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『ばん馬ソリに乗ってみた!』女性騎手たちの前で大恵陽子が体当たり企画

  • 2018年09月11日(火) 18時01分
馬ニアックな世界

▲ばん馬界のディープインパクトことカネサブラック産駒のハクウンリューと


1t前後の大きな馬体で、何百kgものソリを引くばんえい競馬。騎手はソリに乗ってレースをしますが、私、大恵もそのソリに乗ってみました! ソリを引いてくれたのはばん馬界のディープインパクトことカネサブラック産駒のハクウンリュー。まだ3歳の若駒は見た目以上のスピードで走り、ソリの上で立っているだけでも大変でした。太ももが筋肉痛になりながらの体験で見えてきたばんえい騎手のすごさや、ばん馬の可愛さをご紹介します。

意外とスピード感あるソリ


 9月3日、ばんえい帯広競馬場。

 この日、地方競馬の女性騎手による戦い「レディスヴィクトリーラウンド(以下、LVR)」のばんえいエキシビジョンレースが行われました。

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▲LVRのばんえいエキシビジョンレースで集まった女性騎手たち


 LVR出場の宮下瞳騎手、木之前葵騎手(ともに名古屋)、別府真衣騎手(高知)に加え、ばんえい競馬唯一の女性騎手・竹ケ原茉耶騎手、そして最近引退した鈴木麻優元騎手、下村瑠衣元騎手がばんえいレースに挑戦するというもの。エキシビジョンレースに先立ち、調教馬場で練習が行なわれました。

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▲鈴木麻優元騎手(左)と宮下瞳騎手(右)


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▲別府真衣騎手(左)と木之前葵騎手(右)


 昨年も同エキシビジョンレースは行なわれたため、みな約1年ぶりのばん馬の感覚を楽しむ中、鈴木元騎手は昨年、落馬負傷中だったため今回が初参戦。調教師にソリに同乗してもらい、何度も障害を越えて感覚を掴んでいっていました。

 女性騎手たちの練習がひと段落した頃、帯広競馬場のご厚意で私もソリに乗せていただきました。相棒はハクウンリュー。お父さんはばんえい記念を制するなど重賞21勝のカネサブラックという良血3歳馬なのですが、実はこの日が「男、最後の日」でした。鈴木邦哉調教師によると「明日、去勢するんだ。これからは全国各地のイベントに出張していく予定だよ」ということです。

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▲鈴木邦哉調教師とハクウンリュー


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▲三つ編みは師が自ら行ったもの。「たてがみの装飾はファンから贈られたリボンやシュシュ、季節に合わせてひまわりとかを使うんだ」と鈴木師


 ソリの人が乗る部分は、両端が凹み、中央部と前後が高くなっています。

 今年、ばんえい騎乗2回目の宮下騎手に

「利き足を前の台の上に乗せて、もう一方の足は凹んだところに置きます」

 と教えていただき、乗ってみると、なんとなーく、ばんえい騎手っぽいフォームに。

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▲横からアドバイスを送る宮下騎手、おかげでばんえい騎手っぽいフォームに


「おぉ〜っ!」と感動したのも束の間、ハクウンリューが足踏みするだけですごく揺れるのです。それもそのはず、7月末の引退レースでは943kgあったハクウンリュー。巨体の1歩は大きいんですよね。

 あとから写真を見て気づいたのですが、足踏みするだけで私がわーきゃー叫ぶものですから、ハクウンリューが「僕、足踏みしているだけなのに…」とちょっと困った顔をしているようにも見えます。「ばん馬は優しい」と聞きますが、耳を後ろに向けて、私に気を配ってくれていたのかな? と思うと、ハクウンリューの優しさに胸がキュンキュンします。

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▲ちょっと困り顔の?ハクウンリュー


 さて、何とか揺れにも慣れていざ歩かせてみると、1歩目にとても衝撃を受けます。女性騎手たちも「エキシビジョンレースではスタートがすごい衝撃でビックリしました!」と話すように、ガンッと衝撃がきます。

 手綱をなんとなく右に開いてカーブし、いよいよ障害へ。上り坂はゆっくり歩くものだと思っていたら、なぜがハクウンリューに気合いがみなぎって、グングンとすごいスピードで駆け上がっていきます。あまりのスピードにバランスを崩したのと怖さで立っていられなくなって、ソリにつかまってしまいました。

 一方、下り坂はゆっくりと安全に降りてくれたハクウンリュー。

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▲下り坂はゆっくりと安全に降りてくれたハクウンリュー


 ソリから降りると、運動不足の私の太ももはプルプルしていました。

ばんえい騎手たちの工夫


 上り坂でバランスを崩したことを鈴木調教師に報告すると、「ソリの前にあるゴムの所に膝をつけて体を安定させるんだよ」と。

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▲「ソリの前にあるゴムの所に膝をつけて体を安定させるんだよ」と鈴木師


 さらに、ばんえい競馬の竹ケ原茉耶騎手にも騎乗について聞いてみるとこんなお話でした。

「スタートだったら、後ろに力がかかってドンッて進んで行くから、ソリのゴムの部分に膝をつけて踏ん張っています。障害を登る時もやや前に体重をかけていますね」

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▲ばんえい競馬の竹ケ原茉耶騎手


 かつて、ばんえい競馬では「坂本ジャンプ」と称された勝負所で華麗にジャンプをし、馬を追った騎手がいたといいます。

「各騎手なにかしら工夫はしていると思いますよ。たとえば私は背が低くて、その分、腕も短いので手綱の扱い方がみんなとは違います。手元から垂れる手綱も他の人より長くて邪魔になるので、重量カバンを入れる所に差して置いています」

 体験してみて初めて分かった「ソリに乗る難しさ」。

 体重のかけ方、ムチの代わりにもなる手綱の捌き方、そして障害の手前で馬を止めるタイミング――いろんな技を使ってばんえいレースは行なわれているんですね。

 昨年リーディング2位の阿部武臣騎手は「馬たちは家族。息子や嫁さんよりも俺たちは馬が大切なんだよ。むくんでしまうから、休みの日でも運動させるし、離乳前から牧場に行って馬に携わっています」と話します。

 北海道開拓の暮らしから生まれたばんえい競馬は、何気ない1コマに北の大地で人と馬が寄り添って生きた歴史を感じることもできます。重賞開催日の早朝には調教見学ツアーが実施され、馬が吐く白い息をカメラに収めることもできます。ぜひみなさんも、間近でばん馬の迫力を感じてみてはいかがでしょうか。

※北海道胆振東部地震の影響で9月15日〜17日の開催はナイターではなく、薄暮開催となります。

競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。

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