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【地方競馬ネット会議室(1)】“地方競馬をより面白く!” 塚田理事長インタビュー・前編

  • 2018年07月25日(水) 18時01分
NAR

▲NAR(地方競馬全国協会)との新企画がスタート!初回にNARのトップ・塚田理事長が登場


NAR(地方競馬全国協会)×netkeiba.comの新企画が始動!『NARはこう考えている!地方競馬ネット会議室』と題し、四半期毎に、NARの代表者が地方競馬界の近況や構想をお伝えします。コンセプトはズバリ“地方競馬をより面白く!”。初回以降は読者から地方競馬に関する提案や要望を募集し、良いアイディアはNARが実際に検討していきます。

記念すべき初回には、NARのトップ・塚田修理事長が登場!JRA主催となった今年のJBC競走をテーマに、アイディアに満ち溢れた理事長の考えと、生まれ変わりつつある地方競馬の現況を当企画のプロローグとしてお伝えします。(取材:矢野吉彦)



JBC京都開催の誤解「われわれからJRAさんにお願いしました」


――地方競馬の馬券売上が好調だ。それとともに、各地方競馬場の開催を円滑に行うための“調整役”であるNAR(地方競馬全国協会)の取り組みも多様化してきた。しかし、その意図や目的について、まだまだ十分に理解されていないことも多い。そこで今回から、NARの要職にある方々に直接お話を伺う企画を立ち上げた。第1回は、NARのトップ、塚田修理事長に「今年のJBC開催」について語っていただく。

矢野 今年のJBCは、JRAの主催により、11月4日(日)に京都競馬場で行われます。JBCが、本来は地方競馬のビッグイベントであるにもかかわらず、JRAの開催になったということで、中にはこれを疑問視している方もいらっしゃるようです。今回はこのことについてお話しいただきたいのですが、まずはJBCが始まった経緯からお願いします。

塚田 そもそもJBCは、生産者団体(JBC協会)から、「アメリカのブリーダーズカップみたいなダート競馬の最高峰レースを作りましょう」という話があって始まったんです。

 一方で、ダート競馬は、1997(平成9)年からダートグレード競走として格付けと体系化が行われるようになりました。そこには、芝はJRAさんだけど、ダートは地方を中心に頑張っていきましょうという考えもありました。

 その流れの中で、2001(平成13)年に始まったのがJBCです。もともとはダート競馬の最高峰レース、祭典という位置づけでした。それが、主に地方競馬においてダートグレード競走をやっていたので、“地方競馬の祭典”っていうことになっていった。そういうふうに認識しています。

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▲今や地方競馬の一大イベントとなったJBC競走(撮影:高橋正和)


矢野 JBCが始まった頃は、馬券の売上が相当低迷していました。そこで、地方でも何か注目を集めるビッグイベントをやらないといけない、という思いもあったはずですが?

塚田 ありましたね! 売上が落ちてくる状況で、大きな起爆剤にしようと。JBCという最高峰レースを1日でやって、なおかつ地方の全競馬場、全場外が一緒になって、みんなで盛り上げましょうということで始めたんです。これは地方競馬にとってのまさに起爆剤になったと思います。

矢野 その後についてはどう受け止めていらっしゃいますか?

塚田 “地方競馬の祭典”として、関係者の協力を得て大きくなってきたと考えています。JRAさんや生産者のご協力、それに何と言っても多くの競馬ファンの皆様のご支援もあります。おかげさまで、今やJBCデーの馬券売上が50億円規模のビッグイベントになりました。

矢野 それを今回、JRAが開催するというのはどうなのでしょう? そこが一番肝心なところですが…。

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▲矢野アナがファンの気持ちを代弁「そのJBCをJRAが開催するというのはどうなのでしょう?」


塚田 地方競馬がダートグレード競走中心ということは残した上で、もっと多くのお客様に知ってもらうためには、やっぱりJRAさんの舞台でやったほうがより広まるだろう、これはもうごく常識的な判断と言っていいだろうと思って、今回地方競馬主催者の総意のもと、JBC実行委員会の承認をいただいてJRAさんにお願いすることになったんです。それを、JRAさんにも快諾してもらったので、今回の運びにいたりました。

矢野 JBCの売上が地方開催でも50億円に迫るまで伸びてきた。でも、JRAの開催だと、その分が無くなるわけですよね。これは、地方にとって大きな問題ではありませんか?

塚田 そうそう、一番のポイントを聞いてくれました! そこが、最も誤解されてるところです。これは地方競馬がすごく変わった部分だと思います。

 例えば今年、JBCを大井の水曜ナイターでやっても、今だったら40億円は売れます。JRAで開催するとそれがなくなります。だけど、今までの地方競馬だったらそこまでの計算しかしなかった。そうじゃなくて、今回1度JRAさんにお願いすることによって、JRAネット投票のお客様とか、他のお客様にJBCの存在が広まって、その結果、翌年からわれわれに返ってくるものがどれだけ大きいか、こういうところで判断するようになったんですよ。

 つまり、われわれも目の前のことじゃなくて、将来のことを踏まえて判断できる状況になった。これは認めていただきたいと思います。

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▲矢野アナの売り上げに関する質問に「一番のポイントを聞いてくれました!」


矢野 今年の売上はなくなってもいい?

塚田 そういうお声をいただくと、やっぱり地方は変わらずにそういうふうに思われてるのかな…、と(笑)。でも、皆様のおかげで売上が上がってきたこともあって、地方競馬も先を見て戦略的に物事を考えられるようになりました。

 今は、JRAさんとの連携が進んでいます。地方競馬でもJRAの馬券を売っているので、ハードルはそれほど高くない。むしろ主催者全体で、将来に向けてアピールすべきターゲットは何かを考えたとき、今年1年、地方で開催しなくても、後になって大きく返って来るという、その判断ができた。これは、地方競馬が少しずつ変わってきた証、というふうに認識してもらえると一番嬉しいんです。だから矢野さんの質問は、すごく嬉しいし、そこが一番説明したかったところなんです!

矢野 私も、一番お伺いしたかったところでした(笑)。

塚田 JRAさんもその辺りのところは十分によく分かっていて、「今年度限り」と強調してくれています。今回、地方競馬としてそういう判断ができるようになったのは、お客様の馬券を買う手法が変わってきたことが大きいと思うんですね。

矢野 JBCが始まった当時、馬券を買うには、本場か他の地方競馬場、あるいはその場外に行くしかありませんでした。

塚田 そうなんです。ところが最近は、売上の70%くらいは在宅投票で買っていただいて、JRAのネット投票からもたくさん利用していただいている状況です。

 そこでこの先、われわれのターゲットとしてどこを増やすかというと、もちろん本場のお客様は大事ですよ。それはとても大事ですが、やっぱりネット投票です。JRAのネット投票には、もう400万人近いお客様がいらっしゃるということなので、その方々に買っていただくには、JBCをJRAさんでやっていただくというのは大きなインパクトになるんじゃないか、と考えたわけです。

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▲地方競馬の将来を見据え、JBC競走の新たな可能性を熱弁


矢野 JRAのネット投票で地方競馬の馬券を買えるようになりましたが、いまだにJRAの馬券しか買っていない方も多い。そういう方々にアピールしようということですね。それに今年は、曜日の関係もありました。

塚田 はい。11月3日に固定するというのが、基本だと思っています。その日がJRAの開催がある土日になった場合、たくさんのお客様にどうしたら参加していただけるかということと、前後のレースとのローテーションを考慮して判断していけばいいので、無理やり参加が少ない日にこだわる必要はないと思っています。今回は11月4日ですけど、それはそれでいいのかなと思います。

JBCをより面白く! 出走奨励金やファン投票案も


矢野 開催するほうの理屈に対して、出走させる側のローテーションの問題ということもあるので、あまり大きくずれてしまってもいけないのかと。

塚田 そうですね。前後1週間くらいだったら許容範囲かな。これは各年ごとの判断になりますけど、ダート競馬の祭典らしくやっぱりファンにも馬にもたくさん参加してもらってのレース。それから当然、次走にいい状態で出てきて欲しいですから、次のステップの関係ということも考えなければ。

矢野 その結果、今年はJBCがJRAのレースとして行われるわけですが、そうすると、JRA側の規定で地方馬がどれだけ出られるかという問題が発生します。

塚田 大井で16頭でやった場合、JRAは基本7頭です。今年はその逆。京都で16頭でやるなら、地方7頭がベースになります。それで逆に心配なのは、地方の馬が出るかどうかということ。枠をもらったのはいいけど、今まで自分のところで主催していても、なかなか有力馬が出ないという状況があったので、どうやったら地方の馬が出るか、むしろそこを考えています。

矢野 具体策はありますか?

塚田 1つは登録免許税や輸送費などがかかるので、出走支援費ということで地区によって80〜100万円を支給しようかと。もう1つは特別出走奨励金みたいな形で、ダートグレードを勝って、一定の基準を満たした馬が出てくれたら、もっとボーナスをあげるというようなことを考えてますね。とにかく地方の有力馬が出てほしい。

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▲地方馬参戦に憂慮「とにかく地方の有力馬が出てほしい」


矢野 そうじゃないとおもしろくないですからね。でも、出るだけではダメでしょう?結果も残して欲しい。それに関しては何かありますか?

塚田 もちろん。JBC協会さんのご協力をいただいて、地方競馬の最先着馬にプレミアムという形で賞金が出ます。ハードルは高いですが、1着になると500万円、2着でも地方馬最先着なら400万円。同じく3着なら300万円出ます。それと、私どもNARからは、今回、地方最先着馬には100万円出します。大敗しても出すのか、など、いろいろ議論はありましたけど、とりあえず最先着馬であれば出すことにしました。

矢野 ほかにもいろいろアイデアをお持ちとか?

塚田 ええ。特設サイトを立ち上げて、出て欲しい馬をファンの方々に投票していだだこうと思ってるんですよ。われわれNARとすれば、ボーナスは馬主さんや調教師さんに出すけれども、プラスでファンの方々の後押しも頂戴したい。地方には、今まで全国規模のファン投票がなかったので。どうですか、票はどの位集まりますかね?

矢野 ファン投票でJBCの地方出走馬を選ぶ、というのはなかなか斬新ですね。票は集まると思いますよ!

塚田 もちろんJBCの出走馬選定のルールがあるので、ファン投票上位馬がそのまま出走馬にならないかもしれませんが、応援していただくファンの気持ちを大切にしたいというのはあります。

 先日の帝王賞でリッカルドが4着、ヒガシウィルウインが5着に来てくれた。あれは良かったです。ホントに良かった。でも、そういう馬がこれまでなかなか交流GI(JpnI)などに出てきてくれない環境もあったので、先ほど言った奨励金を出した上で、さらにファンの人がこれだけ思ってるんだよという後押しがあれば、出てくれるんじゃないかなと思ってるんですけど。

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▲帝王賞でJRA勢4頭に先着したリッカルドとヒガシウィルウィン(撮影:高橋正和)


矢野 地方競馬ファンの気持ちの中には、どこかに地方馬が中央馬に勝ってほしいという思いがあるような気がします。ダートグレード競走のCMで、交流重賞で地方の馬がこれだけ勝っている、っていうのがありましたね。あれは琴線に触れるCMだと思うんですよ。

塚田 こんなに勝っていたんだって(笑)。そういう、地方の馬を応援してくださるファンの方々の声を生かしたい。今回のJBCがJRA開催になることで、地方の馬が出てくれるかどうか、一番心配しているところなので。考えてみれば、馬を出す側もそういう声って意外と聞いたことがない。今まで全国規模のファン投票みたいなものをやったことがないので、面白いかなと思いますけどね。

矢野 地方生え抜きの馬に票が集まるか、それともJRAからの転入馬、それこそ、帝王賞のリッカルドみたいな馬にも票が行くか?

塚田 ウーン、それは微妙なところでしょうね。ファンの方は生え抜き馬に出て欲しいと思われているかもしれませんが、われわれとしては地方に所属していれば地方馬だと思ってるので…。とはいえ、生え抜き馬を強くしたいという思いは強いです。

――塚田理事長のお話は、JBCでのファン投票実施構想から、地方競馬の強い馬づくりへと進んでいく。そのあたりは、後編で改めてご紹介しよう。(⇒後編につづく)


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当コラムでは、地方競馬に関するご提案・ご要望を受付中。頂いたアイディアはNAR(地方競馬全国協会)にお渡しし、実際に検討頂きます。

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