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佐賀競馬場で九州の食文化を堪能

  • 2018年04月17日(火) 18時00分


◆九州柔柔うどんのごぼう天そば、あっぱれにオススメです

 全国の競馬場を巡っていると、土地土地によってさまざまに食文化の違いを発見することがあり、立ち食い系のそば・うどんもそのひとつ。

 東京あたりの立ち食い系そばやさんでは、メニューの先頭にあるのはだいたい天ぷらそば(うどん)で、おそらく注文数でも天ぷらそばが圧倒的1番人気ではないだろうか。ちゃんとした高級そば店であれば、天ぷらそばといえば豪華絢爛なエビ天であったりするが、以下、ここでは話を立ち食い系のそば屋さんに限ることにする。で、庶民の味方立ち食いそば系の天ぷらそばといえば、玉ねぎメインのかき揚げであることがほとんど。

 と思っていたのだが、しかし。全国を巡るうちに、天ぷらそばのデフォルトがかき揚げ天ではない場所があるところに気づいた。九州の北部、福岡、佐賀あたりの立ち食いそばでは、メニューの先頭が「ごぼう天(またはゴボ天)そば・うどん」となっているところがめずらしくないのだ。他に高知市内でもメニューの先頭がごぼう天の立ち食いそばを見たことがある。

 東京あたりの立ち食いそばでは、メニューにごぼう天があるところはそれほど多くはない。それで気づいたのだが、じつは北海道でも、けっこうな確率でメニューにごぼう天が掲載されていることに気づいた。どうやらごぼう天文化は、日本列島の南北の両端に存在しているらしい。

 話は逸れるが、大人になっておいしいと感じるようになった食べ物というのが、誰にもあるのではないだろうか。代表筆頭格は(食べ物ではないが)まずビールだろう。そしてぼくが大人になってそのおいしさに気づいたのが、ピーマンとゴボウ。

 子供の頃も特に嫌いだったわけではなく、おかずに入っていれば普通に食べてはいたが、自分からすすんで食べたということもない。大人になっても感じる味は一緒だったが、「なるほどピーマンはこの青臭さがおいしいんだ、ゴボウは土臭さがおいしいんだ」と感じたのは、日常的にアルコールを摂取するようになってから。そして最近では立ち食いそばやさんでメニューにごぼう天を発見すると、かなり高い割合で注文するようになった、というわけ。

 そしてようやく競馬場グルメの話になるのだが、九州の立ち食いそば文化でもある、ごぼう天そば・うどんは、佐賀競馬場でも堪能することができる。

 正門を入ってすぐ右、『龍ラーメン』の店頭に立つおばちゃんの強力な呼び込みを振り切ると、その隣(向かって左)に店を構えるのが、看板に「創業昭和四十七年」と謳われている『のだ屋』さん。で、ごぼう天そばが、コレ。

ごぼう天

のだ屋のごぼう天そば。400円也



 美しく澄んだいりこ出汁の上に乗ったごぼう天もまた白に近く美しい。見てのとおり、千切りにしたゴボウのかき揚げ状の天ぷらだ。出汁の滲みたごぼう天をかじると鼻腔にスッと抜けていく土の香りがごぼう天の魅惑。

 そして九州ごぼう天の楽しみは、その形状がお店によってさまざまであること。佐賀競馬場では、また別のごぼう天そばを堪能することもできる。

 スタンド2階の4コーナー寄りにある『鳥栖料飲店協同組合食堂』のごぼう天そばが、こちら。

ごぼう天

鳥栖料飲店協同組合食堂のごぼう天そば。450円也



 こちらのごぼう天は、太めのゴボウを斜めにスライスし、それが2、3枚ずつ揚げてある。それがご覧のとおり、そばが見えないほどたっぷりと乗せられている。こちらはワカメも少々トッピングされていて、ゴボウの土の香りとワカメの海の香りが口中で絡み合う。

 と、ここでお知らせ。現在佐賀競馬場のスタンドは耐震化工事の大改修中なはずで、鳥栖料飲店協同組合食堂が通常通り営業しているのかどうかわかりません。主催者にご確認ください。

 立ち食いのそば・うどんやさんでは、ぼくはだいたいそばを食べるのだが、九州はうどん文化も独特。香川の讃岐うどんが全国的に流行った一時期には「うどんはコシこそ命」的な雰囲気があったが、九州のうどんはまったく逆。九州のうどんの教科書(そんなもの存在しませんが)に“コシ”という文字はありません。ふわふわ柔柔(やわやわ)で、お店によっては唇で噛み切れるくらいに柔らかいうどんもある。のだ屋さんのうどんもご多分に漏れずで、九州柔柔うどん(勝手に名付けた)のごぼう天うどんも、あっぱれにオススメですよ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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