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サクソンウォリアー復権なるか!? 愛ダービー発走迫る

  • 2018年06月27日(水) 12時00分


◆一抹の不安材料は“厩舎の勢い”

 サクソンウォリアー(牡3、父ディープインパクト)が出走を予定するG1愛ダービー(芝12F)の発走が、今週土曜日の現地時間17時15分(日本時間25時15分)に迫っている。

 デビューから無敗の4連勝でG1英二千ギニー(芝8F)を制した後、6月2日にエプソムで行われたG1英ダービー(芝12F6y)で、オッズ1.8倍という圧倒的1番人気に応えられず4着に敗退。次走がどこになるかが注目されていたのだが、クールモアのザ・シンジケートとエイダン・オブライエンが出した結論は愛ダービーだった。

「次走がどこになるか」は、言葉を変えれば、陣営が「前走の敗因をどう分析しているか」に由るわけで、マイルの二千ギニーであれだけ強かった彼が、12Fのダービーで負けた敗因をスタミナの欠如とみるならば、距離を縮めてくるという選択肢もあったわけである。

 その場合の有力候補は、7月7日にサンダウンで行われるG1エクリプスS(芝9F209y)だった。実は、英ダービーを勝ったマサー(牡3、父ニューアプローチ)の次走がここで、サクソンウォリアーがこちらに廻っていたら、リベンジマッチが早速実現していたわけだが、ここでは2頭の蹄跡は交わらないことになった。

 マサーがエクリプスSを選択した背景には、引退後の種牡馬としての価値を考えると、10F路線のG1を勝っておくことが極めて重要という、マサーなりの事情があるわけで、ファン目線で見ても、彼が古馬相手にどんな戦いを見せるかは非常に興味深い。ここも見逃せない一戦になるはずだ。

 一方、サクソンウォリアーを所有するクールモア・グループも、誰よりも「種牡馬としての価値」を考える組織として知られている。彼の場合は既に、2つのマイルG1を手中にしており、極めて高い水準のスピードを持っていることは実証済みだ。

 エイダン・オブライエンは、英ダービーのゴール前におけるサクソンウォリアーが「止まってしまったわけでは、決してない」とコメントしており、純然たるスタミナの欠如が敗因ではないと分析している節は見てとれる。エプソムにある尋常ならざる起伏と、ダービーデイ独特の雰囲気が、サクソンウォリアーの走りのリズムを乱したことが敗因であるなら、再度12ハロンに挑むというのは充分にありえる選択肢である。

 19日(火曜日)の段階で、ブックメーカー各社は愛ダービーへ向けた前売りで、サクソンウォリアーをオッズ1.5倍〜1.57倍という、英ダービー時を上回る1本被りの人気にしており、同馬がここで巻き返す公算大との見方をしている。

 過去10年の愛ダービー勝ち馬のうち、実に8頭が前走は英ダービーを使われており、このうち勝利を収めていた(すなわち、英愛ダービーと連覇を果たした)馬は、キャメロット、オーストラリア、ハーザンドの3頭いた。一方、英ダービーでは敗れて、愛ダービーで勝利を収めた馬は、フローズンファイア、フェイムアンドグローリー、トレジャービーチ、ジャックホブス、カプリと5頭おり、過去の傾向は巻き返しが充分可能なことを示している。

 ただし、1つだけ気懸りなのが、エイダン・オブライエン厩舎の勢いが、ここへきてやや減速気味なことだ。19日から23日まで開催されたロイヤルアスコットで、オブライエン厩舎は4日目を終えた段階でG1勝ちがなく、最終日に見られた、マーチャントネイヴィー(牡3、父ファストネットロック)によるG1ダイヤモンドジュビリーS(芝6F)短頭差勝ちがなければ、2005年以来13年振りの「ロイヤルアスコットG1未勝利」に終わっていたところだったのだ。

 これについてオブライエン師は、春の天候が不順だったことで、6月を迎えてなお、状態が上がってきていない馬が複数いると説明。当代一の腕利きだけに、よもやサクソンウォリアーの仕上げにぬかりはないはずだが、厩舎が勢いを欠いているというのは一抹の不安材料ではある。

 相手馬の筆頭は、19日(火曜日)の現地時間正午に設定されている登録ステージで、10万ユーロ(約1293万円)を支払い追加登録を行なって出走予定の、英ダービー2着馬ディーエックスビー(牡3、父ファー)になりそうだ。

 サクソンウォリアーの復権がなるかどうか。土曜日のレースに注目したい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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