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どんなペースも可能な自在性を示したともいえるのだが…/スプリングS

  • 2018年03月19日(月) 18時00分


◆エポカドーロは底をみせていないという点で、本番の楽しみが出てきた

 まだ「毎日杯」は残るが、トライアルとしては最終ステップであり、ここからトップグループに浮上する新星の台頭が期待された。

 獲得賞金から、望むなら皐月賞出走が確実なのは、条件賞金「3250万円」のステルヴィオ(父ロードカナロア)1頭だけ。ステルヴィオには、弥生賞のダノンプレミアム=ワグネリアンとまったく同じように、ここが3歳になっての初戦だから、ビッグレース前のひと叩きのステップという意味があった。また、その最有力候補2頭とまったく同じように、臨戦の日程を考えつつ「中山コース」を経験したい展望もあった。

 残る12頭は皐月賞出走を望むなら、ここで3着以内に入ることが絶対(に近い)条件。好ましいことにステルヴィオという格好の尺度となる目安もいる。

 ステルヴィオは、候補の筆頭に立っているダノンプレミアム(父ディープインパクト)と目下2戦連続して対戦し、サウジアラビアRC1600mでは、1分33秒0の快レコードで抜けたダノンプレミアムに後方から追いすがって「0秒3」差の2着。朝日杯FSでも同じように後方から外を回って追撃態勢に入り、今度は「0秒6」差をつけられたもののきっちり2着という力関係であり、さまざまな牡馬クラシック候補ランキングで、だいたい「5〜7」番手くらいの位置にいる。

重賞レース回顧

ステルヴィオは牡馬クラシック候補ランキングで、「5〜7」番手くらいの位置か(撮影:下野雄規)


 あくまで一般的にだが、始動戦の意味もあるステルヴィオに完敗するようでは、出走権確保の3着以内に入ってもランキング入りは難しく、ステルヴィオを「倒すか、大接戦」に持ち込めるとき、皐月賞でそれなりの好走、善戦が可能になると考えられた。

 伏兵コスモイグナーツ(父エイシンフラッシュ)が果敢に行ったペースは、「35秒6→47秒8→59秒6→」。かなり飛ばしているように映ったが、内回りの中山1800mで前半1000m通過59秒6は、(この組み合わせとして)心もち速い程度にすぎない。前5年のうち4回まで先頭馬は「60秒1〜60秒3」の通過である。

 結果として注目は、2番手から抜けて勝ったかと思わせたエポカドーロ(父オルフェーヴル)が、いったいどんなペースでスプリングSとして合格ラインの1分48秒1を記録したのかである。レースラップと、ほぼ公式に近い記録として発表される自身の後半「34秒7」を照らし合わせて推測すると、エポカドーロの1800m「1分48秒1」は、「前半1000m通過61秒3-後半46秒8-34秒7-11秒8」に近い。

 1000m通過地点で、先頭のコスモイグナーツからどうもみても「9馬身」前後は離れている。誤差を考慮しても、前半1000m通過61秒台中盤は、あまりにもスローすぎる1000m通過である。

 そのエポカドーロからさらに4馬身以上は後方に位置したステルヴィオの中身は、「前半1000m通過62秒2-45秒9-34秒1-11秒6」だった。

 内回り1800mを、自身の前半1000m通過62秒台前半の超スローペースで追走し、後半の猛スパートだけで標準の1分48秒1で乗り切り、かつ、「負けたと思った――ルメール騎手」体勢から差し切ったステルヴィオは、さすが連続してダノンプレミアムの2着を続ける候補の1頭だった。文句なしに候補の1頭となった。

 ただ、このペースだから中位の外追走が可能だったが、相手とペースを考えると、足慣らしの一戦とはいえ、それでも前半控え過ぎている。というのは、今年がどういうタイムの決着になるかは芝コンディションと、先行タイプのペースによるが、過去3年の皐月賞は「1分58秒2、1分57秒9、1分57秒8」である。前半1000mを61秒台で追走のペースに慣れたりしては、本番になれば別とはいえ、後半を「57秒0」で乗り切っても上位はムリである。62秒台の前半1000m通過のレースなど経験させてしまっては、次は一転、前半を3秒も異なる59秒台で追走しなければ勝負にならないのだから、こういう試走はプラスにならないことが多い。もっとも、どんなペースも可能な自在性を示したともいえるのだが…。

 負けはしたが、自分でハナを主張せず、それでいながらスローの単騎逃げと同じような中身で後半のスパートに成功したエポカドーロは、底をみせていないという点で本番の楽しみが出てきた。

 スプリングSの検討で出てきたように、500万勝ちの馬がここで好走して評価を上げても本番ではまず通用しない(キタサンブラックでさえ皐月賞は3着がやっとだった)としたが、それは強敵相手にきついレースを経験していない弱みが出てしまうのと、候補がほかにいっぱいいるからである。ぬるい競馬すぎた危険はあるが、それは出走権確保のためのレースだったからだろう。

 ステルヴィオは、ルメール騎手が乗るのかが未定であり、NHKマイルCの可能性もほんの少しあったりする(?)が、毎回乗り替わっているエポカドーロは、戸崎騎手で皐月賞に向かうと思える。戸崎圭太騎手は、正月のあと信じがたい不振に陥っていた。今回のエポカドーロは権利を取るのがテーマの馬にしては、2連勝のレース運びからして、きわめて権利の確保しにくいタイプ(脚質)だった。しかし、これなら凡走はないという形に持ち込み、あと一歩で勝っていたから素晴らしい。スランプ脱出はほんの小さなきっかけであり、クラシック展望を開いたステルヴィオの2着は、自信を取りもどす絶好の契機となるだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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