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欧州最高の2歳セール、上場馬が出揃う

  • 2018年03月21日(水) 12時00分


◆かなり高い確率で「当たり」が潜んでいる

 ヨーロッパを舞台とした2歳セールとしては最高の品揃えと実績を誇る「タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセール(4月17日・18日開催、公開調教4月16日、ニューマーケット)」の上場馬が出揃った。

 昨年8月、フランスのドーヴィルを舞台としたG1モーリスドゲスト賞(芝1300m)を制したブランド(父ピヴォタル)が、14年のタタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセールにて11万5千ギニー(当時のレートで約2077万円)で購買された馬であった。

 重賞勝ち馬であれば、昨年だけでも更に複数現れており、時系列で記せば、昨年2月にドバイのメイダンで行われたG3UAEオークス(d1900m)を制したノーモアリッチブロンデス(父ハードスパン)は、16年の当セールにて3万ギニー(当時のレートで約506万円)で購買された馬だし、昨年5月にカナダのウッドバインで行われたG3セリーンS(AW8.5F)を制したグリッツェル(父コーディアック)は、16年の当セールにて7万5千ギニー(当時のレートで約1267万円)で購買された馬。

 昨年7月にイギリスのニューキャッスルで行われたG3チップチェイスS(AW6F)を制したコロピック(父コーディアック)は、16年の当セールにて4万ギニー(当時のレートで約675万円)された馬だし、昨年9月にカナダのウッドバインで行われたG3ボールドヴェンチャーS(AW6.5F)を制したアイケリンロード(父イフラージ)は、15年の当セールにて3万2千ギニー(当時のレートで約598万円)で購買された馬だった。

 いずれも、お手頃価格で購買された馬たちが、世界の各地で重賞を制しているわけで、ここ4年ほどのカタログ記載馬の平均が150頭ほどという規模のマーケットとしては、かなり高い確率で「当たり」が潜んでいるセールと言えそうだ。

 今年のカタログ記載馬は、近年では最多の172頭となった。種牡馬別に見ると、当セール出身の重賞勝ち馬コロピックやグリッツェルの父で、17年の英愛リーディングサイヤーランキング第5位のコーディアックが、15頭を送り出して最大勢力となっている。

 これに次ぐのが、17年の英愛リーディングでは11位に入り、昨年は香港でもG1香港スプリント(芝1200m)勝ち馬ミスタースタニングを送り出したエクシードアンドエクセルで、10頭の産駒が上場予定。

 そして、昨年もG1コモンウェルスS(芝6F)勝ち馬カラバッジョ、G1BCジュヴェナイルターフ(芝8F)勝ち馬メンデルスゾーンらを送り出しながら、15年12月に11歳で早世したため、今年の2歳が最終クロップとなるスキャッドダディの産駒が9頭いる。

 この他、ハリーエンジェル、バターシュ、パースエイシヴといったG1勝ち馬を送り出し、17年の英愛リーディングサイヤーランキングで第2位に入ったダークエンジェルの産駒が5頭。マイルG1・3勝のリブチェスターらを送り出し、英愛リーディング第7位に入ったイフラージの産駒が5頭など、プルーヴンサイヤーたちの産駒が多数顔を揃えている。

 更に、14年のカルティエ賞欧州年度代表馬キングマンの初年度産駒が3頭上場されるのをはじめ、14年に英愛ダービーに加えてインターナショナルSを制したオーストラリア、同じく14年にG1クイーンエリザベス2世Sなど3つのマイルG1を制したチャームスピリット、13年の仏国2歳牡馬チャンピオン・ノーネイネヴァー、フランケルの全弟でG1チャンピオンSなど3つのG1を制したノーブルミッションらの初年度産駒たちもスタンバイしている。

 個別の馬でいえば、例えば上場番号8番の牡馬(父ストリートセンス)は、G1フィリーズマイル勝ち馬サーティファイ、G1オークリーフS勝ち馬クライアンドキャッチミーという、2頭のG1勝ち馬の半弟にあたる。

 上場番号22番の牡馬(父リップヴァンウィンクル)は、愛国の2歳G1フェニックスS勝ち馬ディックウィッティントンの全弟だし、上場番号44番はカナダの2歳牡馬チャンピオン・コンケストタイフーンの全弟。上場番号65番の牡馬(父バーナーディーニ)は、チャーチルダウンズのG1ヒューマナディスタフ勝ち馬デイムドロシーの全弟にあたる。

 また、上場番号66番の牡馬(父スキャットダディ)は、日本で走りG1マイルCSを制したエーシンフォワードの半弟にあたるし、上場番号116番の牝馬(父エクシードアンドエクセル)は、北米で走りG1ビヴァーリーディーSを制したゴレラの半妹にあたる。

 この他、上場番号33番の牝馬(父モアザンレディ)は、母シスシティが米国のG1アッシュランドSの勝ち馬だし、上場番号105番の牡馬(父ダンシリ)は、母クリスタルミュージックが英国の2歳G1フィリーズマイルの勝ち馬。上場番号152番の牡馬(父シャマーダル)は、母ラハリーブがカナダのG1EPテイラーSの勝ち馬である。

 また、G1勝ち馬の兄弟や産駒ではないが、例えば上場番号43番の牝馬(父ベイテッドブレス)は、G1・14勝という欧州G1最多勝利記録を樹立したゴールディコーヴァの姪にあたる。

 あるいは、上場番号99番の牝馬(父キングマン)は、叔母に愛1000ギニーなどG1・4勝のミスティフォーミー、その産駒に、昨年サンチャリオットSなど3つのG1を制したローリーポーリー、同じく昨年G1デューハーストSなど2つの2歳G1を制したユーエスネイヴィーフラッグがいるという、ヨーロッパで最も繁栄していると言っても過言ではないファミリーを背景に持っている。

 このクラスの牝馬を、将来の繁殖候補として、10月の1歳市場や12月の牝馬市場よりはお手頃な価格で入手出来る可能性があるのも、2歳市場の旨味と言えそうだ。

 ヨーロッパの2歳セールに、日本の皆様もぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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