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ディープ産駒、日英仏ダービー制覇へ 競馬の歴史を動かすか

  • 2018年05月30日(水) 12時00分


◆GCで生中継されるので、ぜひ御覧いただきたい

 第239回英国ダービー(芝12F6y)の発走が、今週土曜日(6月2日)の現地時間16時30分(日本時間の深夜24時30分)に迫っている。圧倒的1番人気が予想されるディープインパクト産駒のサクソンウォリアー(牡3)が、二千ギニーに続いてここも制し無敗の2冠達成を成し遂げるか。レースの模様はグリーンチャンネルの『Go Racing!(2日24時〜25時放送)』の中で生中継される予定なので、日本産馬が競馬の歴史を動かす瞬間を、ぜひライヴで御覧いただきたい。

 今週末に行われる3歳クラシックに出走を予定しているディープインパクト産駒は、サクソンウォリアーだけではない。3日(日曜日)にシャンティーで行われるG1ジョッケクルブ賞(=仏ダービー、芝2100m)にも、アイルランド産ディープインパクト産駒のスタディオヴマン(牡3)が、有力馬の1頭としてスタンバイしている。

 欧州の名門馬産家ニアルコス・ファミリーの競馬組織フラックスマン・ホールディングス社による自家生産馬がスタディオヴマンだ。

 G1・10勝の名牝ミエスクの12番仔で、ジョナサン・ピースが管理した現役時代は3戦して未勝利に終わったセカンドハピネス(父ストームキャット)が、引退後の2006年に日本で繁殖入り。当初の目的は、ニアルコス・ファミリーが現役時代に所有して凱旋門賞など5つのG1を制した後、日本で種牡馬として繋養されていたバゴを交配するためで、日本で9シーズン過ごすことになったセカンドハピネスは、この間にバゴの仔を4頭出産している。

 このうちの1頭が、2011年のセレクトセール1歳部門に上場され、金子真人ホールディングス社に2500万円で購買されたマンボネフューで、国枝栄厩舎所属となった同馬は、通算29戦4勝、G2スプリングS5着、G3共同通信杯5着などの成績を残し、9000万円を越える賞金を収得している。

 また、スタディオヴマンの3歳年上の全兄テイルオヴライフ(父ディープインパクト)は、仏国でデビューし、3歳春にロンシャンの条件戦で、後のG1仏ダービー馬ニューベイの2着になった後、G1仏2000ギニーに駒を進めたが、残念ながら13着に大敗。その後、北米に移籍し、4歳春にキーンランドの一般戦(d8.5F)を制した際に1分42秒34のトラックレコードを樹立するなど、高い潜在能力の一端を覗かせる局面はあったものの、結局は大成せずに終わった。

 2014年の交配でディープインパクトを受胎したセカンドハピネスは、その年の10月15日に日本を出国。翌2015年4月15日にアイルランドで産んだのがスタディオヴマンである。

 パスカル・バリー厩舎に入厩し、2歳9月にサンクルーのメイドン(芝1600m)でデビューし、ここを2馬身差で制して緒戦勝ちを果たした。

 2歳シーズンをこの一戦のみで終えたスタディオヴマンの今季初戦となったのが、4月8日にロンシャンで行われたG3ラフォルス賞(芝1800m)だった。2.5倍の1番人気に推された同馬だったが、英国から遠征してきたLRアセンダントS(芝8F37y)勝ち馬チリアン(牡3、父イフラージ)に1.1/4馬身及ばず、2着に敗退。この日の馬場状態はLourd(=不良馬場)で、実は初戦勝ちを果たした際も馬場はLourdだったのだが、相手の力量が上がった中での極悪馬場は、ディープ産駒には辛かったというのが、この日の敗因だったようだ。

 スタディオヴマンの3戦目となったのが、5月8日にサンクルーで行われたG2グレフュール賞(芝2100m)で、馬場状態Bon(=良馬場)となったここは本領を発揮。独国から遠征してきたLRダービートライアルS(芝2200m)勝ち馬アルナック(牡3、父キャメロット)に3.1/2馬身という決定的な差をつけ、重賞初制覇を果たした。

 前走の直後、陣営はG1英ダービー参戦の可能性に言及し、実際に登録も残していたのだが、最終的には地元仏国のダービーに向かうことになった。

 ブックメーカーの前売りでは、G1プールッセデプーラン(仏二千ギニー、芝1600m)勝ち馬オルメド(牡3、父デクラレーションオヴウォー)が、3.5倍〜3.75倍のオッズで1番人気。5月10日にチェスターで行われたLRディーS(芝10F70y)を制したA・オブライエン厩舎のロストロポーヴィッチ(牡3、父フランケル)と、スタディオヴマンが、オッズ5.0倍〜6.5倍で2番人気を争っている。

 27日に東京で行われた日本ダービーを制したのはディープインパクト産駒のワグネリアンだった。今週末、サクソンウォリアーが英ダービーに勝ち、スタディオヴマンが仏ダービーを勝てば、ディープインパクトは日英仏ダービー同一年制覇という、夢のような大記録を達成するだけに、両馬にはぜひ頑張ってもらいたいものである。

 余談ながら付け加えれば、産駒がヨーロッパで頑張っている日本供用種牡馬は、ディープインパクトだけではない。

 5月24日に英国のグッドウッド競馬場で行われた開催の、第6競走に組まれていたメイドン(芝9F197y)を制し、見事にデビュー勝ちを果たした日本産馬ハートオヴグレイス(牝3、父ハーツクライ)は、2016年のJRHAセレクトセール1歳セッションにて4100万円で購買された馬である。血統的にもこれから本格化する背景をもっており、同馬の今後にもぜひ注目していきたいと思う。

 更に、5月27日に仏国のパリロンシャン競馬場で行われた開催の、第2競走に組まれていたメイドン(芝2000m)を制し、デビュー2戦目にして初勝利を果たした日本産ルーラーシップ産駒のハッシュライター(牡3)は、2015年のJRHAセレクトセール当歳セッションにて2300万円で購買された馬である。

 海外からこういうニュースが入ってくることが、ごく日常的になっているという現実を、喜びと驚きがないまぜになった心境で受け止めている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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