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バルドウィナ牝系の外国産馬ワールドウォッチ

  • 2018年07月11日(水) 12時00分
●アーズローヴァー(牝 栗東・松下武士 父キンシャサノキセキ、母ヴィアンローズ)
 Lady Berry 4×4という狙った配合。Lady Berryはロワイヤルオーク賞(仏G1・芝3100m)、ポモーヌ賞(仏G3・芝2700m)を勝ったステイヤーで、繁殖牝馬としても成功。Vert Amande、Indian Rose、Le Nain Jauneと3頭のG1馬を送り出した。牝系も発展している。本馬は、父キンシャサノキセキ、母の父Sevres RoseがいずれもLady Berry牝系の出身。冒頭に記したとおりLady Berry 4×4という牝馬クロスを持っている。本馬の4分の3兄ローズミラクル(父フジキセキ)がアイビスサマーダッシュ(GIII)で5着となっており、Lady Berryクロスを抜きにしても悪くない配合で、これにLady Berryクロスが加わった本馬は楽しみが大きい。芝向きのスプリンター〜マイラー。

●ヴァイスカイザー(牡 美浦・木村哲也 父ディープインパクト、母ナイトマジック)
 フォイヤーヴェルク(現3勝)、アルミレーナ(現2勝)、ノチェブランカ(現1勝)の全弟。母ナイトマジックは現役時代、バーデン大賞(独G1)、独オークス(G1)など5つの重賞を制し、牝馬ながら09年にドイツ年度代表馬に輝いた。「Sadler's Wells系×Monsun」という重厚なスタミナタイプで、スピード面はやや心許ないものの、スタミナと底力は一級品。こうしたタイプで兄弟がすべて勝ち上がっているのは母の高い能力の証だろう。ハマれば大きく、芝2000m以上で期待したい。

●タイセイセイヴァー(牡 栗東・矢作芳人 父ダイワメジャー、母マザーウェル)
 2代母シンコウラブリイはマイルCS(GI)を含めて重賞6勝。繁殖牝馬としても優秀で、ロードクロノス(01年中京記念-GIII)、レディミューズ(00年チューリップ賞-GIII・2着)、トレジャー(04年目黒記念-GII・2着)、ピサノグラフ(05年フローラS-GII・4着)などを送り出した。母マザーウェルはJRA未勝利に終わったので、競走馬としての資質は乏しかったが、繁殖牝馬としてはこれまで競走年齢に達した4頭中3頭がJRAで勝ち上がっている。本馬の「ダイワメジャー+Caerleon」は、コパノリチャード、ソルヴェイグ、レーヌミノルなどが出ているニックス。兄弟のなかでは一番配合がいいのでおもしろい。

●ローゼンオルデン(牝 美浦・林徹 父ダンカーク、母シーディザーブス)
 ダート準OP馬コスタパルメーラ(父キングカメハメハ)の半妹。母シーディザーブスはフラワーC(GIII)4着の成績はあるものの、3歳夏からダートへ鞍替えし、最終的には準OPまで出世した。2代母ディフェレンテはややスピード感に欠ける配合なので、産駒のアルファフォーレス(06年東海S-GII・3着、06年ダイオライト記念-GII・3着)とシーディザーブスはダート向きに出た。本馬の父ダンカークはアメリカ産の新種牡馬で、日本産まれの産駒でまだ勝ち上がった馬はいないが、2着3回という成績があるので時間の問題だろう。筋肉量豊富なパワー型なのでダートの番組が増えてくる寒い時期がこの種牡馬の稼ぎどころ。ダート向きのマイラー。

●ワールドウォッチ(牡 栗東・藤岡健一 父Iffraaj、母Baldovina)
 母Baldovinaは英伊で12戦未勝利という凡庸な競走馬だったが、繁殖牝馬としては見どころがあり、クイーンメアリーS(英G2・芝5f)を勝ったCeiling Kittyを産んだ。2代母バルドウィナはわが国に輸入され繁殖牝馬として大成功。桜花賞馬ジュエラー、芝短距離重賞を4勝したワンカラット、エルフィンS(OP)を勝ったサンシャインの母となった。優れた資質を脈々と伝える名牝系だ。本馬の父Iffraajは、新種牡馬の勝ち上がり頭数のヨーロッパ記録(38頭)を樹立したスピードタイプ。Ribchester(17年ムーランドロンシャン賞-仏G1などG1を4勝)、Wootton Bassett(10年ジャンリュックラガルデール賞-仏G1)などを出してスピードタイプの種牡馬として成功し、後者はAlmanzor(カルティエ賞最優秀3歳牡馬)の父となった。スピード色の強い配合なので、芝向きのスプリンター〜マイラーとして手堅く走ってくるだろう。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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