古馬相手のここで好勝負に持ち込めるかが成長への鍵/札幌記念
◆「3キロ差」が好成績の最大の要因
2006年から「定量」のGIIになって過去12回。夏のローカル重賞を狙う「函館記念→札幌記念」組が好走するケースに加え、秋のビッグレースに向けて「始動するGI級」の出走と、底力での快走も多くなった。
もうひとつ、まだあまり目立っていないが、未来に大きな展望を描く3歳馬の挑戦が「別定重量」当時よりふえ、エース級の古馬との対戦で自信をつけるケースが多くなったことに注目したい。
3歳馬の挑戦はGIIになって以降、13年間で12頭にすぎず、その成績は【2-1-1-8】にとどまるから、一見、重要ではないように見える。ところが、12頭のうち、
2006年アドマイヤムーン1着
2009年ブエナビスタ 2着
2010年ヒルノダムール 4着
2012年ハナズゴール 4着
2013年ロゴタイプ 5着
2014年ハープスター 1着
2015年ヤマカツエース 4着
2016年レインボーライン3着
なんと8頭もが掲示板に載って、勝ち負け(善戦)している。ブエナビスタ、ロゴタイプ、ハープスターはすでにGI馬だったが、振り返ると、ハープスター以外はこのあと古馬の重賞路線に加わってエース級に育っているから、古馬相手のここで好勝負に持ち込めるかどうかは、実際には大変な試金石であり、かつ出世レースと考えることができる。
出走頭数が12頭にとどまる数字のトリックにも近いが、【2-1-1-8】の3歳馬は、4歳や5歳馬を上回って、「勝率。連対率。3着以内率」すべてトップである。まして8頭も5着以内に好走しているから未来展望の観点からも軽視できない。
3歳馬の好成績の最大の要因は、古馬のGI級にぶつけて本物になれる馬かどうかを判断しようとする陣営の意欲の姿勢に負うところ大だが、「3歳馬54キロ、4歳以上馬57キロ。牝馬それぞれ2キロ減」の定量が大きいのではないか、と思える。
ハンデ戦などもっと負担重量の差が大きいレースに出走も可能だが、賞金別定と異なるこの定量戦は、古馬のエースが57キロ止まり。なら、「3キロ差」は格好の目安になる。
天皇賞(秋)の負担重量差は2キロにせばまる。3歳が有利すぎるとされた凱旋門賞は2年前まで約3.5キロ。こういう時期なので、「トップと3キロ差」は格好の尺度になると同時に、やっぱりちょっとだけ3歳に有利なのである。
かなり不本意な形で7着止まりだった日本ダービー(0秒4差)から、強気にここに挑戦してきたゴーフォザサミット(父ハーツクライ)に注目したい。内でひるんで下げながら2分24秒0なら能力はある。3歳の夏から秋の間に、古馬と初対決になった重賞で快走したハーツクライ産駒は、近年のジャスタウェイ、スワーヴリチャードが象徴するように本物に育つ可能性が高い。
ハーツクライ産駒のゴーフォザサミットは、大器とされながらあと一歩で頂点に駆け上がることができなかったショウナンマイティの半弟。この兄弟の祖母の半妹にバランシーンの名が出てくるのは、現在の日本だからこそ興味深い。
バランシーンは、同期のライバル=ウインドインハーヘア(ディープインパクトの母)を完封して1994年の英オークスを勝っている。続く愛ダービーも勝った。ランキングは、ウインドインハーヘアより完全に一枚上だった。ディープインパクトとハーツクライは1歳違いではあるが、種牡馬として産駒デビューは同じ2010年、ずっと同期のライバルである。