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競馬界の人材不足に立ち向え!教え子は460人超え「つねに相談窓口でありたい」 (後編)

  • 2018年08月17日(金) 18時01分
ノンフィクションファイル

▲460人を超える教え子を送り出している湖南馬事研修センターのセンター長兼教官・齋藤昭浩氏


湖南馬事研修センターのセンター長兼教官、齋藤昭浩。JRAの公益財団法人・軽種馬育成調教センターにて、20年以上にわたり、育成調教技術者の養成に従事した「人作り」プロである。その間、送り出した卒業生は460人以上。しかし、齋藤の心の中にあるのは、満足ではなく危機感だった。

競馬は“1勝”を目指すリレーである。アンカーがジョッキーならば、リレーの中核をなすのは育成・外厩のスタッフ。その乗り手不足が深刻なのだ。牧場の人手不足は慢性的で、現在は外国人スタッフを雇うことで補っている。「日本の競馬産業の未来を本気で思うなら、日本人の若手を育てなければ」──そんな使命感のもと、人生を賭けて人材育成に立ち向かっている男の物語。

(取材・文=不破由妃子)


【掲載スケジュール】
齋藤昭浩氏インタビュー 8/16(木)前編、8/17(金)後編
吉澤ステーブル社長・吉澤克己氏インタビュー 8/23(木)前編、8/24(金)後編

日本の教え方は“人それぞれ”、そこを変えたかった


 2016年3月、吉澤ステーブル社長・吉澤克己の全面バックアップのもと、齋藤昭浩の人生を賭けた人材育成・養成計画は動き始めた。齋藤が求めたのは単なる増員ではなく、牧場の即戦力となり得る人作り。当然、教育の質にもこだわった。

「乗馬でもそうなんですが、日本の教え方というのは“人それぞれ”なんです。たとえばヨーロッパでは、馬に乗る人もお世話をする人も馬の取り扱い方がみんな同じなんですが、日本にはそうなるべく統一感を持った教育がなかった。だから、職場が変わったり教えてくれる人が変わったりすると、人それぞれやり方が違うから、どうしても困惑してしまう。それは人間だけではなく、馬の育成にも言えることです。

 その点には以前から問題意識を持っていたので、現在湖南馬事研修センターにいる教官は、すべてBTC時代の僕の教え子で揃えました。そうすることで、統一感のある教育が可能になりますからね」

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▲BTC時代の教え子が教官(外)を務め、研修生たち(内)に手厚い指導を行っている


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▲騎乗についてのアドバイスも逐一伝えられる、行き届いた指導


 齋藤がもうひとつこだわったのが、卒業生たちの“その後”。牧場の現実は前編でも少し触れたが、「教えることはできたとしても、育てる場所がない」(齋藤)というのが、育成界における長年の課題だったからだ。

 そして、この課題をクリアするために、大きな役割をはたしたのが吉澤ステーブル。吉澤と齋藤は、「教えて育てる」という人作りの画期的なシステムを作り上げたのだ。

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