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1歳時にわずか2万豪ドルで購買された豪州屈指のスプリンター・シーウィルレイン

  • 2018年03月22日(木) 18時00分
ビクトリア競馬便り

▲ブックメーカーによる1番人気のシーウィルレイン


(3月22日号 文=ポール・シムズ)

 オーストラリア・ビクトリア州から競馬にまつわる話題をお届けする「ビクトリア競馬便り」。メルボルンと言えば、世界的にも良く知られているスプリング・レーシング・カーニヴァルがあるが、秋のこの時期も、興味深い競馬が毎週行われている。

 約1ヶ月半に及んで開催された秋の競馬の祭典「フェスティヴァル・オブ・レーシング」は、23日に行われるムーニーヴァレーのGIウィリアム・リードS、そして翌24日の準重賞モーニントンCでフィナーレを迎える。

 ウィリアム・リードSといえば、無敗の歴史的名牝ブラックキャヴィアが2011年と2013年に優勝し、オーストラリアにおけるベストスプリンターたちが集結するレースで知られている。

 現在、ブックメーカーによる1番人気となっているのが、シーウィルレイン(牝4、父マンハッタンレイン)。メルボルンC優勝実績を誇るオーストラリアのチャンピオンジョッキー、ケヴィン・マケヴォイが手綱をとり、2017年のスプリング・レーシング・カーニヴァルに行われた芝1000mのGIモイアSに優勝した豪州屈指のスプリンターである。

 1歳時にわずか2万豪ドルで購買されたシーウィルレインは、これまで9戦6勝をあげ、300万豪ドルを超える賞金を獲得している。

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▲2017年のGIモイアSを優勝したシーウィルレイン


トーセンスターダム、再びGIに照準


 17日にフレミントンで行われたGIIブレイミーS(1600m)で、最下位5着に敗れたトーセンスターダムは、次走ランドウィックで行われるシドニー・スプリング・カーニヴァルのGIドンカスターマイル(1600m)に照準を合わせて再びGI制覇を狙うことが明らかになっている。

 そのブレイミーSで、本命馬に挙げられていたにも拘らず、同厩舎のヒュミドールから7.1/2馬身離されて大敗を喫したトーセンスターダムは、関係者が首をひねるほど普段のレースパフォーマンスからは程遠いものであったため、管理するダレン・ウィーア調教師は珍しく「休養日」を与えたという。

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▲GIIブレイミーSで最下位5着に敗れたトーセンスターダム(提供:Racing Photos TM)


「レース後の獣医検査でも異常は見られませんでしたし、馬は元気です。なぜあんな負け方をしたのか・・。普段はレースでも落ち着いているのですが、先週のレースではとてもテンションが高くて、前半はかかり気味になっていました。次走は当初の予定通りドンカスターマイルに向かう予定です。」とウィーア調教師は話した。

大変身を遂げたブレイブスマッシュ


 2018年1月1日から3月11日までに施行された世界の主要レースを対象とした「ロンジンワールドベストレースホースランキング」が発表され、ブレイブスマッシュがランキング12位となる118ポンドを獲得した。GIフューチュリティS(1400m)優勝やGIニューマーケットH(1200m)で僅差の2着に入るなど近走のGIでの活躍が評価された形だ。

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▲前走のGIニューマーケットHでも僅差の2着に健闘したブレイブスマッシュ


 ランキングトップは、2018年G1ペガサスワールドC(ダート1800m)勝ち馬ガンランナーと、オーストラリアの無敗の女傑ウィンクスの2頭で、129ポンドとなっている。

 ブレイブスマッシュは、次走4月7日に行われるランドウィックのGIティージェイスミスS(1200m)に向かう公算大で、ブックメーカーの前売りオッズで3番人気に推されている。現時点での1番人気は、昨年10月に行われたGIジエヴェレスト(1200m)を制したレッドゼル。

 日本ではマイル路線での2勝のみという成績だったブレイブスマッシュは、ダレン・ウィーア厩舎所属馬となってからはGIを制するなど活躍を見せている。

 父トーセンファントムはマイルで2度優勝し、1800mでも2着に入る一方で、同馬の父、ネオユニヴァースは2歳時に1400mで新馬勝ちを収めるなど3戦2勝。その後は皐月賞(2000m)、日本ダービー(2400m)の2冠を達成。さらに3000mの菊花賞で3着、ジャパンカップ(2400m)で4着と善戦したほか、3200mの長距離レースもこなすなど幅広い距離適性を持った馬である。

 ブレイブスマッシュの牝系に目を向けると、母トーセンスマッシュはダート1800mの1勝のみであるが、母父トウカイテイオーは1991年の皐月賞と日本ダービーを制し、翌年には、豪ダービー馬ナチュラリズムとの激闘を制してジャパンカップに優勝。さらに有馬記念も制していることから、血統背景から見るとブレイブスマッシュはトップスプリンターになるとは想定されなかったであろう。

 しかし、ウィーア調教師の手腕が見事に発揮され、今や豪州最速馬の1頭としての地位を確立したのである。

1864年に創設された、オーストラリアのビクトリア州における競馬主催団体。メルボルンCなどの大競走が行われるフレミントン競馬場をはじめとした、ビクトリア州各地の競馬場で開催される競馬の運営・統括をしている。近年では日本調教馬の移籍も多数実現しており、日豪の関係に重要な役割を担っている。

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