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後続につけ入るスキを与えず、向こう正面で勝負あり/小倉記念

  • 2018年08月06日(月) 18時00分


◆小倉パーフェクト連対も納得の内容

 夏のローカルのハンデ重賞らしく、1番人気馬が12連敗を続けていた。今年は、高速馬場のわりに先行タイプが少ない展開が大きなポイントだった。

 好スタートの武豊騎手のトリオンフ(父タートルボウル)は、一瞬、自分で行くのかと思えたが、うながすように行かせたマウントゴールド(父ステイゴールド)の2番手。ライバルと目されたグループは、脚質もあるが、すんなり人気のトリオンフのマイペースの先行を許したから、向こう正面中間で(前半1000m通過60秒0→)、すでに勝負あった、の感があった。

 この勝利でトリオンフは、全連対10回がすべて「1800〜2000m」。欧州では名マイラーとされた父タートルボウル(17年に15歳の若さで急死)は、例えばフランケル産駒が象徴するように、前半は少しゆっくり行ける1800m〜2000m級の方が合っているのだろう。

 タートルボウルは、3代父がノーザンダンサー。母方には日本で成功したゼダーン、ヴェンチアの名が登場することもあり、もうだいぶ以前のノーザンテーストを筆頭のノーザンダンサー系をイメージさせる種牡馬だった。なら、夏の平坦コースは合っている。ましてトリオンフは、母メジロトンキニーズの名前から推測できるように、底力と成長力を秘めたメジロ牝系の代表「メジロマックイーン、メジロファントム」のファミリー出身でもある。

 これで小倉【3-1-0-0】も納得。武豊騎手は小倉記念4勝目。2013年にメイショウナルトで先行抜け出し(1分57秒1のレコード)を決めたのと同じようなレースだった。マウントゴールドと併走になった後半は「56秒9-45秒2-33秒5-11秒5」。後続はつけ入るスキがなかった。1分56秒9は同じようなレース運びで記録したメイショウナルトのレコードを「0秒2」更新した。

得意な小倉でレコード勝利を飾ったトリオンフ


 サトノクロニクル(父ハーツクライ)は、デムーロ騎手らしく前方の武豊騎手を見つつ、有力馬の中では早めに動いての2着確保。ただし、押っつけ通しの追走だった。高速の2000mよりもう少し距離があった方がいいのだろう。

 サンマルティン(父ハービンジャー)は、ある程度控えて行った方がいいタイプの弱みが出た。昨年の小倉記念は1分57秒6(自身の上がり35秒4)。今年は同様の1分57秒7でも自身の上がりは33秒6。今年のように前半スローで、先行したトリオンフに上がり「33秒5」でまとめられては手の打ちようがなかった。

 完敗組の中でちょっと惜しかったのは、伏兵牝馬レイホーロマンス(父ハービンジャー)。デキの良さが光り、軽ハンデを味方に上がり最速の33秒4で突っ込んだが、ちょっと差のある4着止まり。サンマルティンと同様、後半少しもつれて欲しかった。

 ストロングタイタンは、ややムラなタイプとはいえ、この相手にこういう負け方をする力関係ではまったくない。敗因は心房細動だった。

 1番人気が12連敗もしていたが、当初2〜3番人気かと思えたトリオンフが押し出されるように1番人気になったのに、それでもファンはトリオンフを支持した。たしかに、別に人気が走るわけではない。

 支持率が高くなるほど気合の入る武豊騎手が鞍上だったのも幸運だったかもしれない。セン馬トリオンフは3歳時までは出走できないレース(クラシックなど)があるが、もう古馬なので制限のつくレースはない。今回が57キロのハンデで圧勝なのでハンデ戦は少々苦しいから、さらにタフになってビッグレースに挑戦してもらおう。

 波乱含みのはずの小倉記念が順当におさまって、あまり荒れないはずの「レパードS」が昨年につづき大波乱になった。上位3着までを伏兵が独占。人気馬総崩れだった。

 先行タイプ有利とされる小回りダート(コーナーがきつく幅員も狭い)で、今年は前半の入りが「36秒6-49秒6→」。10年目にして過去に例のないスローな展開になったのがその最大の原因。機先を制するように先手を奪った内田博幸騎手=グリム(父ゼンノロブロイ)の前半1000m通過は「61秒9」。途中でスパートできる馬がいなかった。

先手を取ったグリムが押し切り重賞初制覇(撮影:下野雄規)


 人気のグレートタイム(父キングカメハメハ)は、スタート一歩はともかく、途中で位置を上げることができず、ドンフォルティス(父へニーヒューズ)は好位につけたものの追い出して伸びを欠いた。異常な暑さや、連戦の疲れもあっただろうが、3着したビッグスモーキー(父キングカメハメハ)以外はみんな初コースだったにしても、心配された以上に人気上位馬は「新潟ダート」を苦にしていた。

 未来のダートのエース級が頭角を現すレースとして評価の高まっていたレースであり、注目度は高いが、この緩いペースで展開しながら上がり最速は2着ヒラボクラターシュ(父キンシャサノキセキ)の37秒4。凡戦とされた昨年と同じような中身で、みんなこれからパワーアップしてくれるはずだが、残念ながら現時点でのレースレベルは低かった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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