今回は小牧騎手ならではの技術についての質問が!
「小牧騎手ならではのスタート直後の姿勢の意味は?」「返し馬の成功と失敗は何が決め手?」などなど、今週は“技術”にまつわる質問に対して『太論』を展開。小牧騎手が長年の経験で積み上げた、こだわりの数々が明らかに!
(取材・文/不破由妃子)
返し馬は、どういう競馬をさせたいかで変わってくる
──今回は、小牧さんならではの技術についての質問をふたつ紹介したいと思います。まずは、「『太論』をきっかけに、小牧騎手を応援するようになりました。いつも思っているのですが、小牧騎手はスタートした直後の姿勢が独特ですよね。最初のコーナーまでのポジション争いのあいだ、腕を伸ばして押しているようなシーンをよく見かけ、それは小牧騎手だけのように思います。馬の首をロックして推進力を高めているのかな…と思ったのですが、実際はどういった理由があるのでしょうか?」という質問です。
小牧 なんていうのか、スタートは馬に付いていってるだけやからね。手綱はできるだけプラプラで、必ず鬣(たてがみ)を持ってゲートを出す。結局、ゲートは馬が出るか出ないかやし、そもそも人間より馬のほうが勘がいいから、人間が意識的にガツンと出すより、そのほうが体全体を使えるちゃうかなと思って。首も使いやすいはずやしね。
──だから鬣を持って、馬の行く気に任せているんですね。
小牧 うん。僕はもう付いていってるだけ。ただ、腕を伸ばして…っていうのはようわからんなぁ。あんまり意識したことがない。そもそも、あんまり手で押すもんじゃないし。
──それはスタートに限らず?
小牧 そう。手は馬の首の動きに合わせるだけだと思う。それは、スタート後にポジションを取りに行くときもそうやし、最後の直線で追うときもね。
──続いての質問は、「『今日は返し馬で失敗した』というジョッキーのコメントを見たことがありますが、どういう返し馬が成功で、どういう返し馬が失敗なのでしょうか?」。
小牧 返し馬で一番大事なのは、いかに馬を手の内に入れるか。
──「馬を手の内に入れる」とは、乗馬などでもよく使われる言葉ですよね。
小牧 そうそう。簡単に言うと、手綱を通してちゃんとコンタクトを取って、扶助によって前に進ませるということやね。だから、好き勝手にされたときが失敗っていうんちゃうかな。ときどき、バーッと暴走されたりとかあるでしょう。あれは明らかな失敗やね。あと、パッと見はわからんかもしれんけど、騎手が思ってるペースでいかなかったりとか。とにかく、成功のカギは、手の内に入れるということだと思う。
とにかく、成功のカギは、手の内に入れるということ
──それはもう、テン乗りであろうと、連続騎乗であろうと変わらないことですか?
小牧 そうやね。僕はあんまり気にしない。それより、どういう競馬をさせたいかで変わってくるね。それこそ手の内に入れてないとできないけど、返し馬をゆっくりすることで落ち着かせることができれば、折り合いも付けやすいやろうし、逆に今日は積極的な競馬をさせたいなと思えば、返し馬の段階からちょっと当たりを強めたりとかね。
──なるほど。ものすごく細かい作業ですよね。
小牧 うん。でも、馬乗りってそんなもんやで。ホントのところは、自分にしかわからんもんね。こういう質問に対して、いつも「ファンにどないして伝えよう…」って思うけど、結局、僕にしかわからない微妙なさじ加減やから。なかなかうまく伝えられへんね。
──では、最後の質問です。まず「くだらない質問ですみません…」という前置きがあるのですが、「騎手のみなさんは髭を伸ばすことは禁止なんですか? 小牧さんは似合いそうな気がするのですが」。
小牧 僕の顔に髭は似合わんよ(苦笑)。だいぶ前やけど、園田時代、髭を生やしているジョッキーはいたよ。もう亡くなったけど、寺嶋正勝さんていうジョッキーでね。たしか口髭を生やしとったわ。僕の記憶のなかで、髭を生やしていたジョッキーは寺嶋さんだけやね。それこそ、前回話に出た下原くんの師匠やった人やで。
──そうなんですね。そもそも、髭に関してなにか決まりがあるんですか?
小牧 ないない。ただ、どうしても汚れるからねぇ。ダートでも芝でも、土が引っ付くから。
──あ、たしかにそうですね!
小牧 うん。生やしている人がいないのは、ただ単に汚れるのが面倒臭いからやと思うよ。中央では見たことがないし、みんな朝は必ず、風呂場で髭を剃ってるしね。最後にもう一度言うけど……僕には絶対に髭は似合わん(笑)!
僕には絶対に髭は似合わん(笑)!