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今夏の危険な暑さを乗り越えた先にドラマがあるかも?

  • 2018年07月21日(土) 12時00分


◆シンザン名馬物語を知っていますか?

 酷暑、劇暑、烈暑…。どんなにオーバーな言葉を使っても表現しきれないほど、危険な暑さが続いています。みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

 先週の当コラムにも書きましたが、ただいま私は、近年にないハードスケジュールのまっただ中にあります。ここ2週間は、東京都内はもちろん、福島、埼玉(大宮)、名古屋(中京競馬場)、横浜を転々としてきました。

 そこで感じたのが、各地の暑さの違い。東京は高層ビルの照り返しや冷房の排気が暑さに拍車をかけているようです。福島は盆地ならではの熱い空気がこもったような暑さで、大宮は平野部特有のジリジリと照り付ける猛暑。中京競馬場は、なんとなく大宮に似ているような気がします。

 その中で、横浜はちょっと違っていました。私が行ったのは17日の火曜日。日差しは強烈でしたが、木陰に入った時の涼しさがけっこう心地よかったんです。これはもちろん私の感覚に過ぎません。でも、どうしてそう感じたのか、ちょっと考えてみました。

 横浜にはプロ野球DeNA戦のニコ生中継で行きました。この時期の横浜スタジアムでは、天気が良ければレフトからライトの方向へ、やや強い風が吹き抜けています。その風が吹いてくる方向を地図で確かめたら、三浦半島の付け根の先、湘南の海岸(相模湾)になっていたのです。

 三浦半島に高い山はなく、付け根の部分の幅も、さほど広くはありません。相模湾のほうから吹いてくる風が、陸地で暖められることなく通り過ぎていく。横浜の涼しさはそれが要因なのかな、と思ったのですが。

 それはさておき、この暑さですから、競馬の馬も騎手もタイヘンですよね。福島や中京で激走した馬には、けっこう堪えているはず。地方競馬では、浦和や笠松、園田あたりの在厩馬が多大な影響を受けているかもしれません。

 ご存知の方も多いと思いますが、史上2頭目の3冠馬となったシンザンは、春に2冠を制した後、涼しい北海道には向かわず、京都の厩舎で夏を過ごしました。ところが、その年の京都は数十年ぶりの猛暑に見舞われ、さすがのシンザンも夏負けになって熱発してしまったそうです。

 同馬を管理していた武田文吾調教師は氷柱や扇風機を使って懸命に馬房を冷やし、その甲斐あって、しばらくすると熱は下がりました。それでも、秋の調教開始は遅らせざるを得なかったとのこと。その年の菊花賞は11月15日に行われたので、そこまでに体調が回復して3冠を制するわけですが、もし同レースが今のように10月20日頃の開催だったら、同馬の快挙は達成されていたかどうか。

 シンザンの名馬物語には、そんなドラマが伏線として配されていました。今年の夏が過ぎた後、競馬にはどんなことが起きるのか?ちょっと注目しておきたいと思います。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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