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6歳ながら秋の躍動を確信させるレースぶり/中京記念

  • 2018年07月23日(月) 18時00分


◆函館2歳Sでは重賞初制覇の小崎騎手を称えるジョークも

 夏本番に突入したばかりなのに、今週は早くも秋にかけての「注目馬、上昇馬」が次つぎに出現した珍しい週だった。

 まずは、3歳牡馬レイエンダ(父キングカメハメハ)。ちょうど1年前に札幌で2歳新馬を勝ち、そのあと約9ヶ月半ぶりの東京で500万条件を勝って2戦2勝となっていたこの日本ダービー馬レイデオロの全弟は、函館の松前特別2000m(1000万下)を、ほとんど馬なりで圧勝。1分59秒3(上がり34秒1)で楽々と乗り切ってみせた。

 無傷の3戦3勝となって、このあとは9月中旬のセントライト記念を予定している。その後はおそらく菊花賞ではないだろうから、天皇賞(秋)2000mでレイデオロとの「全兄弟」対決が実現する可能性も生じた(少し)。

「函館2歳S」のアスターペガサスも、歴代2位の走破時計、着差以上に強かった。近年の函館2歳Sの勝ち馬はあまり大物には育たないことが多いが、父ジャイアンツコーズウェイ(その父ストームキャット)は、約10Fの英チャンピオンSなどG1を6勝もした【9-4-0-0】の名馬であると同時に、多くのG1馬を送る名種牡馬。牝系はステファノス(祖母ゴールドティアラ)などが日本での活躍馬として知られるファミリー出身。

着差以上に強かったアスターペガサス、小崎綾也騎手は重賞初制覇


 少なくともマイルまでは平気。陣営は「朝日杯FS」挑戦を展望している。中竹調教師は、レースの中身を評価しながら、初重賞制覇となった小崎綾也騎手をたたえ、「質より綾也(りょうや)」と、出負けしながら少しも慌てなかったジョッキーを絶賛したと伝えられる。

 人気のナンヨーイザヨイ(父エイシンフラッシュ)は、素晴らしい馬体で、気配も文句なしだったが、フットワーク、身体つき、血統背景など、短絡かもしれないがやっぱり1200mのスプリント戦向きではないだろう。距離を変えての真価発揮に期待したい。

「中京記念」は予測された以上の快時計「1分32秒3」のコースレコードになった。レース全体のバランスは「45秒3-47秒0」。高速馬場のため、1000m通過57秒0のハイペースとなったが、勝ったグレーターロンドン(父ディープインパクト)は、最終週に訪れる外枠有利の馬場を意識し、なおかつ超ハイペースの流れを田辺騎手は(途中から)読み切っていた。あわててスパートしなかったから、ハイペースの中京コース攻略のお手本のような勝ち方だった。馬もこれまでより落ち着きを増し、爪の不安などで順調に使えなかった注目馬が、6歳のいま、ようやく軌道に乗ったと考えたい。

 まだ、キャリアは15戦【7-1-2-5】。ようやく重賞を勝ったばかりだが、ロンドンブリッジ産駒でダイワエルシエーロ、ビッグプラネットの下。なおかつ、全姉は菊花賞馬キセキの母という血統背景を考えると、文句なしの遅れてきたこの秋の注目馬である。「暑さには弱い」とする陣営は、サマーマイルシリーズに向かう予定はなく、秋に組まれるもっと大きなレースを展望している。

大外枠から差し切りコースレコードを記録したグレーターロンドン


 高速馬場の時計勝負となったため、勝ったグレーターロンドンだけでなく、2着以下の好走馬も、これからの可能性にあふれる戦歴の少ない馬が上位を占める結果となった。

 このハイペースを考えると、2着ロジクライ(父ハーツクライ)は自身57秒5-34秒9=1分32秒4というきびしい内容なので、結果的にハイペースを追走しすぎたことになるが、この流れを追走して自身も従来のレコードを0秒3更新は、ふつうなら楽に勝った内容。負けはしたが中身は文句なしだった。

 この5歳馬、こちらも骨折で1年以上の休養などがあり、今回がまだ11戦目。勝ったグレーターロンドンとともに、マイル路線の主役級に出世して不思議ない。さかのぼって女王陛下のハイクレアー(1971年、父クイーンズハッサー)を牝祖とする日本の直系子孫(直牝系)はどのくらい巨大になったのかもう計算できないが、ロジクライの3代母はウインドインハーヘア(1991年)の半姉。もう一応というしかないが、正確にディープインパクトと同じファミリーであり、こんな大きな牝系にならなければ近親馬といっても通る。

 3着リライアブルエース(父ディープインパクト)も、脚部不安で1年半近い休養があったため、5歳馬ながらまだ12戦【4-2-2-4】。今年オープンに昇格して、GII京王杯SCを0秒2差。今回が1分32秒6で0秒3差。たちまち重賞制覇が可能だろう。

 3歳フロンティア(父ダイワメジャー)も、初の古馬オープン馬との対戦で、最高タイムを1秒2も短縮して1分32秒6。軽ハンデを生かしての善戦にとどまらない快走だった。

 人気馬の中では、6歳ウインガ二オン(父ステイゴールド)は、昨年は自身の前半1000m通過58秒4で、1分33秒2。今年は前半57秒0の通過で、結果1分33秒4。強気に行き過ぎたかもしれないが、といって下げていい馬ではなく、レース全体のペースが全然違ったからこれは仕方がないだろう。スマートオーディンの復活に期待したが、前回行ったせいか途中からインコースで行きたがってなだめるのに苦労した。もし順調に使えれば、この次あたりは…と思えるので、もう一度注目したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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