3着2回の成績で、8つの重賞を制している。デビューは1998年11月東京のダート1400m。惜しくも2着に終わったが、次戦の中山1200mダート戦で未勝利を脱し、年が明けた1999年1月の中山・朱竹賞(ダート1200m)も連勝する。その後、陣営は中山のクリスタルカップ(芝1200m)に挑戦させるが、初の芝レースで14頭立て11着と大敗してしまう。

 ダートの走りっぷりから芝の短距離でもある程度こなしてくれるのではないかとの期待があったものと考えられるが、サウスヴィグラスは芝ではまるで走らなかった。

 本格化したのは遅く6歳になってからである。2002年1月の根岸ステークスを制すると、それからは破竹の勢いで勝ち続け、8重賞はすべて、6歳〜7歳時に制している。

 しかも、2歳〜7歳までの足掛け6年で、東京、中山、阪神、京都のみならず、札幌、盛岡、高知、名古屋、そして大井と、9か所の競馬場で出走しており、8重賞は7つの競馬場にまたがっている。典型的なスプリンターであったが、中にはヒガシウィルウィンのように、2000m程度まではこなせる産駒も出ている。

 昨年の173頭の内訳を見ると、中小規模ながら複数の繁殖牝馬に交配した牧場が少なくない。その中の一人は「これほど信頼性の高い種牡馬もちょっといませんでしたね。エンドスウィープの直仔で、サンデー系の繁殖牝馬に付けられるのも大きな魅力でした。セリでも評価が高かったし、牡牝どっちでも走ってくれる種牡馬でした。ダートの得意な種牡馬ですから、潰しが利くというか、芝でしか走れない馬と違って、ある程度高齢になっても、地方に転じても楽しめるので本当に貴重な存在でしたよ」と語る。

 人気の頂点に達した時の突然の訃報で、ひじょうに惜しまれる。改めて冥福を祈りたい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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