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JBCの2歳戦

  • 2018年04月10日(火) 18時00分


◆2歳ダート路線に2つのヤマ場を作れるか

 4月5日、『2018年度地方競馬全国協会の主要事業について』という記者説明会が行われた。昨年度実績や今年度の取組みなど、ひととおり説明されたあと、最後に2018年度の目標として、地方競馬の総売上6000億円という数字が示された。

 地方競馬が売上げのピークを記録したのは1991年度のことで9862億円余り。時はバブル景気の終末期で、1兆円に手が届こうかというところだった。しかしその後、バブル崩壊とともに下降の一途を辿り、2011年度にはピーク時の約三分の一、3314億円余りにまで落ち込んだ。

 地方競馬はかつて『地方競馬30場』というキャッチフレーズで親しまれたように、全国30の競馬場で開催(主催者は22)されていた。しかし現在では、地方競馬が開催できる競馬場として登録されているのは17場。札幌、中京、姫路はしばらく開催されていないため、実際に稼働しているのは14場(主催者は13)と半減している。

 それほど競馬場が減った状況で、2017年度の地方競馬の総売上は6年連続の増加となり、前年度比で113.5%、5525億円余りにまで回復した。冒頭で示した目標6000億円というのもたしかに夢ではない。そういう数字が現実的に示せるようになったかと思うと、ちょっと感慨深い。

 一方、4月9日発行の週刊競馬ブックに掲載されている、NAR・塚田修理事長のインタビューでは、目標が「今後5年以内の6000億円超え」となっている。民間参入やJRA-IPATなどネット投票の拡大が一段落し、さすがに今後も毎年10%ずつの増加までは難しい、という見方はできるだろう。

 その塚田理事長のインタビューでは、最後の方でちらりとしか触れられていなかったのだが、「JBCの2歳戦を来年から実施できるよう検討中」ということに目が留まった。

 JBCは、2001年にクラシックとスプリントの2レースでスタート。本場アメリカのブリーダーズCに倣い、当初からカテゴリーを増やしていくという理念はあった。そしてようやく牝馬によるレディスクラシックが実施されたのが11年目の2011年。芝という選択肢がないため、あとカテゴリーを増やすなら、11月初旬という時期を考えても2歳戦だろう。ただ調整・解決していくべき課題は少なくない。

 まずは2歳路線の日程だ。現在はJBCとかなり近い日程で北海道2歳優駿が行われている。12月の全日本2歳優駿はそのままとしても、ひとまず2歳のチャンピオンレースとするには、ホッカイドウ競馬の2歳路線との日程調整が不可欠だ。秋のダートGI/JpnI路線が、JBCクラシック→チャンピオンズC→東京大賞典と確立している以上、JBCの日程をうしろに動かすのは難しい。また11月3日の祝日の開催(土日と重なるときを除いて)を手放すということもないだろう。

 そうなると、ホッカイドウ競馬の2歳重賞の日程を少しずつ繰り上げていって、北海道2歳優駿を10月の2週目もしくは3週目にということは考えられる。しかしそれにしても中2週か1週となるので、2歳馬にしてみれば厳しいローテーションにならざるをえない。

 11月上旬に2歳馬による全国区のチャンピオンシップ的なレースを実施しようとすれば、ホッカイドウ競馬だけでなく、全国的に2歳馬の入厩を早めて2歳路線を展開していく必要もあるだろう。

 さらにJBC開催にあたっては、競馬場ごとに施設面で可能かどうかという問題もある。JBCは今年のJRA京都、そして来年の浦和と、久しぶりに未開催場での開催となるが、JBCレディスクラシックが行われるようになった2011年以降で目新しい競馬場といえば2013年の金沢だけだった。これは交流レース用の交流馬房(出張馬房)の数が限られるなど、施設面が原因のひとつと聞いている。3レースでも実施できない競馬場があるところを、4レースとなればさらにハードルが高くなる。

 あと望まれることは、現在、シリーズ競走として機能しているとは言い難い『未来優駿』の日程や条件(優先出走権など)を調整して、うまくJBCの2歳戦につなげられるかどうか。

 解決すべき課題はいくつかあるが、実現すれば、11月上旬のJBC2歳戦と、12月中旬の全日本2歳優駿と、2歳ダート路線に2つのヤマ場ができるのは悪くはないと思う。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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